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太陽光をうまくレーザーに変換できたら、月開発への応用も夢物語ではないかも!?

2015年2月13日掲出

工学部 機械工学科 大久保 友雅 講師

中学生の頃からエネルギー分野に興味を持っていたという大久保先生。太陽光をレーザーに換えるなど、光とエネルギーに関する研究をされています。今回は、代表的な研究や教員としての思いを伺いました。

■先生の研究室では、どのような研究に取り組んでいるのですか?

 光のエネルギーを別の光や運動、熱など、さまざまなエネルギーに変換して利用しようという研究をしています。たとえば、サステイナブルなエネルギーである太陽光を集めてレーザーをつくる「太陽光励起レーザー」の研究。これは、太陽光という光エネルギーをレーザーという様々な用途に使いやすい光エネルギーに変換して使おうという研究です。具体的には、2メートル四方のフレネルレンズを取り付けた太陽追尾装置をつくって太陽光を集め、そのエネルギーを効率よくレーザーに変換しようと取り組んできました。フレネルレンズというのは、非球面レンズの表面を細かく分解して、平面上に配置することで厚みを薄くしたレンズのことです。

 ただ、太陽光エネルギーをレーザーに変換するということは、そう簡単なことではありません。大きなフレネルレンズで集めた太陽光は、長さ10cm、直径0.8cmくらいの円柱サイズのレーザー媒質というものに集められるのですが、この小さなレーザー媒質に、どう効率良く光エネルギーを集めるのかということが、そもそもの課題です。また、光のエネルギーが集まると、光だけでなく熱のエネルギーも発生します。その熱が、実はレーザーの動作を邪魔する敵なんです。ですから、いかに熱の影響を下げながら、太陽光からレーザー光にする効率を高めていくかということが、今のこの研究の課題ですね。


プラスチックで出来た薄い板状のフレネルレンズ

 それから、レーザー推進の研究にも長く取り組んでいます。レーザー推進とは、レーザーを当ててモノを動かすというもので、光エネルギーから運動エネルギーへの変換をテーマにした研究です。光を当てるとモノが動くというのは、なんだか不思議な話に聞えるかもしれませんが、仕掛けはいたって簡単。レーザーを当てたら、ボーンと爆発して、それでモノが吹っ飛ぶ、というようなことです(笑)。レーザーにはいろいろな性質があって、たとえばレンズを使って小さく絞ることでエネルギーを圧縮したり、紫外線や赤外線といった色を単色にすることでその色だけにエネルギーを集中したりする方法があります。そのなかでも私が採用しているのは、時間的な圧縮です。時間的圧縮というのは、ずっと一定にレーザーが出続けるのではなく、ある一瞬だけレーザーを出すというものです。その一瞬だけ強いエネルギーを出すので、火薬の爆発と同じように、短い時間でドンと爆発を起こすことができます。これを利用してモノを動かすわけですが、私の場合はさらに水を用いています。

 たとえば、水泳で平泳ぎをするとき、手で水を後ろに掻きますよね。その反作用で自分の身体は前に進むわけです。でも空気中で同じように平泳ぎをしても、前に進むことはできません。つまり、軽いものを後ろに掻いたところで、自分自身は前には進まないんです。でも水のように重いものを後ろにどけると、自分は前に進むことができる。この作用・反作用を利用して、レーザーを当てると爆発が起きて水が吹き飛び、その反作用で動かしたいものを動かすという仕組みで研究をしています。たとえば、レーザーで紙飛行機を動かす実験では、尾翼の後ろにアルミカップをつけて、そこに少しだけ水滴がたまっている状態にします。そのアルミカップにレーザーを当てると、水が後ろ方向に弾けて紙飛行機を逆側、つまり前に進ませることができるのです。

 この研究は、熱と流体の力学が必須となるので、そう言う意味では、機械工学科らしい内容の研究かなと思っています。また、モノを動かすということは、単純に面白いですから、挑戦することで学生の勉強へのモチベーションにつながるドライバーになってくれたらと思っています。

 そしてこれらを組み合わせて、太陽光励起レーザーで物が動かせるようになれば、サステイナブルな乗り物が出来上がり!というわけですね。どちらも効率は高くないのでまだまだ道は遠いですが。

 また、他大学との共同研究として、レーザー加工の数値解析にも取り組んでいます。ボーイング787や、最近ではBMWのi3シリーズ等にも使われているCFRP(炭素繊維強化プラスチック)というカーボンファイバーと樹脂から成る、軽くて丈夫な材料をレーザーで切断しようという研究です。このCFRPは軽くて丈夫なため、飛行機や自動車等の燃費を向上させるという意味でサステイナブルな材料です。これを今以上にものづくりに応用するためには物を一瞬で切ることが出来るレーザーが有効だと考えています。しかし、CFRPは炭素繊維と樹脂という別の材料が集まった複合材料であるため、レーザーを当てた時に起こる現象がそれぞれの物質で違っていて、なかなか上手く切断できないんですね。その課題を解決するには、レーザーが当たった時に、CFRPの中でどういう現象が起きているのかを調べられるとよいのですが、その現象は100万分の1秒という単位で起きるものなので、実験ではなかなか捉えられません。そこで私はCFRPにレーザーを当てた時に起きる現象を数値シミュレーションで捉える部分の研究を担当しているのです。

■これらの研究が進展することで、どんなことに応用できるのでしょうか?

