
1)メラニン色素を蓄積するメラノソーム複合体の大型化の抑制に成功した培養細胞。左写真では大型化しているメラノソーム複合体が、右写真では小さくなっている。
「しみ」抑制のメカニズム解明など、実用化につながる知見を獲得。
本学大学院には、全国でも数少ない「化粧品と美容に特化した専門教育と実学研究」に取り組む6つの研究室があります。充実した設備と豊富な経験を基に、化粧品と美容のエキスパートを育てることを目標とする、これら研究室の特徴のひとつとして、外部企業と共同で肌科学や毛髪科学などの研究を行っていることが挙げられます。その共同研究先は化粧品会社や化粧品原料会社、美容機器会社など、「美と健康」を追求する幅広い企業に広がっています。
こうした具体的な共同研究の一例として、「しみ」の抑制をテーマとする研究があります。しみは、色素細胞(メラノサイト)でメラノソームでのメラニンの生成が促進されることが原因なだけではなく、表皮角化細胞(角層などの表皮を構成する細胞)でメラノソーム複合体が大型化して蓄積することも原因となります。大型化したメラノソーム複合体は細胞内でオートファジー(細胞内のタンパク質を分解するための仕組みのひとつ)等が活性化することによって、可視化できないほど小さなメラノソームになります。
応用生物学部の美科学研究室と複数の化粧品関連会社で進めている研究では、紫外線を浴びたり年齢を重ねたりすることで表皮の基底膜に蓄積する「カルボニル化・糖化産物」という物質を抑制することで、色素細胞でのメラニンの生成を抑制するだけではなく、表皮角化細胞での大型化メラノソーム複合体の生成を抑制できることを見出しました。現在は、大型化したメラノソーム複合体の分解メカニズムに焦点を当てた研究が進行中です。

本学片柳研究所5 階に開設されたアドテクセンター。
動画広告の研究など注目の取り組みを、アドテクセンターを拠点に展開。
近年、広告の手法や技術は大きく変化しており、顧客一人一人のライフスタイルなどに合わせた広告の提示なども可能になっています。しかし、広告研究においては、従来型の社会科学的研究やクリエイティブ面の研究が主であり、新しい技術を生かした広告や顧客の体験に着目した研究を、他の学問領域からの知見を融合させて行っている例は多くありません。また、新しい時代の広告モデルについて統合的に研究した例も少ないのが現状です。
そこで東京工科大学大学院では、異なるメディア分野を専門とする複数の研究者が主体となり、広告イノベーションをテーマとするさまざまな研究を推進しています。その一例が、近年発展が著しい「動画広告」に関する研究です。ここでは、動画広告を扱う広告会社や広告主、プラットフォーマーなどへのインタビューをベースに、現在の動画広告が抱えている課題を明確にし、その解決に向けた提案を行うことをめざしています。
本学ではこのような広告研究の新拠点として、片柳研究所棟5階に「アドテクセンター」を開設しました。このセンターで広告研究の成果を幅広く公開するとともに、産学や他大学との連携、国際交流に基づく多様な広告イノベーション研究を、積極的に展開していく予定です。