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“化粧”を基盤とした作業療法プログラムを共同開発

東京工科大学・首都大学東京・カネボウ化粧品の研究チームが初めて着手


東京工科大学
首都大学東京
株式会社カネボウ化粧品

  東京工科大学(医療保健学部作業療法学科 石橋仁美助教)、首都大学東京(健康福祉学部作業療法学科 石井良和教授、石橋裕助教)とカネボウ化粧品・美容研究所の研究チームは、現在はまだ確立されていない、「“化粧”を基盤とした作業療法プログラム(SSPC※)」の共同開発に着手しました。2012年度末を目処にプログラムの完成を目指し、将来的には作業療法士にSSPCを広く普及し、障がいをもった方々の作業遂行上の問題の軽減化を図るとともに、QOL向上にも寄与させていきます。
  なお共同開発の前段階で、作業療法士が実際に化粧プログラムを試行し、いくつかの課題を抽出しました。6月15日~17日に開催される第46回日本作業療法学会では、作業療法における“化粧”の重要性や意義を提唱するとともに、試行段階で抽出した「化粧プログラムの課題」について発表します。またその課題は、現在研究チームの中で検討を重ねており、より最適なプログラムとして確立させるべく、共同開発を進めていきます。
※SSPC:Supporting Social Participation through a Cosmetic program
    (生活と化粧を関連付けた社会参加支援プログラム)

作業療法としての化粧プログラムの意義

  「作業療法」は、人々の健康と幸せのために、また障がいをもった方々の生活を再建するために、その人にとって重要で意味のある日々の活動(作業)が遂行できるようになることを支援する、作業療法士※によるリハビリテーションです。「作業」とは人生に意味を与える活動すべてを指し、その中には“化粧”も含まれます。化粧は、女性が社会で生活する上で重要な役割を担っており、化粧をすることによって積極性や自主性が増すとも言われています。このような化粧の特長を活かした作業療法プログラムは、障がいをもった方々の社会参加を促進させることなどが期待できますが、その支援方法はいまだ確立していないのが現状です。
※作業療法士:国家資格をもつリハビリテーション専門職で、日本国内で約60,000人が従事(平成24年4月1日現在)。職域は病院や介護施設、領域は身体障がい、精神障がい、発達障がい、高齢者など。
 

作業療法士による“化粧を用いた作業療法”の検討

  東京工科大学ではこれまで、化粧に精通した作業療法士による、化粧を用いた作業療法を検討・実践してきました。そこでは、対象となるクライエントの感情が肯定的に変化したり、退院後の生活への関心が高まるなど、プログラムの効果が確認されています。
  一方で、作業療法士は化粧の専門家ではないことから、例えば、クライエントから「似合う色」や化粧品についての質問を受けても十分に答えることができなかったり、化粧方法の難易度を調整することが難しく、クライエントに疲労が見られたりといったケースもあり、化粧を用いた作業療法を、あらゆる作業療法士が運営するという観点では、多くの課題が浮かび上がりました。
 

“化粧”を取り入れた作業療法プログラム(SSPC)の開発と展望

  そこで、化粧の専門知識のない作業療法士でも運営でき、クライエントの負担にならないよう簡単な工程で、かつクライエントが満足できるような内容のSSPC開発を目指し、東京工科大学、首都大学東京、カネボウ化粧品は、2011年より共同開発を本格スタートさせました。現在は2012年末のプログラム完成を目指し、身体、精神に障がいをもつクライエントを対象としたSSPCの予備的試行と検証を行い、東京工科大学と首都大学東京が作業療法プログラム自体の改良を図る一方で、カネボウ化粧品でも、SSPCに最適な化粧方法や教材などの検討を進めています。
  SSPCは、生活上の動作改善といった機能回復を目的としたプログラムではなく、「買い物に行きたい」「授業参観に行きたい」といった、化粧と関連がある日常生活上の課題に取り組むためのプログラムであることが特長です。ただ単に化粧をするだけではなく、クライエントの「外出したい」という目標を叶える手段として、作業療法士はクライエント自身が化粧という作業を獲得できるようにサポートします。
  プログラムは、日常生活の課題に関する学習会と化粧の実習で構成されています。プログラム改良の一環として、今年度から作業療法の理論の一つである『人間作業モデル』の考え方を一部取り入れ、学習会の中でクライエントに日常生活を振り返ってもらうことにしました。『人間作業モデル』は、人が行う作業(例:化粧)がどのように動機づけられ、パターン化され、行われているのかを説明するための枠組みです。この枠組みを使用したことで、例えば習慣や役割の振り返りの中から、自分にとって必要な化粧技術が何かを効果的に理解してもらうことが容易になりました。この手法は、予防的作業療法プログラム「65歳大学」を開発した山田孝・前首都大学東京(現目白大学大学院)教授が提唱し、川又寛徳・首都大学東京作業療法学科助教らによってQOLの向上効果があることが確認されているため、SSPCでも同様の効果が期待されています。
  将来的には、SSPCを全国の作業療法士に向け普及させることも視野に入れていきます。
 

今後の予定

研究チームは、作業療法における“化粧”の重要性や意義、さらには共同開発の前段階で作業療法士が化粧プログラムを開発・試行してきた際の課題などについて、6月15日~17日に開催される第46回日本作業療法学会で発表します。
また、東京工科大学では、2011年度より作業療法を学ぶ学生に向けた授業『基礎作業療法技法実習Ⅱ』に化粧を題材とした演習を取り入れており、今年度は5月29日と6月5日の2回にわたり、「作業療法に化粧を取り入れる意義」や「基本的な化粧方法」を学ぶ演習をカネボウ化粧品・美容研究所と共同で実施します。作業療法士と化粧品メーカーが共同で実施する講義は、初めての試みとなります。
 

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2012年5月30日掲出