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大学の学びはこんなに面白い

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「環境とバイオテクノロジーの接点となる研究を」

応用生物学部 斉木 博 教授

■先生の研究について教えてください。

私の研究室では、環境と生物に関わる研究を行っています。ひとつは、微生物を使って環境の修復を試みるという研究。例えば、東京の築地市場を移転する先の土地が汚染されていると問題になっていますよね。こうした汚染された土壌を、微生物を使ってきれいに回復させる研究をしているのです。微生物の中には、酸素で呼吸するものもいれば、硝酸や硫酸で呼吸するものもいます。当研究室では、そんな中でも金属で呼吸する微生物を使って研究を進めています。この研究では実際の環境の中で微生物が土壌の有害な金属を還元して無害化したり、有機物を分解したりすることが重要です。つまり、酸素のないところで働く微生物が大切な鍵となるのです。
ふたつめの研究として、抗原抗体反応を使っていろいろな物質の検知や測定をする研究を手がけています。これは生物の生活環境内にあって、その生態系や健康に影響を与える化学物質“環境ホルモン”に関連した研究です。微量な環境ホルモンを化学的に検出することは、実はなかなか難しいことなのです。そこで生物の体内に微生物などが入ってきたときに抗体を作り出す抗原抗体反応の原理を用いて、微量な環境ホルモンを測定しようと取り組んでいます。また、東京都八王子市と共同でバイオマスに関する研究も行っています。

■バイオマスの研究とは、どのようなものですか?

バイオマスとは“生物由来の資源”と定義されますが、簡単に言うと薪や炭などのことです。昔は太陽の光で植物が成長し、それを燃料にして使うという繰り返しを行っていました。そういう循環の中では、二酸化炭素の排出量は増えません。そこで地球温暖化が進む今、このクリーンなエネルギーが見直されてきているのです。
バイオマスの原料には家畜排泄物や食品廃棄物、下水汚泥などが挙げられますが、本研究プロジェクトでは八王子市から出る剪定枝をその資源としています。というのもこの研究には、八王子市のゴミ処理問題が関係しているからです。八王子市から出るゴミを減らし、なおかつ新しいエネルギーをつくり出すという目的から、まずは燃料化しやすい剪定枝を蒸し焼きにし、発生したガスを触媒でもってガソリンに換えようと挑んでいます。エタノールやメタンガスではなくガソリンを選んだ理由のひとつには、大規模につくることができるという利点が挙げられます。そのバイオマスからつくり出したガソリンを使って、八王子市内のゴミ収集車を走らせることができればと考えています。また、将来的には、バイオマス以外のさまざまなゴミをエネルギーや液体燃料に換えていく研究に繋げていきたいですね。

■先生がこの分野の研究を始めたきっかけとは?

高校生くらいのときから、生物や生化学に興味を持っていました。ただ、当時の大学では生化学を扱っているところがほとんどなかったのです。そこで化学の中でも有機化学が面白そうだなということで、その方向へ進み、博士号も有機化学でとりました。その後、筑波大学大学院環境科学研究科というところに3年ほど勤務して。そこは日本の中で初めて、環境系が研究できる大学院だったのです。それ以来、環境の道をずっと進んできて、今、再び生化学の分野へ戻ってきたというようなかんじです(笑)。

■では、研究の面白さややりがいとは何でしょうか?

環境問題に関連する研究は、研究成果がダイレクトに社会の役に立ちます。そういうところは、大変やりがいのある分野だと思いますね。また、私だけでなく研究室に所属している学生たちも「世の中の役に立ちたい」という気持ちの強い人が多いです。そういう意味においても、この分野を研究してきて良かったと思っています。
環境の中でもバイオを使った研究は、特に時間がかかります。土壌をきれいにすると言っても、すぐにはできませんし、結果を得るにも時間が必要です。ただ、その代わりといっては何ですが、お金はそれほどかかりません(笑)。コストを抑えて、良い結果をできるだけ多く出せるということです。この研究室では、環境とバイオテクノロジーの接点になるようなことに主として取り組んでいきたいと考えています。微生物を使った研究や抗原抗体反応の応用は、まさにそういう研究テーマだと言えます。

■最後に今後の展望をお聞かせください。

バイオマスの研究に関して言えば、これはもともとゴミ処理問題から始まっている研究ですから、八王子市のゴミ処理自体を変えて行くことに繋がれば良いなと思っています。例えば、この研究の成果として、将来的に液体燃料をつくるゴミ処理施設ができるかもしれません。新しい技術が出てくると、社会のシステムは少しずつ変わっていきます。私の研究がその一条になればと願っています。また、八王子市のようにバイオマスを有する街は、日本全国にたくさんあるはずです。この研究をきっかけに八王子市だけでなく、全国の地方都市の環境や社会システムを変えることに繋がるとうれしいですね。
それから微生物の研究にも大きな夢を持っています。この研究室で扱っている金属を還元する微生物は、進化的にはものすごく古いものだと考えられています。というのも地球が生まれたとき、この星には酸素がなかったと言われているのです。では、微生物はどのようにして生きていたのかというと、恐らく金属などを還元することでエネルギーを得ていたのではないかと…。現在の生化学では、呼吸のメカニズムなど、すごく難しいことが明らかにされてきていますが、もし地球ができて間もないころに生命が生まれたとしたら、それほど難しいメカニズムでは呼吸していなかっただろうと私は考えています。ですから微生物を研究することで、「生命はどこからやってきたのか」という根源的な問いを解き明かすことができればと思っているのです。
[2009年2月取材]

■環境バイオ(斉木博)研究室
http://www.teu.ac.jp/info/lab/project/bio_dep/86.html

・次回は5月15日に配信予定です。