大学の学びはこんなに面白い

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人も技術も“アンテナ”がますます重要な時代。偏見の壁を打ち破って、問題発見・解決できる人になろう!

2019年5月17日掲出

工学部電気電子工学科 松永 真由美 准教授

松永 真由美准教授

 日米欧で進められたアルマ望遠鏡の研究開発や日本の電波技術を世界にアピールすべく、日本代表として国連の会議に出席するなど、グローバルな活躍をされている松永先生。今回は先生の代表的な研究例や教育について、お話を伺いました。

■先生のご研究について教えてください。

  私は、高性能アンテナの開発や電波伝搬解析といった研究をしています。代表的な例としては、南米チリの標高5000mという高地にあるアタカマ砂漠に建設されたアルマ(ALMA:Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)望遠鏡の基礎研究に携わっていました。ちょうどこの4月に、人類史上初めてブラックホールの撮影に成功したというニュースが世界を駆け巡ったのをご存知でしょうか。その撮影は、世界各地にある8つの電波望遠鏡をつなぐことで実現されたのですが、そのひとつがアルマ望遠鏡です。
  アルマ望遠鏡は、ミリ波からサブミリ波(テラヘルツ波)という周波数帯域を観測できるもので、それによって宇宙の起源を探ろうと日米欧の国際協力で建設されました。今の天文学の常識では、宇宙はビッグバンから始まり、そこからどんどん膨張していると言われています。また、高校の物理でも習うと思いますが、エネルギー遷移の変化といって、ある物質のエネルギー状態が変化すると必ず電磁波が出ます。つまり化学変化が起こると、必ずそれに起因した電磁波が出るのです。そうすると、宇宙もビッグバンが起きたとき、色々な化学反応が起きて、色々な電波が出て、それがさんさんと宇宙から地球に降り注いでいると考えられるわけです。その降り注ぐ微弱な電波を探っていくと、どのように宇宙が形成されたのか、この地球や銀河系ができたのか、ということがわかります。その電波をとらえるために、アルマ望遠鏡の高性能なアンテナをつくる研究に初期段階から携わったというのが私の経歴のひとつです。
 

■研究室では、どのようなことに取り組んでいるのですか?

 4年生向けの卒業研究テーマとしては、身近にある電波を応用したモノを対象に、そこから問題を見つけ出し、それを改善するには今ある技術で何ができるかということを考え、形にする研究に取り組んでいます。例えば、携帯電話やスマートフォン(スマホ)を使っていて、一番不便を感じるところはどこでしょうか? ひとつには、おそらく充電があると思います。
 スマホや携帯電話は、1日使っていると、あっという間に電池残量が少なくなりますよね。他方、世の中には目に見えませんが、携帯電話、Bluetooth、Wi-Fiなど、無数の電波が飛んでいます。でもその電波を通信に使っていないときは、ただ飛んでいるだけなので、もったいないですよね。そこでその電波をエネルギーに変換して携帯電話などの充電に使おうという“エネルギーハーべスティング”技術が注目されています。私の研究室では、それを実用化するために要となるアンテナやマイクロ波回路の開発と、小さな電波からエネルギーを取り出し供給する無線電力伝送技術の研究を卒研テーマのひとつとして扱っています。
 これらは電波を再利用するという意味では、サステイナブル社会につながる研究だと思います。また、あらゆる電子端末がインターネットとつながるIoT時代において、宇宙の電波もとらえ、身近な人たちのコミュニケーションの橋渡しもし、そしてエネルギーを摘むこともできるアンテナの必要性はますます高まりますから、非常に重要な研究です。
 

松永 真由美准教授

■学生を教えるうえで、大切にしていることはありますか?

 少し話が遠回りになりますが、私自身の話をしますと、父は大学教授で電波を研究している研究者でした。母も働いていたので、私は幼い頃から、父の大学の研究室でたくさんの時間を過ごしてきたのです。そこには参考書も測定器もパソコンも揃っていて、それを父は好きに使わせてくれました。そこで色々なものに触れて、楽しかったことから、私自身、今の道を選んだのだと思います。また、我が家は平等意識やフレキシブルな考え方、多様性に対して柔軟な家庭でした。ですから私が小学校に上がって、「男の子はこうすべき、女の子はこうあるべき」といったことを言われて驚いたという話を両親にすると、「それは偏見だから気にしてはいけない」と話してくれました。実はこの偏見こそが、技術者や研究者にとって一番の問題です。偏見を持った研究者は何も生み出せません。ですから私自身、偏見を持たずに生きてきたつもりです。
 それは学生に接するときも同じで、人を偏見では絶対に見ません。コミュニケーションをとりながら学生の個性を知り、そこからその人の良い所を伸ばしていくようにする。逆に、偏見を持っていると感じる部分に対しては、それは持つ必要がないということを教える教育をしています。
 また、学生の中には、物事や日々を安心・安全にやり過ごすには、周りに合わせて目立たないことだと思っている人もいるみたいですが、そうではありません。そういう偏見を打ち破らないと、本当の安心・安全は得られないのだと教えています。つまり安全な場所ばかり歩いていると、次の、本当の安心・安全をつくれないのです。ですから、思ったことや疑問に感じたことを無視せず、したいと思ったことは人に笑われても一歩踏み出して挑戦してみる。そういう勇気を学生が持てるように、ポンと背中を押す研究室になるよう心がけています。

■今後の展望をお聞かせください。

 一言で言えば、「世界平和」。それに役立つ研究をしたいということです。学生への教育という点では、エデュケーション・ファーストです。教育があってこそ、国も世界も成り立つわけです。ですからとても高水準な教育、それこそ偏見の壁をどうしたら打ち壊せるのかというような教育を学生にすることで、人材育成という面で世界平和に貢献していきたいと思っています。
 また、私の研究を通して生まれた技術が世界平和につながることも願っています。ひとつは、災害が起きたときに役立つ技術。それから私たちの生活を豊かにする技術。電波望遠鏡に代表される宇宙開発の研究もそのひとつです。宇宙開発技術は何の役に立つのだという人もいるようですが、いずれ私たちの生活の中で最先端技術として使われるということは歴史的にわかっています。ですから電波望遠鏡の開発は今も続けていますし、JAXAとの共同開発も進めています。まだ誰も手がけていない技術開発や研究をしながら、その成果を社会に還元して、人々の役に立つ日を待ちたいですね。

■受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

 よく「アンテナを張りましょう」と言いますよね。就職活動もアンテナを張って、情報収集をしないとダメだ、なんて言われます。つまり、人間も色々なものを敏感にキャッチする能力が必要なのです。そしてその力を養うところが、大学なのだと思います。大学に入ってからが人間形成の本番だということを理解してほしいですね。
 そのためにも、大事なことは問題意識を持つこと。そして問題や疑問だと思ったことは、スルーせずに、どうしたら良いか解決策を考えること。あるいは解決できる人になるのにはどうしたら良いかを考えることです。そうしないと日本も世界も良くならないし、自分自身も成長ができません。特に工学部は、問題意識を持って、その問題をどう解決するかという能力が問われるところですから。また、その能力がある人ほど、世界で重用される、欲しい人材だと思われます。その力を育成するには、大学に入ってからが勝負ですよ! 

■工学部電気電子工学科WEB:
https://www.teu.ac.jp/gakubu/eng/el.html

・次回は5月29日に配信予定です