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既存のIT技術を活用して、新しいシステムを作りたい!

2016年8月5日掲出

コンピュータサイエンス学部 竹田昌弘 教授

竹田昌弘 教授

コンピュータメーカーからコンサルタント会社勤務を経て、ビジネスシステムの研究へと軸足を移してきた竹田先生。研究をはじめたきっかけから、現在の興味の対象まで幅広くお話を伺いました。

■どのようなきっかけで研究者の道へ進まれたのですか?

 私は理学部の情報科学科出身で、大学を卒業して最初に就職したのは外資系のコンピュータメーカーでした。そこで普通にエンジニアとして働いていたのですが、お客さんにコンピュータやソフトという「もの」を売る仕事をしているのだからビジネスのことも知らなければいけないだろうと思い、筑波大学が新しく開いた社会人向けの夜間の大学院に一期生として入学。経営学について学び始めたのが研究者人生の第一歩です。
 私はもともとコンピュータのバックグラウンドを持っていたので、システムの発想で経営学を考えてみようと、「情報ネットワークが企業など組織の意思決定過程に与える影響」について論文を書きました。仕事も続けていましたが、大学院での勉強がそれまで学んだことのない分野でとにかく面白かったんですね。そこで、ビジネスを研究するにあたって中立な立場で企業と向かい合うにはメーカーにいたらダメだなと思い、コンサルティング会社に転職しました。そこに2年間勤めた後、大学院の同級生が愛知大学の短期大学部で講師を募集しているよと声をかけてくれたことが教員生活のスタートでした。

■先生が現在、取り組んでらっしゃる研究について教えてください。

 本来のテーマは、情報通信ネットワークに関連したビジネスシステムや組織の新しい形に関する研究なのですが、今、一番熱中しているのはビーコンを使ったチャレンジです。ビーコンというのはBluetoothを使った小さな発信機のようなもので、1秒間に10回ほどURLなどのこちらで設定したデータを発信することができます。それをスマホなどの受信機で読み取ることで、さまざまな情報が得られるのです。ビーコン本体はGoogleやAppleが規格を発表していて、1個2000〜2500円で買うことができます。学生たちと一緒に、それを使った面白いことを仕掛けたいなと思っています。
 たとえば学生たちとの話のなかで、本学の近くに片倉城跡公園という広い公園があるので、その敷地内のいろいろな場所にビーコンを置いて、歩きながらアイテムを集めていけるようなゲームはどうだろう、というアイデアが出ました。あるいは商店街の各店舗に置いてもらって、店の前を通りかかると自動的にクーポンが取得できるようにする。反対に商店街側はどこでどれくらいの人がビーコンを拾ったかという情報を得られます。そのデータをまとめることで、人々が商店街をどう歩いているかということがわかるんです。そういう形でマーケティングの手段として使えるんじゃないかという案もあります。もっと身近なところではオープンキャンパスで使えば、高校生たちがどんなルートで学内を回っているか、どこに大勢集まったかがわかります。
 実際に、徳島では阿波踊りの連がどこにいるかを追跡するためにビーコンが使われています。阿波踊りの当日は踊る場所が数カ所あるので、見たい連が今どこにいるか、わかりにくいんですね。そこでスマホのアプリを広げて見たい連が、今どこにいるのか分かるというわけです。
 そんな風にビーコンを使った新しい仕組み作りに、いろいろとトライしてみようと思っているところです。今はまだデータを集めている段階ですが、集まってきたらそのデータの分析も研究テーマにしていくことができるでしょう。
 ちなみに私の究極の目的は高尾山にビーコンを置くこと。高尾山の人の流れを読み解きたいんです。また、端末の情報からはその人が何語を喋っている人なのかも大体わかるので、どういうルートでどういう国の人が歩いているということもわかる。ただあそこは国定公園なので、勝手に物が置けないのでなかなか難しいんですが。

