大学の学びはこんなに面白い

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研究・教育紹介

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「新しい価値観を生み出すクリエーターや研究者を育てたい」

メディア学部 渡辺大地 講師

■先生は、どのようなことを教えているのですか?

私の担当は、メディア学部の学びの中でも技術寄り、理論や学術的な分野になります。数学や物理が関係するところや情報処理といった技術的なところですね。簡単に言うと、実際にコンピュータを使ってCGをつくったりゲームをつくったり、最終的にコンピュータに対して実際の挙動を入力していくプログラミングの部分。そういう技術を学生に教えていたり、研究したりしています。とはいえ、単に技術だけを教えているわけではありません。例えば、ゲーム制作の場合。多くの学生は子どもの頃から親しんだゲームを自分でもつくってみたいとメディア学部に入学してきます。ところがゲームには“使う側”と“つくる側”に、ものすごく大きなギャップがあるのです。“使う側”のときは気楽ですが、“つくる側”にまわると途端に難しくなる。そういうギャップがある中で、いかにゲームを制作する実力や素養を身につけさせるかというところが、私の重大な役割だと言えます。

■具体的には、どんな取り組みがあるのでしょうか?

例えば、本学部の三上浩司先生が中心になって行っている「インタラクティブ・ゲーム制作」というプロジェクト演習。これは1年生から自由に選択できる、言わば“部活動”みたいな演習です。私はそこでアドバイザー的な役割を担っています。演習内容は、学生がチームを組んでゲーム制作に取り組むというものですが、正直、最初は全然うまくいきません。ゲームを“使う側”だった学生たちが、いきなりゲームをつくるのですから当然ですよね。でも、そこがポイントです。普段の授業が基礎から積み上げていくボトムアップならば、この演習はトップダウン。「まずはやってみよう」というところから始まります。ゲームをつくるには、プログラミングもグラフィックも音楽も必要です。当然、チームをマネジメントしていく力も必要になります。学生は、ゲーム制作のプロセスでうまくいかないことに直面するたびに、自分たち足りないもの、学ばなければならないものが何かを考え、“学ぶ必要性”を感じます。そういう形で学生の意欲を学びにつなげているのです。

■では、先生の研究室では、どんな研究をされているのですか?

三上先生と一緒に「ゲームサイエンス」というプロジェクト名を掲げた研究室を運営しています。私はプログラミングなどの技術面を担当し、三上先生はゲームデザインや企画、制作進行の部分を担当しています。ゲームに関連する分野は非常に多岐に渡るので、扱うテーマは本音を言うと、なんでもありです(笑)。ただ4年生の卒業研究ですから、学生たちには実際のゲーム制作に役立つようなことを研究テーマにするよう指導しています。例えば、木や山といった植物や地形を自動的にCGでつくるためのモデリングを研究している学生がいれば、手描きアニメの絵の質感をどうCGで出すかという研究をしている学生もいます。また、ゲーム制作の分野だけでなく、「女性向けゲームの動向」といったゲーム業界の状況を調査している学生もいます。ですからひと口に“ゲーム”と言っても、幅広い分野があるんですよね。ゲームをつくるプロセス上のことや、どういうものをゲームとしてつくるのかといったニーズを調べることも研究対象になっています。

■こうした研究テーマは、学生自身が決めるのでしょうか?

そうです。この研究室では、学生が自分でテーマを見つけてくるということも課題のひとつだと捉えていますから。学生には卒研のテーマを「君以外の第三者にも役立つものであり、かつ世界中で誰も行っていないということを証明できるものでないといけない」と言っています。だから、ものすごくハードルが高い。学生は「これまで自分がやってきたゲームの中では、○○ができなかったので研究テーマにしたい」という感じでテーマを提出しがちです。でもちょっと調べてみると単にゲームになっていないだけで、その部分の研究論文はすでに存在しているなんてことが多々あります。そこから学生はその研究論文を読んで、何が解決されていないのかを探し、テーマにしようとする。ところがまた別の論文が見つかり…ということを繰り返しながら自分のテーマを探していきます。だからテーマを見つけること自体がものすごく難しいのです。そんな大変なことを私や三上先生が学生に課している理由は、それ自体が重要な能力だと思うからです。社会に出て、企業で何かを立ち上げるときに、業種内での動向や時代の流れを調べたり考えたりすることは当然です。自分で新しいテーマを見つけて、自分で勉強して、形にしなければならないのです。その能力を培う最後のチャンスが卒業研究です。理想論かもしれませんが、我々が育てたいのは、新しい価値観を生み出すクリエーターや研究者です。そういう人材を育てるためにも、普通の方法を教えるより数段高いところに要求レベルを設定しています。

■研究室に指導教員が複数いるという点も珍しい体制ですね。

それもメディア学部の特長のひとつだと言えます。先生ひとりが研究室を持つのではなく、プロジェクトベースで研究室がつくられているのです。メディア学部で扱う映像やゲームといったエンタテインメント分野は非常に幅広いので、一人の先生の専門分野でまかなえるものではありません。基本的に私は技術、三上先生は企画や芸術分野担当ですが、当然、相手の分野にもある程度、精通しています。ただ専門の視点は持っていません。例えば、今のコンテンツ業界の最新動向は、私ではなく業界に精通した三上先生にしかわからない。一方で、技術的・理論的な分野に関しては、普段からそういう論文を見ている私のような者にしかわからない部分があります。なので、それぞれの持っている特長を出し合って、分担している感じですね。そうすることで学生には、特長の違う二人の先生の視点で物事を見ることができるというメリットがあります。こういう体制で研究に取り組んでいる大学は少ないので、他大学の先生方からも感心されているくらいです。

■最後に今後の展望をお聞かせください。

今、ゲーム業界は過渡期を迎えています。少し前までのゲームは、いかに高精細な画像で、大容量のものを処理するかという性能的な部分にフォーカスされて開発され続けてきました。ところが今は任天堂のWiiやDSに代表されるように、必ずしも性能だけではなくなってきています。ユーザーが性能ばかり求めているわけではないということです。そういう意味で、今は価値観が多様化しつつあり、これまで業界内で培われてきた価値基準がシャッフルされる時期にあるのです。ですから大学側としては、この先、どんな流れになっても対応できるように、技術的・理論的な部分をもっと深く探究していきたいと思っています。また、目に見える技術だけでなく、人々はどんなものを求めるのか、どんなものを良いと思うのかという研究もしていきたいですね。あとは、1年生での実践教育をもう少し増やせるように、カリキュラムのバランスを見直していければと考えています。
 [2009年10月取材]

■所属研究室・プロジェクト紹介ページ

ゲームサイエンス(企画・デザイン)
https://www.teu.ac.jp/info/lab/project/media_dep/9.html
ゲームサイエンス(プログラミング)
https://www.teu.ac.jp/info/lab/project/media_dep/10.html
インタラクティブコンテンツデザイン
https://www.teu.ac.jp/info/lab/project/media_dep/16.html
ビジュアル・インタラクティブメディアプロジェクト
https://www.teu.ac.jp/info/lab/project/media_spc/128.html
マルチ・ディメンショナル・ドキュメンテーションプロジェクト
https://www.teu.ac.jp/info/lab/project/media_spc/129.html
ラーニング・デザインプロジェクト
https://www.teu.ac.jp/info/lab/project/media_spc/134.html

・次回は12月11日に配信予定です。

2009年11月13日掲出