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これからの社会や企業で必要とされる“デザイン思考”を身に付けよう!

2015年12月11日掲出

デザイン学部 石塚昭彦 教授

長年、総合電機メーカーでプロダクトデザインはもとより、サービスやビジネスのデザインも手がけてきた石塚先生。今回は、これまでの実績や本学での教育について、語っていただきました。

■先生がこれまで手がけてきた作品(仕事)や研究について教えてください。

 私は富士通で、情報機器を中心としたプロダクトのデザインをしてきました。パソコンや携帯電話のほか、今はもう同社では扱われていないファクシミリやラインプリンタ、ドットプリンタ、ワープロ、スーパーコンピュータのデザインも手がけました。ただ、時代とともにデザインする“もの”もデザインの考え方やアプローチも随分と変化していきます。
例えば、1990年代は“プロダクトアウト”、つまり技術や製品を提供する企業側からのメッセージをいかにプロダクトに織り込むかというデザインの仕方をしていました。それが、2000年頃から情報機器が非常にパーソナルな商品になってくると、“マーケットイン”といって市場やユーザーの視点でものづくりをするように変わってきます。マーケットインを行うために、例えば、マーケティングや心理学的なことを学んで人間理解を深めたり、デザインに対するユーザーの嗜好を考えたりしました。ちょうどユニバーサルデザインや感性品質という言葉が出てきたのも、その頃です。もちろん家電メーカーなどでは、それ以前からユーザー視点でのものづくりが行われていましたが、情報機器分野はこの時期が本格的なマーケットインの戦略に変化した時期だと思います。

 現在も、このマーケットインのものづくりは続いていますが、ここ数年、日本の製造業は業績が良くないですよね。その理由は、マーケットインでは通用しなくなってきているからだと言われています。それならば何をすべきなのかということで、今、企業が積極的に取り入れようとしているのが、“デザイン思考”です。簡単に言えば、デザインの考え方をグラフィックやプロダクトといった、いわゆるデザインの枠内だけでなく、企業経営や事業戦略に取り入れようという試みで、現状、さまざまな企業で試行錯誤が繰り返されています。
私も富士通に在籍していた最後の4、5年は、“デザイン思考”を企業経営に活用する取り組みを行ってきました。また、その“デザイン思考”を取引先企業に教えることもしていました。例えば、企画を立てるとき、デザイン思考で物事を捉えるとこうなります、というようなことを教えていたわけです。そういう形で銀行や流通系の企業などを対象に、デザインの考え方を広く知ってもらい、それを戦略立案や課題解決に活かすための活動を行ってきました。


作品:(左)UltraMobile PC(IF Design 2007 (独) Advanced Studies部門賞)(中央)RapidScanRS20(Reddot design 1998(独) Highest design賞)(右) FMV LOOX-U(2007年度「新日本様式100選」選定)

■“デザイン思考”とは、例えばどういうことをいうのでしょうか?

 簡単に言ってしまえば、デザイナーの考え方です。デザイナーがどのように仕事をするのかというと、最初はテーマ探しから始まります。課題を発見するために、現場に足を運んで、現物を見るというフィールドワークを行う場合もあります。そこから洞察して気づきを得て、その仮説をもとに課題解決や提案のアイデアを出してプロトタイプで検証するといった、試行錯誤でモノをつくっていきます。ただし、その通りのプロセスを踏めばよいというものではなく、これはあくまで、こういう決まりごとがあるという程度のもので、マニュアルではありません。ですからテーマによって何をどうアレンジするかは、その人それぞれの力量によります。しかし、このアレンジすることが、日本のデザイナーや企業のビジネスの現場では、不慣れな感じがします。だからこそワークショップや研修などを通じて、いろいろなテーマや課題に、セクションや分野、肩書を越えた人たちと一緒になって取り組んでみることが重視されるようになっているんです。

