千夜一夜物語
実証制作「千夜一夜物語プロジェクト」は、2D素材から効率的に3D作品を生み出す手法の研究の一環であり、卒研生の実証制作の場として、またプロジェクト演習のひとつとして、CTCを舞台に展開している実証制作プロジェクトです。既に2Dの素材を保有している場合、3D化する効率的な手法が確立されれば、3Dが持つ再利用性との相互作用で多くの良質なコンテンツを生み出すことが期待できます。2D資産を多く持つわが国のコンテンツ界においても、その制作手法は注目を集めています。女性向けの深夜の帯番組を想定して企画されたこのコンテンツでは、古沢岩美画伯による挿絵を使用し、しっとりした大人の雰囲気を持つ「映像付きナレーションドラマ」という新しい表現スタイルの確立に挑戦しています。
多くの人に愛されている「千夜一夜物語」ですが、数ある出版物のなかでも一際人気が高いものが筑摩書房版です。人気の理由は、挿絵のすばらしさ。そしてその挿絵を描いたのが、故古沢岩美画伯です。その画風はまさに千夜一夜の世界そのもの。ご遺族の許可を受け、研究の素材としての活用を認められているのはクリエイティブ・ラボだけです。この絵画を活用し、幻想的なアラビアンナイトの世界を3Dによって制作します。
このプロジェクトの目的は、単なるコンテンツ制作実習だけではなく、低予算・短納期で一定のクオリティを保つための効率的制作ワークフロー研究としても位置づけられています。脚本は、バートン版「千夜一夜物語」をもとに、シナリオの黄金則にのっとり、大学院生が新たに執筆しています。また、セリフや音楽といった音響コンテンツを先に作り、そのタイミングに合わせて動画の演出を行うという、欧米では一般的なワークフローを採用することで、同じ作業期間を有効に使えるようなワークフロー研究を進めています。映像制作に関しては、ジオラマ・エンジンとの連携により、2D素材の3D配置を効率的に行うことも可能になります。また、平面をあらかじめ仮想3D内に配置することで、3Dによるエフェクトなどとの親和性も高まり、2D素材から生み出される映像の可能性を最大限に拡げます。
テレビ深夜枠を想定して制作を進めている「千夜一夜物語」ですが、短いコンテンツを短期間で大量に制作する本手法はブロードバンドコンテンツの制作にも応用可能です。MSNがストリーミングコンテンツとして興味を持ち、2006年3月23日より1ヶ月間、「MSNエンターテイメント」のトップコンテンツとして配信されました。通常のMSNビデオのトップコンテンツと違い、配信期間が1ヶ月と少々長めではあるものの、30ものコンテンツを配信するという形態はMSNとしても初の試みでした。当初の不安をよそに、1ヶ月で数十万アクセスを達成し、有名な映画の広告など、他のコンテンツに比べてもひけをとらないほどのアクセス数となりました。
