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臨床現場で活躍することはもちろん、検査を探究し、社会貢献につなげられる臨床検査技師になろう!

2014年6月13日掲出

医療保健学部 臨床検査学科 細萱 茂実 教授

医療保健学部 臨床検査学科 細萱 茂実 教授

今年4月に開設された臨床検査学科では、臨床検査技師の養成を目的にさまざまな学びが用意されています。今回は学科長である細萱先生に、臨床検査技師の仕事内容から本学科の教育の特徴、ご自身の研究まで、幅広いテーマでお話しいただきました。

■まずは臨床検査技師の具体的な仕事について教えてください。

 臨床検査技師とは、放射線を使う画像検査を除いた、すべての臨床検査を行う技術者のことです。看護師や医師のように直接、患者さんと接する機会はそう多くありませんが、病気の診断や治療に必要な医療情報を提供するための検査を担う、現代医療に不可欠な存在でもあります。臨床検査技師が扱う臨床検査の種類は、一般的な小規模医院で100種類程度、大学病院では300種類程度、研究的な検査を含めると1000種類以上もあります。これほど膨大にある臨床検査ですが、大きく生理検査と検体検査に分けることができます。生理検査とは、患者さんの心臓や脳の動き、体内の状態を捉えるなど、身体を直接調べる検査のことで、具体的には心電図、脳波、超音波、MRI、聴力などがあります。一方、検体検査は、血液、尿、痰、組織など、患者さんから採取された生体材料を分析学的あるいは形態学的に調べる検査のことを言います。この検体検査はさらにいくつかに分類でき、たとえば血糖値やコレステロール値などを調べる化学検査、細菌による感染症やアレルギー疾患、癌の診断を目的に血液中の免疫成分を調べる免疫学検査、血液に含まれる赤血球や白血球などの細胞成分を調べる血液検査、結核やO157など病原菌そのものを調べる細菌学検査、手術で摘出した人の組織や体内から採取した細胞を調べる病理検査など、非常にたくさんの種類があります。つまりそれだけ人間の体内では、さまざまな代謝が行われ、何百、何千という成分が関わっているということです。それらのさまざまな成分を調べる臨床検査を担うために、臨床検査技師は本当にいろいろな知識や技術を備えなくてはなりません。

 ただ、その働き方は職場により多様ではあります。たとえば大規模病院などには、内科や外科といった専門の診療科があるように、臨床検査技師も化学分析を専門とする人や血液検査を専門とする人など検査室が分かれていて、ひとつの専門分野を深めるスペシャリストとして活躍するパターンがあります。一方、小規模病院は臨床検査技師も少なく、患者さんもさまざまな疾患で訪れるため、一人でいろいろな検査を担う、つまり広い範囲をカバーするジェネラリストという検査技師もいます。また、手間のかかる検査や特殊な機械がないとできない検査を扱う検査センターという検査専門の機関もありますし、検査方法を開発する企業や薬を開発する製薬メーカー、最近では食品関係の分野でも臨床検査技師が活躍しています。

臨床検査技師の主な仕事

■臨床検査学科では、どういうことを学ぶのでしょうか?

 検査に関する専門的な知識や技術はもちろんですが、それ以前に基礎医学や臨床医学についても学びます。医師ほど広範囲を深く学ぶわけではありませんが、検査を理解するために必要な医学は学ばなければなりません。また、学外での実習もあるのですが、その前に学内で講義とそれに対応する実習を行うようにしています。この学内実習は簡単なものを1年生から始め、本格的なものを2年から3年前期にかけて行います。また、東京工科大学ならではという点で言えば、最先端の検査機器や検査内容を講義や実習で扱います。たとえば遺伝子検査やバイオテクノロジーなどがそうです。こうした先端的なことを扱う授業では、臨床検査分野出身の教員だけでなく、八王子キャンパスの応用生物学部の先生方にも参画いただき一緒に取り組んでいます。また、これは臨床検査学科に限らず、本学全体に共通することですが、ICTをしっかり学べるようになっています。臨床検査学科の場合、これは特に重要なことです。というのも臨床検査技師は情報そのものをつくり出し、それを病院の診療システムの中でいかに速く正確に診療科に伝え、患者さんに還元するかということを担っていますから、ICTとは密接に関係しているのです。

 また3年後期からは、学外での臨地実習が始まります。学内で培った技術と知識が実際の臨床現場でどう使われているのかということを、病院実習を通して学んでもらうわけです。この実習先も本学では都内を中心とした関東一円で、先端的な医療を行っている病院や専門医療機関に協力いただく予定です。そういうトップレベルの実習先で、正確さとスピードが求められる臨床検査技師の現場を経験し、実践力を養っていきます。

学科の目的:高度専門職プロフェッショナルの育成 臨床検査学科履修科目“技術を医療で活かす”

■臨床検査技師に必要な素養やマインドはどのようなものだと思いますか?

