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津波避難ナビとエリアワンセグ放送を組み合わせた新システムの開発に着手

2013年3月26日掲出

ライブ映像配信の併用で“危機感”の喚起にも効果
津波避難ナビとエリアワンセグ放送を組み合わせた新システムの開発に着手
高知県黒潮町にて、国内初の実証実験を実施

 津波等の災害発生時に、避難誘導を支援するナビゲーションシステム『デジタル皆助ナビ』の研究開発を手がける東京工科大学(東京都大田区西蒲田、学長:軽部征夫)では、発災後の津波の様子などをリアルタイムに配信することができる「ワンセグ型エリア放送システム(エリアワンセグ)」を組み合せた新たなシステムの開発に着手。このほど、南海トラフ巨大地震で国内最大級の津波高が想定されている高知県幡多郡黒潮町において、国内初の実証実験を実施いたしました。

「津波等避難ナビシステム“デジタル皆助ナビ”」のデモ画面

 同システムは、本学デザイン学部の板宮朋基助教が、民間のベンチャー企業(※1)とともに開発を進めているもので、津波等の災害発生時に刻々と変化する状況に応じて、よりリスクの少ない避難ルートをスマートフォンなどの地図上に示すほか、危険な方向に進みそうになった場合に「危険地域に接近」等の文字や音声で警告する機能を特徴としています。

 新しいシステムは、半径数百メートル以内の限られたエリアに映像を配信する「ワンセグ型エリア放送システム」(※2)を組み合わせたもので、避難時には避難ルートと同時に、自分の周囲の津波の到達状況や道路の渋滞状況などのライブ映像を表示します。また、ワンセグ型エリア放送システムはバッテリーでも稼働できるため、停電時や携帯電話等の通信網がダウンした際の代替情報伝達手段としても有効です。

 3月1日に黒潮町で行なわれた実証実験には、同町役場の協力のもと、地元の住民11名(※3)が参加。避難ナビシステムと、町内3カ所に設置されたカメラからのライブ映像をスマートフォンで確認しながら移動したグループ(平均年齢58.8歳)は、ルートを外れることなく高台の避難場所まで約2.1kmの行程を28分余りで到着。昨年9月に同ルートで避難ナビのみを利用して行なわれた実証実験時の大学生(平均年齢20歳)の平均記録とほぼ同じであり、予想を上回る結果となりました。
参加者からは、実際の海岸のライブ映像を見てより危機感や切迫感を持ったという感想も聞かれました。また今回の実験では、スマートフォンを使い慣れていない高齢者の避難を想定し、60代から70代を中心とした4~5人のグループを、20代と40代のスマートフォンを使える人が先導する形で行なわれました。

  3月2日には、自動車における稼働実験も行い、車内における避難ナビの動作とワンセグ型エリア放送の映像受信を確認できました。

※1 株式会社アイエスエム(所在地:東京都目黒区、代表取締役:板宮憲一)
※2 株式会社JVCケンウッドの協力で、同社が開発した「ワンセグ型エリア放送システム」を採用
※3 土地勘のない方が災害に遭遇した場合を想定し、住民の実際の居住地域とは異なるエリアで実施
※4 アプリケーションは開発段階のため、実験では避難ナビとエリアワンセグの端末2台を併用

東京工科大学デザイン学部 板宮朋基助教のコメント:
「今回の実証実験では、自分の周囲の発災状況をワンセグ型エリア放送の映像で知ることで“正しく恐れる”ことができ、迅速な避難行動につながったと考えています。また、課題であったスマートフォンを使い慣れていないお年寄りの避難については、使える人が率先避難者となって誘導する方法も有効であることがわかりました。今回の実験を通して、発災時に防災無線やテレビ放送などを補完する情報伝達手段として、スマートフォンによる避難ナビやワンセグ型エリア放送などあらゆる手段を多重的に用いることの有用性を確認できました。今後はこのシステムが、発災時に避難が必要な人々に確実に危険情報を伝達し、迅速かつ的確な避難行動を支援する社会インフラのひとつとなることを目指し、さらに研究を進めたいと考えています」

【実証実験の概要】
実施日: 2013年3月1日(金)
実施場所: 高知県幡多郡黒潮町
被験者: 同町の20代から80代の住民11名
ルート: 同町入野地区から避難場所(錦野児童公園)まで約2.1km

実験結果:
  条件 結果 備考
Aグループ 40代男性が避難ナビとエリアワンセグ端末を持ち、4名(平均年齢63.5歳)を先導 所要時間 28分17秒
平均歩行速度 5.3km/h
ルート逸脱なし
4名もエリアワンセグ端末を持ちながら避難
Bグループ 20代女性が避難ナビのみを持ち、5名(平均年齢78.4歳、最高87歳)を先導 所要時間 44分18秒
平均歩行速度 4.1km/h
ルート逸脱なし
行程の終盤は強風雨の天候のため、計4分間停止

(参考)昨年9月に同ルートで避難ナビのみを利用して行なわれた大学生(平均年齢20才)による実証実験時の平均所要時間は29分34秒。

※実験結果等の詳細につきましては、下記までお問い合わせください。

【デジタル皆助ナビについて】
GPS(全地球測位システム)による現在地情報や気象庁発表の津波予測高、到達予想時刻、周囲の標高、建物の高さなどをもとに現在地から適切な避難場所への最もリスクが少ないと考えられる推奨ルートを地図上に示します。また、自治体から提供された津波浸水想定、土砂崩れや道路寸断、家屋倒壊といった危険箇所のデータベースをもとに、危険な方向に進みそうになった場合には「この先危険」等の文字と警告音で注意を喚起します。スマートフォンやタブレット端末のほか、カーナビや地上デジタルテレビ、駅構内にあるデジタルサイネージなどの情報表示機器での利用も想定しています。

■この件に関しての報道機関からのお問い合わせ先
・東京工科大学 デザイン学部 板宮 tel:03-6424-2083
E-mail: itamiya(at)stf.teu.ac.jp  ※(at)はアットマークに置き換えてください。