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医療機器の操作や臨床現場でのコミュニケーションの訓練ができるVRシミュレーターを開発中です!

2017年12月8日掲出

医療保健学部 臨床工学科 田仲浩平 教授

田仲浩平 教授

 臨床工学技士が国家資格になる以前からこの分野で活躍されてきた田仲先生。最近では、AR(拡張現実)技術を使った医療従事者支援ツールの研究開発に取り組み、注目を集めています。今回は先生が中心となって進めておられる臨床工学科の戦略的教育プログラムについて伺いました。

■今年4月から始まった「医療VR技術を応用した臨床工学技士教育プログラム」について教えてください。

 このプログラムは、近年、普及しつつある3D-VR(ヴァーチャルリアリティ)システムを臨床工学科の教育に利用しようという試みになります。具体的には、心臓の手術時に使用する人工心肺装置の操作トレーニングができるシミュレーターをつくろうと、現在、取り組んでいるところです。
 臨床工学技士が操作する医療機器はたくさんありますが、中でも人工心肺装置は、学生が触れる機会は非常に限定されています。というのもこの機械自体が非常に高価で使用する消耗品にも費用がかかるため、どこの学校もそうですが、台数を揃えることが難しいのです。本学にも1台ありますが、それを90人ほどの学生でトレーニングに使っているというのが現状です。また、最近は衛生面や個人情報の問題から臨床実習でも手術現場に立ち入ることが難しくなってきています。その中でも特に心臓手術は、行っている国内の大学病院が少なく、なんとかそこへ実習に行けたとしても、学生の実習期間と手術のスケジュールとが合わなければ、数回程度しか経験できていない場合もあります。それほど人工心肺装置の臨床実習ができる機会は、限られているわけです。しかし、それでは学生は経験したいのにできないということに陥ってしまうため、大学内で少しでも経験を積んだりトレーニングできたりすればと、今回、VRでのシミュレーション開発に着手しました。

■今、開発はどの程度、進んでいるのですか?

医療VR

 どういうものになるのかが想像しやすいように、デモ版としてイメージ動画をCGでつくったところです。これを開発するソフトウェアのシナリオとし、今後はこれに沿ってソフトウェア開発に着手していきます。このCG動画では、実際の手術室で手術が行われている様子をリアルに再現していて、手前では臨床工学技士が人工心肺装置を操作しているところを再現しています。学生はヘッドマウントディスプレイを装着してこの映像を見ることで、まるで自分が映像の中の手術室にいるような没入感を感じながら、操作のトレーニングができるというシミュレーターをつくろうと考えています。
 また、具体的な内容としては、何かアクシデントを乗り越えるためのシナリオを設定しておいて、学生がシミュレーターの中でそのアクシデントをどう乗り越えるかといったことができるようにしようと思っています。単に装置の操作を学ぶだけでなく、トラブルやアクシデントに自分で考えて対処する形にすれば、学生のモチベーションや集中力が上がりますからね。語弊があるかもしれませんが、ちょっとゲーム感覚のようなところを持たせることで、学生もより真剣に取り組むのではないかと思っています。
 また、実際の現場では、臨床工学技士は単に人工心肺装置を操作するだけでなく、医師の指示を受けたり看護師や麻酔科医とやり取りしたりしながら操作します。ですから、このシミュレーターでは、手術室で医師や他の医療従事者とコミュニ―ションができるものにしたいと思っています。要はVRの中で医師がこちらに話しかけてきて、その音声に反応して、こちらが例えば「OK」と返事をすると、次の画面に進むという感じですね。あるいは何かアクシデントが起きて、医師たちが「どうすればいい?」となっているときに、こちらが判断して操作するという感じです。また、緊張感漂う現場で後ろを向くと看護師がいる、横には医師がいるという具合に、手術の環境全体をリアルに再現し、トレーニングできるようにしたいと考えています。

医療VR 操作
医療VR 操作
医療VR 操作画像
医療VR 画像1
医療VR 画像2

■今後はどのように展開していく予定ですか?

 今年度はCGによるイメージ動画をつくりましたが、次年度からはいよいよこの動画をシナリオとして、人工心肺装置用のCGシミュレーターのコンテンツをつくり始める予定です。制作では病院の協力を得て、現役で働く臨床工学技士から実際の現場で多いトラブルなどの意見をもらい、よりリアルなコンテンツにしていきます。
 また3年目以降は、完成させたシミュレーターを実際に学生の教育に取り入れて、どれだけ成果が出るかを検証します。また、学会などでも発表し、VRシミュレーションの啓もう活動をしつつ、制作に協力してもらえる企業を探すアピールもしていきます。
 それから将来的には、このシミュレーターを学生のトレーニング用としてだけでなく、人工心肺装置を操作する現任者の最初のトレーニングや教育に使えるものに仕上げたいと考えています。また、今後はこのVRを患者に対する処置のトレーニングにも利用しようと思っています。今、考えているのが、人工透析です。透析患者の立場をVRで疑似体験することで、透析時に針を刺される恐怖感を知るなど、患者の気持ちを学ぶ良い機会になるだろうと考えています。
 こういう患者目線の体験や患者とコミュニケーションを取るシミュレーションとして使用するVRは、臨床工学技士に限らず、看護師や理学療法士など幅広い医療従事者にも有用な教育ツールになると思います。ですから、いずれは医療保健学部全体で使えるようなものに発展させていきたいですね。それによって学生がどう操作し、どう選択したとかいう情報も集められますし、ICT教育に力を入れる本学ならではの特長が教育に今以上に色濃く打ち出せると思います。

■最後に受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

 これからの医療は、医療機器がないと成立しないと言われています。それだけ臨床工学技士の力が必要とされているわけです。一方で臨床工学の分野は、従来のようないわゆる医療機器に、コンピュータや人工知能などの新技術、つまりソフトウェアやプログラムがどんどん入ってくると予想されます。ですから、そういうものに柔軟に対応できる人材が求められるのです。
 また、臨床工学技士の仕事は、単に機械を操作するだけのオペレーターではありません。自分で最適な方法を考えたり判断したりし、そこで使われている医療テクノロジーを十分に理解している技術者として、時には医師にアドバイスすることも求められます。それができる医療機器のスペシャリストを育てるべく、本学ではコンピュータ、コミュニケーション、コラボレーションの“3C”を重視し、今回のVRのような高度な医療テクノロジーを体感できる新しい技術を導入した教育に力を入れています。

■医療保健学部 臨床工学科WEB:
http://www.teu.ac.jp/gakubu/medical/clinic/index.html

・次回は2月9日に配信予定です。