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いろいろな分野のアイデアが人工知能の発展につながる!

2017年3月10日掲出

コンピュータサイエンス学部 柴田千尋 講師

コンピュータサイエンス学部 柴田千尋 講師

コンピュータに複雑な認知や判断機能を持たせるための「ディープラーニング」の研究に取り組んでいる柴田先生。人工知能の可能性についてお聞きしました。

■先生の研究テーマについて教えてください。

 人工知能に学習をさせる「深層学習(ディープラーニング)」という手法を使ってなにかできないか、というのが私の研究テーマです。簡単に言ってしまえば、「データをいかに集めて、コンピュータに頭のいいことをさせるか」ということ。そこで重要なのは「どのようなデータを集めるか」です。
 たとえば今年の卒論には、Twitterから百万語くらいの会話データを集めてきて、それを学習させて機械に対話をさせるという研究がありました。単なるひとりごとやbotなどではない、きちんと対話になっている書き込みを無作為に集めてきて、それをニューラルネットワークという人間の脳の神経回路を模したモデルを使って機械に学習させます。そうすると、こちらが「おはよう」といえば「おはよう」と返すし、「おはようございます」と話しかけると、向こうも「おはようございます」と丁寧に返してくるようになるんです。そんな風に自然な対話ができるように、機械を学習させていく。そこでデータ量をどんどん増やしていけば、よりうまく対話ができるようになると考えられます。 Siriのようにこちらの質問に応えてくれる対話方法は「タスク型」と呼ばれ、技術的にもかなり進歩しています。しかし、この研究で目指しているのは「今日いい天気だね」と言ったら「寒いですね」って返してくれるような「非タスク型」の対話、いわば雑談的な対話ができる人口知能の開発です。たとえばカーナビに自然な対話ができる人工知能を搭載できれば、一人で運転しているときの居眠り防止になるのではないか。そんな風に、さまざまな形での応用が考えられます。

■もともと先生がこういう分野に興味をもったのはいつごろですか?

 学部は、昔から数学など理系科目が好きだったことや親の勧めもあり、情報系に入ったんですが、やってみたらもう少し人間よりのことが好きだなと思うようになり、当時はバイオテクノロジーが流行っていたので、卒論では生物学のデータを情報科学の手法で解析する「バイオインフォマティクス」をテーマにしました。そこで人工知能や遺伝子のネットワークをデータから読み取るというような技術を使ったのをきっかけに、その後はニューラルネットワークの研究をしたり、自然言語処理の研究などを経て、今に至ります。ですから最初に強い志望動機があったわけではないのですが、今の人工知能の研究は、昔から興味もあったので自分には合っていると思います。
 将来的には人間同様の知能を持った人工知能を作りたいです。私はロボットには興味がないので、端末としてはスマホに載っていてもネット上にあってもいいんですが、一定の知能があって人間と同じくらい賢くていろいろなことができる人工知能が作れればいいですね。『her 世界でひとつの彼女』という映画のようですが、実際にそれは実現するんじゃないかと言われています。もちろん、人工知能が意志をもつかどうかは別として。
 また、アーティスティックな画像処理が好きで、これはすでに存在している技術なんですが、たとえば写真をピカソ風に加工したり、それをムービーにしてピカソっぽい絵が動いたりする。趣味でそういうプログラムを作ったりもしています。最近リリースされたGoogleの人工知能「DeepDream」は、画像を認識させると、そのなかの一部をわざと違う方向へ強調させて新たな画像を描くプログラム。たとえば竹がずっと繋がっている絵を認識させたとき、コンピュータがそこに目のように見える模様を認識したら、それを集中的に強調させるので、まるで怖い夢のような画像になります。このようにアートの世界でも人工知能を使ってできる面白いことはたくさんあるんですよ。

■研究室ではどのような研究を行っているのですか。

 卒論として学生が取り組んだ研究のひとつに、遊園地などで子どもが迷子がどうかを判別する画像認識プログラムがあります。監視カメラで子どもの映像を撮っておいて、その近くに大人がいればそれは迷子ではない、しかし子どもの近くに一定の大人がいなくなったらその子は迷子だと判断する。そうやって迷子の可能性がある子どもをピックアップしていけば、スタッフが自主的に声をかけられるというわけです。現在ある画像認識ソフトでは「人の領域を切り出す」といって画像の中で人がどこにいるかということまでは判断できるのですが、それが大人か子どもかの区別はできません。そこでyoutubeにあがっている遊園地の映像をたくさん集め、これが大人、これは子どもというように自分で分類したデータを学習させたら、94%程度は正解が出せるようになりました。
 また、自分の身の回りのものを画像認識で覚えさせて、何かをどこかに置き忘れてしまったときに、「あれ、どこにあるかな?」と聞くと機械がそれを探して「ここにあるよ」と教えてくれるプログラム作りにチャレンジした学生もいました。一般的な画像認識プログラムには1000種類くらいの一般的なものがデータベース化されていますが、そこにはもちろん「お父さんのお弁当箱」というようなプライベートなものは入っていません。そこで身の回りのものを機械に見せるとそれをスキャンするように覚えてくれて、あとはそれがどこにあるか機械が常に見まわっていてくれる。そういうプログラムを作ったのです。
人工知能はすでに人間よりも正確に画像認識できると言われています。とはいえまだ人工知能が自分で意志をもってこれを学ぼう、というようことにはならないので、そこで「なにをさせるか」を考えるはあくまでも人間。ですからどういうアイデアを持つか、というのが面白いところ。アイデア次第でいろいろな面白い研究をすることができると思います。

■最後に学生さんへのメッセージをお聞かせください。

 これからも人工知能はどんどん進化していき、それを使っていろいろなことができるようになっていくでしょう。そこで本当に自分がやりたいことが、コンピュータを使ってどれくらい実現できるのか。それを考えてみてほしいと思います。たとえばアニメが好きなら、自動で絵を描かせることだってできるでしょう。とにかく自分の好きなことで、人工知能を使ってできそうなことにチャレンジしてみてください。人工知能を使った研究は、まだまだやりつくされていません。そして、まさかと思うようなことでもできるんです。人のいうことなど気にせず、これをやるんだ! と思っていればそれでいいのです。自分の感性と発想を重視することが大切です。
 これからの人工知能の研究は、なにをさせるか、というアイデアが勝負。そのためにはいろいろなジャンルの人とのつながりが強みになるかもしれません。同じ分野だけでなく、たとえば医療系やアート系など、いろんなジャンルの友達を持っている人のほうが、意外なところからアイデアが得られますから。 私自身も現在、医療保健学部と福岡大学病院と連携して、胎児心拍数のデータ解析に人工知能を応用し、お腹の赤ちゃんの低酸素をより早く正確に診断するシステムの開発に取り組んでいます。現状ではお医者さんがその場でモニターを見て経験と勘だけでどちらにするか決めていて、そこにルールはないのです。そこで福岡大学病院のお医者さんが、その判断に人工知能は使えないだろうか、と思いついたことがきっかけで、この研究はスタートしました。
 このように「手法はこちらが考えるけど、アイデアは外からもらう」というコラボレーションからは、面白いことが起こりそうな気がします。ですから、いろんな趣味をもった友達をたくさん作ると、それが人工知能の発展につながるかもしれない。逆にいえば、人工知能というのはそれくらい大きな可能性がある分野だということです。

■人工知能(AI)研究会:
http://www.teu.ac.jp/ai/index.html

■コンピュータサイエンス学部WEB:
http://www.teu.ac.jp/gakubu/cs/index.html

・次回は5月12日に配信予定です。