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アニメーションの持つ「良さ」を活かしたデザイン領域での映像作りを目指したい!

2016年12月9日掲出

デザイン学部 視覚デザインコース 中島健太 講師

デザイン学部 視覚デザインコース 中島健太 講師

アニメーションを専門とし、アニメ映画の背景の仕事などもされている中島先生。今回はデザイン学部の新しいカリキュラムについて、そしてアニメーションが持つ本質的な魅力についてお話しいただきました。

■デザイン学部の新しいカリキュラムについて教えてください。

 本学のデザイン学部はデザインに興味のある学生を広く募るという方針で、デッサンなどを学んでいない人でも学力試験だけで受験ができます。さらに入学後は1・2年次の「感性演習」や2・3年次の「スキル演習」を通して基礎からきちんと学べますよ、という初歩からの学びをサポートする部分は新カリキュラムになっても変わりません。
 ただ、これまでは横断的な学びを重視して、全員が空間・視覚・映像という3つのコースを回ってから配属先を決めるという流れでしたが、新しいカリキュラムでは2年次の終わりに視覚デザインコースと工業デザインコースのどちらかを選択し、3年次からはそれぞれのコース内の2つの専攻――視覚デザインコースの場合は視覚デザインと映像デザイン。工業デザインコースの場合は空間デザインと工業デザイン――を学んだうえで、専攻を決めるという流れになりました。3〜4年の学びに筋道が立つように、コース選択が早まったということです。自分の専門性を高めたり、進路を決めていく上では、選択しやすくなっていると思いますし、より専門性の高いスキルが身につくようになったのではないかと思います。

■理系総合大学で「視覚デザイン」を学ぶことの意義とは?

 視覚デザインコースには「視覚デザイン専攻」と「映像デザイン専攻」があり、その違いをわかりやすく説明すれば「媒体の違い」です。視覚デザインは主にグラフィックデザインを中心とした印刷媒体、映像デザインはCMやプロモーションビデオといった映像媒体における表現手法と技術を学びます。とはいえどちらも「情報を伝える」という意味においては同じです。
 3年次以降の「専門演習Ⅰ・Ⅱ」の演習では、「社会との接点に存在する問題を見つけ出し、視覚デザインを通して解決していく方法を考える」というテーマで課題に取り組みます。たとえば食の安全だったり、環境汚染の問題など。全学的に「サステイナブル」というテーマを掲げていることもあり、デザインの力を通して環境や健康に関わる問題を持続可能な形で解決する、という部分に重点をおいて教育を行っています。社会との関わりを重視したデザインを学ぶこと。これが当学部の特徴でもあり、理系総合大学で視覚デザインの分野を学ぶということの意義でもあると思います。いわゆる美大系デザイン学科と異なるのはこういうところでしょう。

■デザインを学ぶ際に大切なことは何でしょうか。

 1・2年次の「感性演習」は、豊かな表現力につながる感性を磨き、表現をするためのスキルを身につけるための授業。けれど、そこで私が本当に学んで欲しいのは「らしさ」をつかむ方法です。自分のイメージで好きなことを勝手にやるのはデザインではなく、あくまでも遊び。「こういうことを求めていて、こういうデザインをお願いしたい」という相手のオーダーに対して、きちんとフィットさせようとする気持があるかないかが、デザインをする際にはとても大切なのです。
 たとえば友人にプレゼントを贈ることになったとします。相手が親しい仲で、しかももうすぐ赤ちゃんが生まれるタイミングだとしたら、自然とそこに向けて彼女が好みそうなプレゼントを選びますよね。それがフィットさせる意識があるということ。一方そのタイミングで、自分は鉄道が好きだから自分で撮った鉄道の写真を贈るというのはフィットしませんよね。このように「らしさ」をつかむというのは、いま求められているのは何かがきちんとつかめて、さらに相手が喜ぶだろうテイストやビジュアルが考えられるということ。1〜2年生の間に、そういう「らしさ」のつかみ方を身につけて欲しいと思います。 その「らしさ」がわかったうえで、そこに「新しさ」「おもしろさ」が上乗せできればいい。その上乗せが、デザインの大事な部分だと思います。最終的には「私はこういう理由でこういうものを贈ります」という答えが、その人なりの結論として出せれば、通り一遍にならないデザインが生み出せるのではないかと思います。

