軽部学長のきらっとひらめきコラム

東京工科大学 HOME> 軽部学長のきらっとひらめきコラム> [2014年度]第2回「新設の工学部が掲げる“サステイナブル工学”は、持続的に発展する社会を支える新しい技術」

[2014年度]第2回「新設の工学部が掲げる“サステイナブル工学”は、持続的に発展する社会を支える新しい技術」

2014年6月13日掲出

 皆さん、こんにちは。すでにご存知の方も多いと思いますが、東京工科大学は2015年4月に、“サステイナブル工学”の追究を標榜する工学部を新設予定です。今回はその工学部が掲げる“サステイナブル工学”とは、どのようなものかという話をしたいと思います。

“サステイナブル工学”を理解するには、まず、これまでの工学について知らなければなりません。では、これまでの工学とはどのようなものであったかというと、私たちを豊かにする工学だったと言えます。70年前、日本は戦争に負けて焼け野原となり、そこから立ち上がるために、ものすごい努力を重ねてきました。家や街を再生し、国民は一生懸命働いたわけです。やがて白黒テレビが普及するようになり、一部の人はテレビを買って町の人に開放するなんて光景も見られるようになりました。私の実家でも早くにテレビを買うことができたので、プロレスや野球の試合があるときは、近所の人が大勢我が家に集まって、1台のテレビを皆で夢中になって観戦したものです。今では想像もつかないかもしれませんが、そういう時代が日本にもあったのです。

やがて時代は高度成長期に入り、いわゆる“3C時代”がやってきます。3Cとは、カラーテレビ(Color TV)、クーラー(Cooler)、車(Car)の頭文字で、それらを持つことが庶民の夢と目標だった時代のことです。この時代に技術はどんどん発展していき、結果的に日本国民は等しく3Cを手に入れることができるようになりました。そして、それを支えたのが、大量に生産して単価を安くすることで大勢の人にものを使ってもらう、いわゆる大量生産・大量消費のための技術だったのです。この20世紀型の技術は、確かに私たちを豊かにしてくれました。しかし一方で、膨大な資源やエネルギーを使い、環境問題を引き起こすといった負の面もあったのです。

21世紀となった現在、日本は非常に豊かな国となりました。テレビが家の各部屋にあるとか自動車が一家に3台あるなんてことは、今では珍しい話ではありませんよね。誰もが欲しいものを所有し、ある程度は満たされたわけです。そうなると、いわゆる20世紀型の豊かさを求める技術は必要なくなってきます。逆にこれから必要となるのは、少しずつでも持続的に発展していく社会であり、それを支えるための技術です。つまり、あまりエネルギーや資源を使わず環境も破壊しない、新しい技術が必要になってきます。それこそが、サステイナブル(持続可能)な工学です。

サステイナブル工学は、実はすでに私たちの身近なところに幅広く取り入れられていて、その技術はどんどん発展しています。次回は具体例を挙げながら、サステイナブルな技術とはどういうものかということについて、お話ししたいと思います。