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AIを用いた未来型風力発電システム技術の開発で得られる研究成果をいろいろな分野に活かしたい

2018年7月6日掲出

工学部 電気電子工学科 新海健 教授

新海 健教授

 東京工科大学では、全学部が参加する「人工知能(AI)研究会」を立ち上げ、AIの研究に取り組んでいます。今回は、同研究会の内、工学部の教員を中心としたサステイナブル工学AI分科会が取り組んでいる研究について、その中心となる新海先生にお話を伺いました。

 過去の掲載はこちらから→http://www.teu.ac.jp/topics/2015.html?id=103

■サステイナブル工学AI分科会で、先生が主導されているAI研究プロジェクトについてお聞かせください。

 今、サステイナブル工学AI分科会では、AIを用いた未来型風力発電システム技術の開発に取り組んでいます。具体的な研究内容の話の前に、まずはなぜ風力発電なのかということを含めて、このテーマに決めた経緯をお話ししたいと思います。
 現在、機械学習やディープラーニング(深層学習)といったAIが実際に活用されている分野は、ゲームや画像認識、それからロボット分野が挙げられます。あとは自動車の自動運転。これは始まったばかりですが、実際に車に搭載され始めています。こうした既に研究されているところ以外で、何かAIを適応できる工学分野はないか、成果を出せないかということでテーマ探しが始まりました。
 そういう中で、風力発電システムの開発にAIを使う研究をしようと決めたのは、風力発電がサステイナブル工学として非常にわかりやすい、象徴的なテーマであったことと、総合工学だからということが挙げられます。総合工学とは、色々な工学的要素が入っているという意味です。風力発電では、例えばその材料の開発研究として化学分野が関わってきますし、大型風車を台風などの強風に耐えるような構造にする必要があるので、機械分野も関わってきます。もちろんパワーエレクトロニクスや発電機、送電といった大きな電力を扱う電気技術も必要です。あとは風速を測定するセンシングや通信技術、環境への影響や安全性といった環境アセスメントも関わってきます。ですから風力発電には、ほぼすべての工学部の先生が関わることができるのです。こうした理由から、今回の研究テーマが決定しました。

■具体的には、どのような研究が進んでいるのですか?

 未来型風力発電システムの開発にあたって、関係する各分野の先生方がそれぞれ研究を進めてくださっています。例えば、応用化学科の先生方は材料開発にAIを用いて、今までの知見から何か予測し、新しいものにつなげられないかという化学分野の研究に取り組んでいます。また、センシング技術を使って崖や橋などのインフラの老朽化や危険察知の研究をされている電気電子工学科の天野直紀先生は、AIを使った経年劣化による故障予知の研究を進めています。
 私の研究室はというと、風車のブレード(羽)の設計にAIを用い、試作工程を簡単かつ短時間化できないかと模索中です。従来は、風洞という人工的に小さな風の流れを発生させる装置の中に縮小型の風車を置き、どういう羽の形状であれば発電効率が高いかを実験して、羽の設計に反映するという方法が中心でした。ただ、モノをつくって何度も実験・測定を繰り返すことは、ものすごく大変な作業ですし、あくまでも縮小型の風車を使うので、実際の巨大な風車でも同じ結果が得られるのかという疑問があります。そこで今度は、シミュレーションを使うという方法が出てきます。先の風洞と同じ環境を流体シミュレーションで表して、実際の風車のサイズで計算します。ところが流体シミュレーションも数日がかりの作業ですし、ブレードの形状ごとに計算するのは大変な作業です。
 それならば、この計算部分にAIを使ってみてはどうかと思ったのですが、実はここにも問題があります。AI技術の中でも機械学習やディープラーニングは、少なくとも1000くらいの大量データをAIに読ませて学習させ、新たなことを予測させるという方法を採ることが多いです。しかし、残念ながら風力発電には、そんなに大量の実測データがありません。各地に設置されている風車を訪ね歩いて測定しても、せいぜい10基分を集められればいいところでしょう。
 そこでこのデータ集めに、シミュレーションを使えないだろうかと考えました。つまりAIに読ませる大量のデータを流体シミュレーションでつくって、AIに入れてみようというのです。実際に研究室で挑戦したところ、まずまずの手ごたえを感じられる結果が得られています。とはいえ現状は普通にシミュレーションでブレードの形状を実験しているときと、そう変わらない状態ですが、このまま機械学習を続けていけば、より早くなるのではないかと思っています。また、シミュレーションでつくったデータをAIに学習させ、どういう形状のブレードが良さそうだということが決まれば、3Dプリンターで縮小モデルをつくれるので、簡単に試作開発することができます。実際、研究室では水平型や垂直型の風車を3Dプリンターでつくり、今度、屋外に設置して発電の実験を行う予定です。
 こうした技術はブレードに限らず、他の機械部品はもちろん、電気電子部品や回路にも応用できます。また、流体ではなく材料シミュレーションを用いれば、時間経過を短縮させて、どう劣化していくかをシミュレーションできるので、構造物やインフラの老朽化の予知にも利用できるかもしれません。

気流の可視化
レーザによる気流の可視化
流体シミュレーション
                    流体シミュレーション


気流の可視化

水平軸型風車縮小モデル
水平軸型風車縮小モデル

垂直軸型風車縮小モデル
垂直軸型風車縮小モデル

垂直軸型風車100Wモデル
垂直軸型風車100Wモデル

■今後の展望をお聞かせください。

 最終的にはビルに設置できるような小型の風力発電システムをつくることを目標に進めていますが、その過程で得られる各研究の成果をさまざまなところに展開していければと思っています。例えば、インフラなどの老朽化に対する故障予知や新しい化学材料の開発手法、インテグラル型の部品設計の試作開発などですね。インテグラル型というのは工業製品の分類のひとつで、すり合わせてつくっていく製品のことです。流体や熱、高電圧や高周波を用いた装置など、職人や設計者の経験と技術の蓄積が重要となる分野で、日本の製造業が得意としてきたものです。そういう製品をつくる製造業を支援するようなAIの活用をしたいと思っています。ですから未来型風力発電の開発だけでなく、その過程で得られる研究成果を幅広い分野に活かしていくことも目標のひとつです。

■最後に受験生・高校生にメッセージをお願いします。

 私が専門とする電気電子工学分野は、人々の生活をあらゆる面で支える縁の下の力持ちです。また、これまでに数々の不可能を可能にしてきた技術でもあります。私自身、そういう技術の研究に携わることができて、とても幸せに思いますし、自分の仕事が世の中に役立っていると実感できるので、やりがいも感じられます。皆さんにもぜひ、そういう電気電子工学の魅力を感じてもらえると嬉しいですね
 また、皆さんにお伝えしたいのは、大学入学や大学卒業後に企業へ入ることは、ゴールではないということです。人生は長いものです。22歳で社会に出たとして、少なくとも60歳までの37年間は仕事中心の生活を送ることになります。この長い長い期間を、どうか充実した、楽しいものにしてほしい。そのためには早いうちから、自分がどんな人生を送っていきたいのかをよく考えることだと思います。すぐに答えが出るものではありませんが、考え続けることが何より大切です。

・次回は7月27日に配信予定です