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褐藻類の成分が「潰瘍性大腸炎」を抑制することを発見、予防治療などへの応用に期待-応用生物学部

2014年11月20日掲出

 東京工科大学(東京都八王子市片倉町、学長:軽部征夫)応用生物学部の佐藤拓己教授らの研究チームは、褐藻類シワヤハズ※1由来の「テルペノイド・ゾナロール※2(以下ゾナロール、図1)」が、潰瘍性大腸炎を抑制することを発見しました。
 本研究成果は、科学雑誌「PLOS ONE(プロスワン)」2014年11月19日号※3に掲載されました。

背景と目的

図1:海藻由来のシワヤハズ/ゾナロールの構造
図1:海藻由来のシワヤハズ/ゾナロールの構造

図2:潰瘍性大腸炎の患者数
図2:潰瘍性大腸炎の患者数

 潰瘍性大腸炎とは、特にストレスが原因で炎症反応の暴走が起こり、その結果大腸に広範な潰瘍が起こる病気です。患者数は2012年現在14万人余りで、1970年代以降著しく増加傾向にあります(図2)。現状では「メザラジン」、「ステロイド」及び「抗TNF-α抗体」などの薬剤しか治療法がなく、これらの効果がない場合、大腸の切除や人工肛門での生活を余儀なくされるため、新たな薬剤治療法の開発が期待されています。本研究では、褐藻類シワヤハズに由来する化合物である「ゾナロール」が、潰瘍性大腸炎の原因と考えられる炎症反応の暴走を抑制する効果について検証を行いました。

成果

図3:ゾナロールのメカニズム
図3:ゾナロールのメカニズム

 マウスの潰瘍性大腸炎モデルを用いてゾナロールの潰瘍性大腸炎の抑制作用を検討したところ、ゾナロールの経口投与は、大腸における潰瘍を有意に抑制することを新たに発見しました。また、ゾナロールは試験管内での炎症反応も有意に抑制しました。これは、ゾナロールが転写因子Nrf2※4の活性化に作用し、炎症反応を抑制した結果、大腸の潰瘍の発生を抑制したことを示しています(図3)。

社会的学術的なポイント

 現在、褐藻類の産業利用は、ほんの一部にとどまっているのが現状です。本研究によって、褐藻類シワヤハズ由来の化合物が、潰瘍性大腸炎の予防治療や再発の防止などに応用できる可能性が示されました。今後は製薬会社や食品会社と連携しながら、医薬品や健康食品への応用、新たな治療法の開発などを目指します。

※1 褐藻類は、褐色をした海産の多細胞の藻類を中心とする生物群で、コンブやワカメはその代表例。シワヤハズ (Dictyopteris undulata Holmes) は、多くは日本、台湾などの北西太平洋に分布し、ゾナロールを産生する唯一の海藻である。

※2 テルペノイドとは、イソプレンを構成単位とする一群の天然物の総称で、緑色植物や藻類や菌類などが産生する。ゾナロールはシワヤハズが産生するテルペノイドのひとつで、図1のような構造をもつ。

※3 論文採択は2014年10月26日。論文名「Marine hydroquinone zonarol prevents inflammation and apoptosis in dextran sulfate sodium-induced mice ulcerative colitis」

※4 転写因子とは、DNAに特異的に結合する蛋白質の総称で、DNA上のプロモーターやエンハンサーといった転写を制御する領域に結合し、DNAの遺伝情報をRNAに転写する過程を促進、あるいは逆に抑制する。Nrf2は、酸化ストレスに対抗する酵素群を一括して制御する転写因子。

この件に関しての報道機関からのお問い合わせ先
※協力企業など個別の取材をご要望の際は、下記までご相談ください。

■東京工科大学 応用生物学部 教授 佐藤 拓己


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