 「太陽光励起レーザー」に関しては、太陽光を効率良くレーザーに変換できるようにすることで、たとえば、サステイナブルなエネルギー利用の例として、宇宙空間で太陽光を集めて発電し、その電力を地球上にエネルギーとして送る“宇宙太陽光発電”の伝送手段に利用できる可能性があります。また最近、話題になっている月開発にも利用できるかもしれません。月を開発するために太陽光を集めて月の砂を溶かし固め、土台にしようなんてことが考えられているようですが、それにレーザーが利用できれば、より微細な加工ができるかもしれない。そんなふうに、将来を見据えた利用の方法も考えています。

 また、レーザー推進の応用ということでは、恐らく皆さんがご想像されるであろうロケットの打ち上げ等についても提案されていますが,それ以外にも人工衛星の姿勢制御に利用できると言われています。人工衛星が自分の力で姿勢を変えられている場合はよいのですが、その制御装置が壊れたからといって、そのまま宇宙に放っておくわけにはいきませんよね。そこで、外からレーザーを当てて、人工衛星の姿勢を変えようという話がされています。

 それからデブリ除去への応用も考えられています。デブリというのは、宇宙ゴミのことです。そのゴミにレーザーを撃つと、ゴミの一部が溶けて、溶けたものが少し噴き出します。噴き出すということは、さっきのレーザーで紙飛行機を飛ばした例の水の役割と同じですから反作用があるわけです。それを利用して、たとえば人工衛星に近づいてきた宇宙ゴミにレーザー当てて、少し角度を変えることで衝突を防ぐことができるのではないかと考えられています。とはいえ私自身は、単に面白そうだから研究しているという部分が大きいんですけどね(笑)。

■先生が光やエネルギー分野に興味を持ったきっかけを教えてください。

 光エネルギーというよりは、もともとエネルギー関係に興味があって、学びたいと思っていました。詳しくは忘れましたが、中学時代に地球やエネルギーのことを調べていたか話し合っていたかしたとき、周囲の生徒が「誰かがなんとかしてくれるでしょ」とか「科学者にがんばってもらおう」みたいなことを言っていて。その考え方が自分としては気に入らなくて、問題意識を持ったなら、自分たちで取り組むべきではないかと思ったことがきっかけと言えるかもしれません。

 また、当時、私は四大公害である四日市ぜんそくで知られる三重県四日市市に住んでいたので、環境に関する話をいろいろと耳にしていたのだと思います。それこそ、当時からサステイナビリティに興味を持っていたということですね。

■では、研究の面白さは、どんなところにあると思われますか?

 一番わかりやすく言えば、太陽光を集めてレーザーをつくる効率は、今のところ、僕達がやっていた研究が世界一の記録を持っているんですね。内容はどうであれ、“世界一”というひとことで、「すごいだろ!」って自慢できることにはなりますよね(笑)。でも実際のところ研究は、当然二番ではダメで、何かの部分では、それこそ表面的には些細な事に見えるかもしれない領域だったとしても、世界で誰もしていないところを攻めないといけないんです。ですからどんな研究も、必ずそのジャンルの、その部分に関しては世界一の最先端を研究していると言えるんです。そこが研究の面白さだとは思いますね。

 まだ誰も研究していない、わかっていないことをテーマとして見つけて、頭の中で何度もシミュレーションして仮説を立てて、実験を繰り返して、真相に迫っていくわけです。1回の挑戦で当たることはまずありませんから、何度も何度も答えを探して頑張るので、当然、答えに行き着いた時の喜びは大きいですよね。それと同時に、何かしらの問題を解決できたわけですから、大げさに言えば社会貢献できたという喜びもあります。つまり研究がうまくいったときは、知的興味を満たすことと社会貢献の両方が成り立つんです。それが研究者のモチベーションじゃないかと思います。

■教育者としては、学生をどんなふうに育てたいとお考えでしょうか?

 東京工科大学の工学部ではサステイナブル工学を掲げているのですが、サステイナブルって持続可能という意味ですから、それを考えるには、いろいろな視点が必要になると私自身は思っています。たとえば、『自分の視点では』「あの技術はダメで自分が研究しているこの技術がよい」というの独りよがりな視点ではなく、いろいろな視点から見て互いの欠点を補い合い、長所を伸ばしていくというのが、正しいサステイナビリティのあり方だと思うんです。つまり「これはこのままだと欠点だけど、他のこれと組み合わせたら欠点をカバーして使えるよね」という『第三者の視点』が必要になるわけです。

 先ほど、研究の応用として「月開発に使えるかも!?」と言いましたが、それだって夢物語と言えばそれまでですが、未来人から見たら現実的なことかもしれませんよね。地球の今後を考えていくと、そういう『未来人の視点』も必要だと思います。50年後の人が今の技術を見たときに、どう思うか。そういう視点を持ったり、別の視点から見て、AとBを組み合わせたらいいよねと考えられたりすること。そういう『自分以外の視点』を持つということが、サステイナビリティに繋がりますから、夢物語を語れる想像力は意外と大切です。

 そういうことを、研究を通して学生に教えたいと思っています。最初は「太陽光がレーザーになるって格好いいだろ?」ってことで引きつけながらも、実際にはさまざまな視点があるのだという部分をしっかり伝えたいですね。

■最後に研究者としての夢や展望をお聞かせください。

 正直なところ、面白いことができれば、それでよいという考えではあります(笑)。ものづくりの現場で、「できた!」とか「実現した!」とか言っていたいし、ずっと何か面白いことに触れていたいとは思っています。

 まあ、夢というほど大それたものではありませんが、強いて言うならば、50年後、自分の研究が何かの役に立っていたらよいなとは思います。もしくは、教え子が開発したものが世の中の役に立っているということでもよいですね。自分の研究や教育が、何か少しでも社会の役に立つのであれば、うれしい限りです。

※学術的には「パワー」と言うべきところを、敢えて初心者に分かりやすいように「エネルギー」としている部分がありますが、ご了承下さい。

・次回は3月8日に配信予定です。