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アレルギーや老化を予防する食品の機能を発見して、安全で有効な使用方法を考えていこう!

2015年8月7日掲出

応用生物学部 今井伸二郎 教授

企業時代は、免疫を専門に医薬分野の研究開発に取り組んでいたという今井先生。その知識をベースに機能性食品を探索する研究に取り組み、免疫疾患や老化に優れた予防効果を発揮する食品成分を発見しています。今回は研究室で取り組んでいる、いくつかの研究について伺いました。

■先生の研究室では、どのような研究に取り組んでいるのですか?

 私の研究室は「免疫食品機能学研究室」という名前で、花粉症やアトピー性皮膚炎、ぜんそく、食物アレルギーといった免疫疾患や老化に関連する疾患を予防する機能性食品の研究に取り組んでいます。今、進んでいる研究としては、例えば金時草という野菜。これは石川県金沢市で栽培されている加賀野菜のひとつで、葉の表側は緑色、裏側は紫色をしている、ちょっと変わった見た目の野菜なのですが、アレルギーに対する効果があることが確認できています。
 具体的には、金時草と特定の乳酸菌とを組み合わせることで、高いアレルギー予防効果が得られることがわかっていて、その成分が多糖であることまでは特定できています。金時草、特定の乳酸菌、どちらか一方だけでは、アレルギーに対する効果は弱いのですが、それらを組み合わせると効果が相乗的に上がるというわけです。今は、さらに成分の詳細を明らかにしていこうと取り組んでいます。

 また、小麦やライ麦の外皮に多く含まれるアルキルレゾルシノールという成分が老化抑制やメタボリックシンドロームに効果があるかどうかを調べる研究も進めています。老化抑制というのは、つまり寿命を延ばすということです。老化に関しては、ショウジョウバエを用いた実験を行っていて、アルキルレゾルシノールを入れた餌を食べさせると、45日ほどと言われるショウジョウバエの平均寿命が、だいたい10日ほど延びることがわかりました。
 現在は、アルキルレゾルシノールのメタボリックシンドロームに対する予防効果について詳しく調べていて、現状、肥満に対する効果があることは実験で明らかにできています。具体的には、マウスに普通の餌、高カロリーのラードを混ぜた餌、同じく高カロリーの餌にアルキルレゾルシノールを加えた餌を食べさせ、それぞれを比較するという実験に取り組みました。その結果、高カロリーの餌を摂取したマウスは当然、体重が著しく増えましたが、アルキルレゾルシノールを加えた高カロリーの餌を与えたマウスは、普通の食事を与えたマウスとほぼ同じくらいの体重となり、体重の増加が抑制されることがわかったのです。つまり高カロリーのものを摂取しても太りにくくなったということですね。ただ、もともと肥満だった場合、痩せていくのかどうかに関しては、まだ確認できていません。その部分は、今後、取り組んで行くべき研究課題だと思っています。


金時草と小麦

■なぜ、アルキルレゾルシノールが老化や肥満に作用するのでしょうか?

 アルキルレゾルシノールには、長生き遺伝子とも呼ばれるサーチュイン遺伝子を活性化させる効果があるんです。サーチュイン遺伝子は、摂取カロリーを制限すると活性化することが知られていて、長寿、糖尿病、肥満、癌抑制などに効果があるのではないかと考えられています。そこで私たちは、最初の段階で長寿の鍵を握るサーチュインを活性化させる成分を探そうと、スクリーニングを始めました。その結果、アルキルレゾルシノールにその効果があるとわかり、動物実験に取り組んだという流れです。
 研究の最終的な着地点としては、長寿ということでは、なかなか実感が伴わないものだと思うので、肥満やメタボリックシンドローム、糖尿病に効果がある成分として、広く社会に取り入れられるようになることです。今、トクホ(特定保健用食品)というものがあって、たくさんの商品が売られています。そういうものに適応してもらって、いろいろな形でみなさんの生活の中に取り入れてもらえるようになりたいですね。実際のところ、糖尿病患者の中には薬を飲むことを嫌がる人もいますし、肥満の方の場合は、病院に行かないという人も多いです。しかし、それがある種の病気のきっかけになることもありますから、予防的に機能性食品として摂取してもらえるようになればと思っています。


アルキルレゾルシノールの寿命延長グラフ

■先生ご自身は、研究の面白さをどのようなところに感じていますか?

 多くの方がそうかもしれませんが、健康には医薬品でないと効果がないというイメージがあると思うんです。ところが私自身、野菜など天然にあるものをたくさんスクリーニングしてみて初めてわかったのですが、天然のものって、結構、私たちの健康に効果があるんです。医薬品はたくさんの合成をして、時間をかけてつくりますが、実はスクリーニングをしてもそれほど効果的なものは見つかってきません。ところが天然のものの中からは、数百種類をスクリーニングしただけで、有用な機能のあるものが見つかってくるのです。“医食同源”と言う言葉がありますが、医と食は非常に関係していて、人間は食べ物を食べないと生きていけませんし、どういうものを食べるかによって健康をコントロールすることにもつながっています。そういうことに改めて気づかされたということが、この分野の研究で感じる面白みのひとつです。

■では、学生には本学でどのような力を身に付けてほしいと考えていますか?

 例えば、私が担当する「機能性食品学」という授業では、機能性食品の機能はもちろん、安全性のことも含めて理解してもらいたいと思って教えています。また、研究室の学生には、機能性食品を開発するために何が必要かということをしっかり身に付けてほしいと思います。機能性食品やサプリメントなどは、身近にある分、気軽に使っているところがありますが、それには危険な部分も内包しているということを理解してもらい、安全で有効な使用方法を学んでほしいのです。例えば、いくら健康に良いとされている機能性食品だからといって摂取しすぎると、問題が起きることもあります。天然のものだから危険性がないというわけではないのです。開発者は、そういう機能性食品の危険性もきちんと理解したうえで、開発していかなければならない。そういうところを教育や研究を通して、学生に身に付けてもらいたいと思っています。

■最後に、今後の展望をお聞かせください。

 手がけている研究の成果が、実社会で活用されるようになってほしいという思いは、もちろんあります。また、一人の研究者としては、いつか『Nature』『Science』『Cell』といった権威ある科学雑誌に、掲載できるような研究論文を書きたいとも思っています。これらの科学雑誌は、審査も厳しく、一般的な論文誌への掲載の何十倍もの苦労が必要になりますが、その夢を叶えられるように、今後も研究に取り組んでいくつもりです。

・次回は9月11日に配信予定です。