研究で使用しているビーコンの一例
研究で使用しているビーコンの一例

■研究室ではどのようなことをテーマにしているのでしょうか。

 ビーコンを使ったシステム作り以外に、現在、八王子の「Code for Hachioji」という市民プロジェクトにも参加しています。「Code」=「プログラムする」ということで、「Code for Hachioji」は「八王子のためにプログラムする」という意味。ボランティアで集まったエンジニアやプログラマが、八王子市から提供されるさまざまなデータを有効活用できるようなプログラムやスマホアプリを開発していくプロジェクトです。これはもともとアメリカで生まれた動きで、「Code for America」や「Code for Japan」などが既に実践されていて、それがさらに小さい地域にも広まってきたのです。いわば行政に予算が足りなくて手がまわらないところを、市民の力でやっていこうというプロジェクトですね。
 それとつながりますが、学生が卒論で取り組んでいるテーマのひとつに八王子市内の公園のデータベース作りがあります。公園がどこにあるというところまでは市がまとめているんですが、そこにはどんな施設があるのか、利用者にどのように使われているのか、そういうことを足で調べて、データベース化しようという試みです。
 私自身の研究テーマのひとつに「オープンソースソフトウェア開発の組織論的研究」があります。たとえばLinuxのような誰もが無料で利用できるオープンソースのソフトウェア開発に関わる人の意識は様々ですが、やはり一番多いのは優れたオープンソースを作って名を上げて、よりいい会社に転職したいというもの。他には自分が欲しいソフトがないから作ってしまったとか、Linuxの開発者のように「Just for FUN(ただ楽しいから)」という人もいます。もとは会社内の小さなネットワークが、インターネットの発展によって世界中に広がっていき、世界中の人が少しずつ協力しあって新しいものを作る。それをさらに広げた形ともいえるこうした市民のボランティアグループがどのように機能するのか。それを研究しようと思っていたのですが、「Code for Hachioji」に関しては自分も当事者になってしまったので、当面は客観的視点で研究テーマにするのは難しそうです。

■今後の展望についてお聞かせください。

 IT技術は道具なので、使い方によって効果や影響は違ってくるもの。新しい技術を作るよりも、それをどう使うかが私にとっては重要です。ですから新しい技術が出てきたらどんどん触っていきたいなと思っています。
 これはまだ本を読み始めたばかりですが、「ディープラーニング」も最近の研究者にとっては大きなテーマのひとつですね。その仕組みを作る研究をする先生もいますが、私はむしろ既存のオープンソースのディープラーニングソフトなどを使ってなにができるのかを考えたい。精度を高める研究ももちろん必要ですが、ディープラーニングで一体なにをするのか? というところが実は重要なのではないかと思うのです。ビーコンも同じです。ビーコンの信号は場所を指示しているだけなので、アプリによって見え方はいろいろ変わってくる。だからビーコンを見つけてなにをするか、というのはそれぞれのアプリで設定していけばいい。このように今ある道具を有効に使って、その先にある仕組みを研究の焦点にしていきたいと思います。

■最後に学生の皆さんにメッセージをお願いします。

 学生の皆さんには、早いうちになにかひとつ作り上げるという経験をしてもらいたい。きっとそれが自信につながるだろうと思うからです。
 また、その過程で社会と関わる経験もしてほしいと思います。先ほど紹介した公園のデータベースを作ろうとしている学生は、実際に公園へ出かけていき、そこを使っているお母さんたちに「どんな情報があったらいいですか?」と聞いて回っています。もう一人、まだ進行中なのでうまくいくかどうかはわかりませんが、八王子に新たにできたフードバンクの商品管理システムを作ろうとしている学生がいます。QRやバーコードを集まった商品に貼り付けて需要の確認をするといった仕組みを作ろうとしているのですが、そのためにはフードバンクの関係者と話し合わなければいけません。そういう風に、学生の皆さんにはどんどん外に出て行って、知らない大人とつきあって欲しいのです。就職してからはそれが当たり前のことになりますから、できれば就活前にそういう力がつけられるといいですね。

■コンピュータサイエンス学部WEB:
http://www.teu.ac.jp/gakubu/cs/index.html

・次回は9月9日に配信予定です。