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デザインをする上で大切な共感力やクリエイティブな考え方は、どんな仕事にも活かせます!

2018年6月1日掲出

デザイン学部 葛原俊秀 講師

葛原俊秀 講師

 大学で建築を学んだ後、さらに広いクリエイティブな世界に触れたいとイタリアでデザインを学んだ葛原先生。現在は、広告デザインやブランディングデザイン、アート展の審査員等、幅広いデザイン分野で活躍されています。今回は、デザイン学部のカリキュラムの話をベースに、ブランディングやご自身のこれまでの活動について伺いました。

■デザイン学部のカリキュラムの特長についてお聞かせください。

 デザイン学部では、3年生の前期から視覚デザインコースと工業デザインコースに分かれます。視覚デザインコースは視覚デザイン専攻と映像デザイン専攻、工業デザインコースは工業デザイン専攻と空間デザイン専攻から成るのですが、3年前期では選んだコースの両専攻を学び、そこから自分の専攻を選び、後期からは専攻に分かれます。また、ここで選んだ専攻は、卒業研究にも結び付いています。
 私自身は、視覚デザインコース視覚デザイン専攻の担当なので、今回はその話を中心にしたいと思います。3年前期の視覚デザインコースの「専門演習Ⅰ」では、視覚デザイン専攻の課題として、架空のカフェもしくは架空の子ども用玩具店のブランディングデザインに取り組みます。ブランディングデザインというのは、私の専門でもありますが、簡単に言えばお客さんとのコミュニケーションをデザインすること、つまりお客さんとお店のあらゆる接点となるものをデザインしていくことです。先ずは、ショップのアイデンティティをお客さんに伝えるべくお店のロゴをデザインします。そして、名刺、封筒、便箋などのビジネスツールを制作し、最後にショップカードやポスター、ウェブサイト、包装紙などのコミュニケーションツ―ルをデザインします。特に、コミュニケーションツ―ルに関しては、お客さんとお店がどういうコミュニケーションを取るべきなのかを考え、自由に様々なツールや仕組みを学生に考えてもらっています。例えば、ショップカードを持って帰ってもらうというコミュニケーションが必要ならば、そのカードに何を記載する必要があるのかという情報デザインまでも含めて提案してもらいます。
 この課題では、まず設定されているお店の場所、あるいは類似するお店に足を運んでもらうところから始まります。そこにはどういうお客さんがいて、どのようにそのお店を利用しているのか、そのお店はどういう雰囲気の中にあるのかなどを調べてもらうためです。モノづくりでは、お客さんの心をいかに探るかがとても重要になります。そこが一番面白い部分だとも言えます。このお店にどんな人が来るのか、なぜこのお店を選ぶのか、お客さんは何をこのお店の価値と感じているのかといった理由を探すことが大切なのです。そして、そのお店の持つ魅力をデザインとしてどう届けるかが、デザイナーの役目になります。ですから絵が上手とか、格好良いモノがつくれるということだけがデザインではないんですね。
 また、この「専門演習Ⅰ」では、発表が多いことも特長です。ほぼ毎週のようにプレゼンテーションがあるのですが、それは教員からの評価を得るためでもありますが、自分の思いを伝えることの重要性や難しさを感じ、自分の思いを伝える経験を積んでほしいからです。いきなり良いモノをつくるのではなく、プレゼンを繰り返す中で、他の人の意見や他の学生の良いところを取り入れながら、少しずつブラッシュアップしてより良いデザインを完成させていくという方法を身に付けてもらいたいと思っています。

  一方、3年後期の視覚デザイン専攻における「専門演習Ⅱ」では、蒲田キャンパスのある大田区により多くの人が訪れ、より活性化するための観光イベントを企画するという課題に取り組みます。イベントを企画することは、イベントの中身を考えるだけでなく、イベントに来る人たちがそれをどういう形で知り、どういうきっかけで来ようと思うのか、実際に来る人はどんな人で、来る人がどのような大田区の魅力を感じ取るのかという全体のストーリーをデザインしていくことなので、課題としての難易度は非常に高いです。また、前期の「専門演習Ⅰ」と違い、何をしても良いという自由さがあるので、逆に学生は生みの苦しみを経験することになります。さらに、この課題はグループワークがメインになるので、その楽しさ、難しさも経験できます。


専門演習Ⅰ 授業風景


専門演習Ⅱ 授業風景

■では、先生が手がけてこられたお仕事についてお聞かせください。

 先程も少し触れましたが、ブランディングデザインを中心に手がけてきました。ブランディングの定義は難しいのですが、私自身は会社やお店とお客さんを繋ぐコミュニケーターだと思っています。つまり継続的・長期的に良いコミュニケーションをつくっていくためのサポーター的役割ですね。ですから、いわゆるデザインの仕事もありますが、それ以外にも新商品開発や新事業の企画などを会社やお店と一緒に考えたり、どういう広告をどこに出すかという提案をしたりしています。
 ブランディングの仕事例としては、ある金属彫刻家の作品をどう見せていくか、ブランドの名前や発表の仕方など、コミュニケーションの仕組みを手がけているものがあります。どういうモノがあると良いかを作家とやり取りしながら作品を制作してもらったり、それを世の中にどう届けていくかということを考えたりしています。ウェブサイトをつくったり、クラウドファンディングを行って、多くの人に知ってもらうことをしたりと、色々な試みをしながら進めているところです。
 また、コミュニケーションデザインとしては、毎秋、行われている「渋谷芸術祭」の中の「シブヤアワード」というアートの公募展にまつわる仕事をしています。そこでは、どういう人たちに参加してもらいたいかを考え、実際にその人たちに参加してもらうためにどうアプローチしていくかといった戦略的な部分を担当しています。応募いただいた作品をどう露出していくか、アートの魅力をきちんと社会に伝えるにはどういう仕掛けが必要かを考えて、イベント全体を通じたストーリーをデザインしています。

■教員として、学生にどんなことを身に付けてほしいですか?

 デザインでは、受け手の心に寄り添う、共感する力が大切だと思います。それをデザイン学部で培い、例え少数の人に対してであっても、人の心に深く届くデザインができる人になってほしいですね。デザインの魅力は、そういう部分にありますから。
 もちろん、それは単にデザイナーになってほしいということだけではありません。デザイナーに限らず、会社の営業職でも主婦でもどんな仕事や立場にいても、共感する力やこの学部で学んだクリエイティブな考え方は活かせるはずです。そういう意味で、将来、社会にクリエイティブな影響を与えられる人が出てきてくれると嬉しいです。

■受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

 表現としてのデザインも素晴らしいと思いますが、それだけでなく、何を選ぶか、何を考えるか、どういう言葉を用いるかといったことにもデザインは関わっています。そういうことを意識しながら生きることは、とても幸せなのではないでしょうか。
 また、デザインは非常に幅広い分野です。それを感じられるのが、本学部での学びだと思うので、ここでたくさんの刺激を受けて、自分なりのクリエイティブな生き方を見つけてください。

・次回は6月11日に配信予定です