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加熱調理中に気分が悪くなる「油酔い」の発生メカニズムを解明。飲食店など調理現場の環境改善に期待

2013年6月27日掲出

東京工科大学(東京都八王子市片倉町、学長:軽部征夫)応用生物学部の遠藤泰志教授らの研究チームは、食用油脂を使った加熱調理中に気分が悪くなる「油酔い」の原因物質とされる「アクロレイン」※1の発生メカニズムの解明に初めて成功しました。

■概要 「油酔い」の原因物質である「アクロレイン」は、従来グリセリンから生じるとされていましたが、実際は、油脂中のリノレン酸が空気中の酸素により酸化されて生じるヒドロペルオキシドがさらに高温で酸化を受けた後、分解して「アクロレイン」が生じることを初めて証明※2しました。

■背景と目的
食用油脂を用いてフライ、炒め等の加熱調理を長時間行うと、悪臭がこもり、作業者が「油酔い」と呼ばれる気分が悪くなることがあります。この「油酔い」の原因物質は、主に油脂のグリセリンの熱分解によって生じる「アクロレイン」と呼ばれる揮発性のアルデヒドの化合物と言われてきました。一方、油脂の種類によっては、「油酔い」を起こしにくい油脂があることが経験上知られていましたが、食用油脂の加熱によって「アクロレイン」がどれ位生じるのかは明らかにされていませんでした。
そこで、米油製造大手の築野食品工業株式会社(和歌山県伊都郡かつらぎ町、築野富美社長)と共同で、調理環境を改善することを最終目的として、各種食用油脂を加熱した後「アクロレイン」を定量し、「アクロレイン」を生じにくい油脂の探索を行いました。

■成果とポイント
加熱調理中に生じる「アクロレイン」の量は油脂の種類によって大きく異なり、ナタネ油や大豆油で多く、逆にコメ油やハイオレイックヒマワリ油で少なくなりました。すなわち、油脂中のリノレン酸(炭素数が18で、二重結合を3つ持つ、人の身体にとって必要な必須脂肪酸)の含有率が、加熱時の「アクロレイン」の生成と悪臭との間に非常に高い相関性のあることが明らかになりました。
これは、「アクロレイン」がグリセリンの熱分解ではなく、リノレン酸であることを証明した点で、これまでの食品科学の教科書に記載されている内容を覆す画期的な発見であると言えます。

■今後の展開
本研究成果は、リノレン酸含量の少ない油脂、あるいは酸素濃度を減らすような不活性ガスを利用することで、食用油脂を使った加熱調理中のアクロレインの発生を抑制できることを示唆するもので、実際に加熱調理を行っているファストフード店や惣菜店などの現場の環境の改善につながることが期待されます。

※1 アクロレインは、アルデヒドの一種で刺激臭を有する化合物。医薬用外劇物に指定されており、肺や目に障害をもたらすことが知られています。

※2 本研究成果は、日本栄養・食糧学会第67回大会のスポンサードセミナーにおいて紹介したほか、科学雑誌「Journal of the American Oil Chemists’ Society」7月号に掲載予定です。

この件に関しての報道機関からのお問い合わせ先

■東京工科大学 担当:応用生物学部教授 遠藤泰志
Tel.042-637-2433 / E-mail. endo(at)stf.teu.ac.jp
※(at)はアットマークに置き換えてください。