プレスリリース

Press Releases

東京工科大学 HOME> プレスリリース> 2013年のプレスリリース> 「腸内細菌」が「鉄分」の吸収を助けていることを発見

「腸内細菌」が「鉄分」の吸収を助けていることを発見

2013年9月18日掲出

東京工科大学(東京都八王子市片倉町、学長:軽部征夫)応用生物学部の斉木博教授らの研究チームは、整腸作用を持ち人間にとって必要な細菌である「腸内細菌」が、「鉄分」の吸収を助ける働きを持っていることを初めて明らかにしました。

背景と目的

鉄分は多くの生物にとって必須の元素ですが、自然界では3価の鉄として存在しており、水にはほとんど溶けません。自然界ではこれを微生物が2価の鉄に還元することで水に溶けるようになり、植物などはこれによって生育に必要な鉄分を調達していることがわかってきています。
食物中には、水に溶け吸収されやすいタンパク質に結合した形で入っていますが、消化の過程で遊離し、3価の鉄となります。人間の腸には、これを2価の鉄に還元して吸収する機構が備わっていると考えられていますが、マウスを使った実験では、3価の鉄を還元する機構を遺伝的になくしても生育に影響が出ないことがわかっています。つまり哺乳類は、自身が3価の鉄を還元する以外にも鉄分を吸収する機構を持っていると考え、腸内細菌の鉄還元の能力を調査しました。

成果

小腸内に存在する4種の腸内細菌について

小腸内に存在する4種の腸内細菌について、鉄の還元能力を調べた結果、大腸菌、酪酸菌、乳酸菌、ビフィズス菌のいずれにおいても、腸内のような酸素のない条件で3価の鉄を還元し2価の鉄とし、微生物の増殖が促進されることが判明しました。これは鉄の吸収を助けていることを示しています。

社会的・学術的なポイント

腸内細菌は、哺乳類の腸内の環境を一定に保ち、腸における消化吸収を助けるとされていますが、本研究により鉄分の吸収にも一役かっていることが新たに判明しました。
※本研究成果は、2013年3月の「日本農芸化学会」において発表されました。

Fe(Ⅲ)□EDTA による乳酸菌の増殖への影響(0~5mM)

Fe(Ⅲ)□EDTA によるビフィズス菌の増殖への影響

乳酸菌、及びビフィズス菌ともに3価の鉄を加えることにより増殖相度が倍になり、鉄の還元が観察された(乳酸菌、及びビフィズス菌で5mMの鉄に対して40%)

研究内容の詳細などこの件に関しての報道機関からのお問い合わせ先

■東京工科大学 応用生物学部教授 斉木博
Tel.042-637-2419 / E-mail. saiki(at)stf.teu.ac.jp
※(at)はアットマークに置き換えてください。