 一番大切なことは、モチベーションです。臨床検査技師の歴史はまだ50年ほどですが、近年は急速に発展しつつあり、今後、一層の成長が見込まれる分野だと言えます。ですから自分たちがこれからの検査をつくっていくのだというモチベーションが大事になってくるのです。臨床検査技師は、検査技術を用いて患者さんに貢献するという第一義的な目的を持っていますが、それだけでなく検査をより有用なものにしていくために、自分たちでそれを探究し、新しい検査をつくっていく、あるいは検査データのより良い有効活用法を考えるといったことも重要なのです。一般的には臨床現場で活躍することを中心に据える臨床検査技師が多いとは思いますが、せっかく大学で学ぶのですから、本学の学生には探究する力や社会貢献できる力を兼ね備えた医療人になってほしいですね。とはいえ、それを実現するには、卒前卒後とも継続して勉強しなければなりません。この“継続”が簡単そうでいて、なかなか難しいものです。どんな分野でも就職することがゴールではなく、そこからも日々勉強しなくてはなりません。とりわけ医療分野は日進月歩の世界ですから、そういう面が大切です。学生には社会に出てからも学び続け、いずれ日本の医療や臨床検査を背負って立つような人になってもらえたらと願っています。

■では、先生のご研究についてお聞かせください。

 私が研究しているのは、主に臨床検査学、医療情報学、クオリティマネジメントという分野になります。医療情報学の分野では、臨床現場でいかに医療情報を有効活用するかという観点で研究しています。具体的には、検査データの臨床的解釈の基本的尺度となる基準範囲について研究しています。たとえばコレステロール値を例にとると、健康なときの理想的な値と、病気によって変動する値がありますが、実際には健康なときでも数値は変動しています。健康な人でも変動する検査値を生理的変動と呼びます。一方、病気になると、健康な人の値の範囲を逸脱する変化を示し病気とわかるわけです。つまり健康な人の生理的変動がわかっていないと、病態の適切な判断ができません。そういう検査データを判読するために必要となる基準範囲や生理的変動について研究しています。

 また、臨床検査データを単に病気の判別に使うだけでなく、より治療に活用できるよう有用性を高める研究にも取り組んでいます。一例を挙げると、慢性肝炎、肝硬変、肝がんなどの大きな原因であるC型肝炎ウイルスに関する研究があります。そのウイルスに感染するとインターフェロン(IFN)という薬を投与して治療しますが、従来の研究では主に肝炎ウイルスの特徴や量に対して、いくつか種類のあるIFNのうち、どの組み合わせが有効かということが調べられてきました。それに対して、同じように薬を投与したにも関わらず、現実には効く人と効かない人がいることに注目しました。そこで生体、つまり宿主側にどういう要因があって薬が効かなかったのか、逆に効いたのかということを解析する研究に取り組みました。その結果、もともと肝臓の機能が弱っていたり肥満があったりするとINFが効きにくいということを明らかにできました。ただ、本質的な原因は脂肪肝や肝の線維化が関係しているのではないかと思われますが、この点は今後の課題です。

 クオリティマネジメントの研究では、検査データの信頼性をいかに維持・向上させていくかということをテーマに取り組んでいます。これは検査技術による誤差をなくしていくための研究で、測定法や分析方法の精度を高めるというアプローチになります。たとえば、実際に病院で使われている検査法が信頼性に足る技術かどうかを判断したり、日本各地にある5000~6000もの検査室の検査データのばらつき、信頼の水準を調べ、それが医療の要求に応えるものかどうかを調査しています。その結果、検査法に問題があるところには是正措置を試みるなどして、医療全体の質を維持・向上させていくことに取り組んでいます。

臨床検査データの変動要因の解析と制御

■最後に今後の展望をお聞かせください。

 研究については、これまで取り組んできたことをさらに進展させて行きたいと思います。それによって日本の臨床検査の水準がより高くなり、臨床場面でもっと検査データが活かされることに貢献できれば、うれしいですね。

 また、臨床検査学科に関しては、この4月に開設されましたから、今は4年後の1期生卒業へ向けて学生と教員とで力を合わせて頑張っているところですが、4年後には大学院を設置し、より充実した教育・研究環境をつくれたらと考えています。やはり臨床検査を探求するには、大学院の存在は欠かせません。また、大学院の設置は学生の教育のためだけでなく、社会貢献にも繋がることだと思っています。

HCVインターフェロン療法の効果予測因子とオッズ比

・次回は7月11日に配信予定です。