メディア学部

School of Media Science 八王子

REC.003 chapter.1「ネット上の実名と匿名の使い分け」

2012年10月16日開催

season1

REC.003 chapter.1
ネット上の実名と匿名の使い分け

―先ほどの講義のなかで、ネットユーザーのモラルについてのお話がありましたが、杉本先生はネット上のユーザーの実名と匿名の使い分けについて、どのようにお考えですか?

杉本誠司氏(以下杉本と略):フェイスブックは実名で、リアルでの生活価値がネットに延長していて、僕がネットにいても杉本、ニワンゴの人間だということがわかります。これは、全部連携しているまったく同じ人間です。ただ、インターネットはもともと匿名でも過ごすことのできる環境だったし、そこを全部リアルな空間に変えてしまうと、僕が杉本であること、ニワンゴの人間であること以上の可能性を、まったくゼロのところから生み出すことができなくなります。

―可能性とは、どういうことですか?

杉本:例えば今、職のないニートの方の生活環境がそのままプロファイルとしてネットに反映され、ガチガチにかためられてしまうと、どうでしょう?

―それは、つらいものがありますね。

杉本:リアルな社会でニートでなくなる努力をしなくちゃいけないのですが、そのなかで、ネットで創作活動していって、ネットから売れていくという方法も選択の一つだとすると、プロファイルがネットに反映されると、潜在能力などを引き出せる可能性が極端に弱くなっていきます。

―先ほどの講義、事前に学生から杉本先生にたくさんの質問が提出されていましたが、そのなかに「ニコニコ動画のサイトから動画配信がきっかけで歌手がデビューしたり、WEB漫画がアニメ化したりと、最近はプロ・アマ問わずメディアミックスの場がチャンスになっていますが、(後略)」というのがありました。

杉本:僕がニートだったとします。ネット上で例えばイトウとして、リアルな人間として仕事はないけど、ニコニコ動画で創作活動を繰り返し、ネット上のアーティストとして話題になって、どこかのタイミングでメジャーデビューしたとしたら、僕はその瞬間からイトウという名前を主たるアイデンティティに変えて、それまでニートで生きてきた杉本と決別したい。リアルな名前を引き継いでいると、可能性があるのに、この可能性にマイナスの因子を作用させることもあると思います。

―なるほど。匿名という方法は、例えば小説の世界で言えばペンネームに似ています。書く内容によって使い分けている作家もいますが、ネットのイトウさんのように、いくつかの顔を持つのはチャンスの場を広めるという点では同じですね。

 

chapter.1 ネット上の実名と匿名の使い分け

杉本誠司さん

REC.003 杉本 誠司さん
株式会社ニワンゴ 代表取締役社長
株式会社ドワンゴコーポレート本部 広報室長
ニコニコ事業本部アライアンス 事業部長 兼 コンテンツ企画政策部長