 私自身、そうしたワークショップや研修で教えることがありますし、去年までは、地域の図書館の新サービスを考えるというプロジェクトに関わっていました。具体的には図書館を活性化させるために、地域の小学校の子ども達と司書が一緒に調べたり考えたりする授業を開くというサービスプログラムを試行し、図書館司書たちの意識を変革することから始めました。

 他にも、地方の大学と一緒に、その大学が地域コミュニティの中心となるための方法を考えることもしました。どう地域と大学を繋いで、どう地域の人を集めるかを考えるわけです。もちろん、私一人がプランを考えるのではなく、どうその形をつくりあげるかをクライアントと一緒に考えていきます。地域の人を集めてワークショップを行い、アプローチ方法やビジョンを共に考えていくことが大切なんです。それというのも、今や企業の1セクションの知恵だけでは、ビジネスは広がらなくなってきているからです。単にデザイナーが考えたデザインの提案が、そのまま社会に通用するような時代ではなく、デザイナーと開発と営業、宣伝、もっと言えばユーザーも一緒になってつくったほうが、いろいろな知恵が集まっているので、よい製品やサービスになるだろうという考え方にシフトしてきています。だからこそ、これからは“共に創る”というアプローチが主流になってくると予想できるのです。それにはデザイン思考が欠かせませんし、そういう考え方を身に付けた人が欠かせないわけです。

■では、授業ではどのようなことを教えているのですか?

 担当している授業に2年生の「プロダクトデザイン論」があります。この授業でも工業デザインのプロセスをひとつひとつ解説しつつ、“デザイン思考”の話を盛り込むようにしています。また、3年生からは演習プログラムが始まるので、この授業で学んだことや“デザイン思考”を演習で実践できるようにしたいと思っています。

 正直なところ、デザインを教える学校の中で“デザイン思考”を導入し始めている企業の動きを捉えている学校は少ないと思います。従来のプロダクトアウトの考え方にマーケットインの方法を加えて教えるスタイルが大半のような気がします。もちろん、デザインの基礎を身に付けることは重要ですが、これからデザインを学んだ人が企業の中で活躍していくには、それに加えてもっとビジネスやサービスを考えられなければなりません。だからこそ本学の学生には、そういう視点で物事を捉えて、デザインができるようになってもらいたいという気持ちが強くあります。単にプロダクトデザインを学ぶだけなら、他大学と同じデザインを学ぶことになってしまいます。私としては、その先を行くためにも、企業や社会の動きを捉えたデザインを教えていきたいと思っていますし、学生が卒業する頃の社会では、そういう人が活躍できるはずだと考えています。

■最後に今後の展望をお聞かせください。

 デザイン学部には3Dプリンタが導入され、私もそれを使った学内の共同プロジェクトに参加しています。何かそのプロジェクトで、成果を出したいですね。というのも私は、企業にいた頃から3Dプリンタに興味を持っていて。具体的には、3Dプリンタを使うことで、サービスや社会がどう変わるかということに興味があったんです。今は、まだ3Dプリンタの使われ方や使用範囲は限定的ですよね。例えば、従来プロセスでの試作品などを、簡易に早くつくれるモデル製作装置としてしか使っていないように。でもこれからは、もっとその使い方が広がるはずです。3Dプリンタは単体で存在するだけでなく、3Dスキャナや他のデジタル工作機械とも深く関係しています。そういうものを含めて活用できるようになれば、新しいサービスや工業デザインのあり方が変わるでしょうし、ものづくりのプロセスも変わるはずです。私はその部分に興味があるので、そこを追究していきたいと思っています。やはり工業デザインの面白いところは、ビジネスや産業に関係している分、常に変化していることですからね。新技術が導入されるなど、常に新しくなっているので、少なくともそこは追いかけなければなりませんし、できればそれを先行するような研究をしていきたいと思っています。

■デザイン学部WEB:
http://www.teu.ac.jp/gakubu/design/index.html

・次回は2016年1月8日に配信予定です。