■先生ご自身の専門分野について教えてください。

 私の専門はアニメーションで、大学では学部時代も修士課程でも「コマ撮りのアニメーション」というジャンルを対象にしていました。もちろん子供の頃からいわゆる商業アニメといわれる「セルアニメ」を見て育ってはいたんですが、ちょうどその頃、海外から『ウォレスとグルミット』や『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』といった、とんでもなくレベルの高いコマ撮りのパペットアニメーションが入ってきて、「こんなものもアニメーションとして作られているんだ!」という驚きがあったんです。さらに同時期にユーリー・ノルシュテインの作品など、いわゆる「アートアニメ」というものがブームになりました。そのおもしろさに目覚めていろんな作品を見ていくうちに、このジャンルのなかでなにか面白いことができないかなと思い始めたのがきっかけです。
 今になって思えばその根本には、「無機物が動くことでまるで生きているようにふるまうことの魅力」があったように思います。『ウォレスとグルミット』をよく見るとわかるんですが、あの作品は粘土の人形に作った人間の指紋がついているんです。ミスではなく、あえて消していないんですね。指紋が残っていることで「粘土なんだけれど、人のようにふるまっている」という両方の意味が存在することになる。「モノ」が「モノ」として偽らずに存在しているのに、物語のなかでは違う役割を演じている。そこにたまらないおもしろさを感じますし、結局はそれがアニメーションの特性であり、醍醐味でもあるんじゃないかなと思っています。
 ちなみに卒業後は友人たちとアニメーションの制作グループを作り、一時期、幽霊屋敷のように古い家をスタジオにして仕事を受けたりもしていました。そこでいろいろな仕事をしているうちに、新海誠さんの『秒速5センチメートル』の背景を描く仕事などもやらせていただきました。その縁があって、実は『君の名は。』の背景も描いているんですよ。

■デザインにおけるアニメーションの位置付けはどのようなものでしょうか。

 アニメーションの語源はラテン語の「アニマ」という言葉で、生命のない動かないものに命を吹き込む、という意味をもっています。これを昔から実践してきたのがディズニーアニメですね。キャラクターが本当に自分の意志で動いているように見える。たとえば自然石がポンとあったとして、それをアニメーターが動かすと「ひょっとしてこの石、生きてるかもしれない」と思えるような、そんな技術がアニメーションの根源です。 ところが日本では「アニメーション」というとイコール略語の「アニメ」で、それはイコール「商業アニメ」になってしまうんです。僕が授業で「アニメーション」といったとき、学生たちが思い浮かべるのは「商業アニメ」なんです。
 けれどデザイン領域のなかのアニメーションは、商業アニメという枠から出て、もっと広い視野で捉えなければいけません。無機物に命を吹き込んだ結果、「この石、生きてるかも?」というように見る人が驚く、その驚きをコンテンツなり広告なりに活用していくことが重要です。
 もともとコマ撮りアニメはトリック映像から生まれたものです。同じ場面をずっと映していたはずなのに突然そこにいた人が消える、というような人を驚かせる映像から始まっている。デザインを介して情報を伝えるとき、そんな風に驚きを上乗せするようなアニメーションの特性を活かした表現ができればおもしろいですし、新しいデザイン領域のアニメーションといえるのではないかと思います。新しい技術ということではなく、もともとアニメーションが持っている「良さ」「おもしろさ」を活かした、デザイン領域での映像作りを目指してほしいです。

■最後に、今後の展望についてお聞かせください。

 最近の学生に昔のコマ撮りの特撮映像を見せると「CGみたい」と言ったり、ディズニーアニメのように膨大な枚数を描いている「フルアニメーション」は「動きがぬるぬるして気持ち悪い」と言うんです。けれどそれは話が逆で、もともとアニメはこうだったんだけれど、ディズニー以外の会社は財力が無くて作れないなどの条件があって、間のコマを抜かして枚数を減らす「リミテッド」という手法が生まれたのです。それが世界に広がっていき、今では「リミテッドのリミテッド」の様な作品も散見できます。そういうアニメを見慣れているせいで、ものすごい労力と時間をかけて作られた芸術的な作品を「ぬるぬるしてる」と言われてしまったら、こちらはしょんぼりしてしまいます。 ですからアニメーションの歴史を知っておくことも大事だろうと思いながら教壇に立っています。また、いまはデジタルアニメーションが主流ですが、セルアニメはこうだったんだよということも伝えていきたい。そうでなければデジタルの良さもわからないからです。セルアニメでは何千枚ものレイヤーは物理的に撮影が無理ですが、デジタルならばレイヤーが何千枚だろうと重ねられる。コマ撮りで撮影していた時代とは全く違う次元のものが作れるというのは、歴史を知ってこそわかることなのです。
 自分自身としては、そこに驚きがあったり、モノであることを偽らずに別の意味合いが重なってくる、そういう部分が遺憾なく発揮されたアニメーション作品が創っていければいいなと思います。最近、ネットで見て気になった作品に、日用品をそのまま使ってちょっとした物語を描いたコマ撮りアニメがありました。デザインという観点でいえば、そういうアニメーションの表現手法を情報伝達に特化してうまく使うことで、重要な内容をおもしろく伝達することが可能になるんじゃないかなと考えたりもしています。今後は、そういった情報伝達デザインとして機能するアニメーションの研究、制作も行っていこうと考えています。

■デザイン学部WEB:
http://www.teu.ac.jp/gakubu/design/index.html

・次回は2月10日に配信予定です。