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がん診断に役立つ簡便かつ正確なゲノムのメチル化レベル測定方法を開発

2017年7月31日掲出

 東京工科大学(東京都八王子市片倉町、学長:軽部征夫)応用生物学部の吉田亘助教、軽部征夫教授らの研究グループは、がんのバイオマーカーであるゲノムのメチル化レベルを、簡便かつ正確に測定できる方法を開発しました。これは、同研究グループが開発したゲノム中のメチル化CpG(注1)の測定法と同一のプラットフォームで、非メチル化CpGを測定できる方法を新たに開発したもので、検体を試薬に混合するだけで簡便に測定が可能になります。
 本研究成果(注2)は、2017年7月28日に科学誌「Analytica Chimica Acta」オンライン版に掲載されました(注3)。

【背景】
DNAメチル化とは、CpG(シトシン・グアニン)配列中のシトシンがメチル化される反応であり、遺伝子発現制御において重要な役割を果たしています。がん細胞ではゲノム全体のメチル化レベルが低下することから、これらはがんのバイオマーカーとして期待されています。研究グループはこれまでに、メチル化CpGに結合するタンパク質とルシフェラーゼ(注4)の融合タンパク質を用い、試薬を混合するだけでゲノムのメチル化CpGを光学的に測定できる方法(注5)を開発しています。同手法では、メチル化レベルを決定する過程で測定値を校正する必要がありましたが、本研究は、この操作を簡略化するため、これと同一のプラットフォームで、非メチル化CpGを測定する方法の開発に取り組みました(図1)。

図1:非メチル化CpG測定法(左)とメチル化CpG測定法(右)

【成果】
これまでの研究で、同融合タンパク質がメチル化CpGに結合し、そこで発光すると、ゲノムDNAに結合させておいた色素が蛍光を発することを確認しています。そこで本研究では、非メチル化CpGに結合するタンパク質(MLL CXXC domain)とルシフェラーゼを融合させた人工タンパク質を開発することで、同様の原理でゲノムの非メチル化CpGを測定できると想定しました。実際にこの人工タンパク質を合成し、ゲノムDNAに加えた結果、ゲノムDNAの非メチル化CpG量に依存して、蛍光色素の蛍光強度が増加することが示されました。また、メチル化CpG測定法により得られた蛍光強度と、非メチル化CpG測定法により得られた蛍光強度は負に相関することを示しました(図2)。つまり、この2つの方法により得られた蛍光強度の比を計算することで、ゲノムDNAのメチル化レベルを簡便に定量できることを確認しました。

【社会的・学術的なポイント】
本手法により、測定値の校正操作が簡略化され、試薬を混合するだけでゲノムのメチル化レベルを測定することが可能になりました。今後、この蛍光色素の蛍光強度を簡便に測定できる小型機器を開発することで、いつでもどこでもがん診断ができることが期待されます。

図2:本研究で開発したゲノムのメチル化レベル簡易測定法の原理
メチル化CpG測定法により得られる蛍光強度と、非メチル化CpG測定法により得られる蛍光強度は負に相関することから、これらの比からゲノムのメチル化レベルを簡便に定量できる。

(※1)CpGとは、シトシン・グアニンの塩基配列で構成されるDNA(ジヌクレオチド)です。

(※2)本研究は、公益財団法人中谷医工計測技術振興財団からの助成を受けています。

(※3)論文名「A quantitative homogeneous assay for global DNA methylation levels using CpG-binding domain- and methyl-CpG-binding domain-fused luciferase」,
https://doi.org/10.1016/j.aca.2017.07.046

(※4)ルシフェラーゼとは、ルシフェリンとATP存在下で発光反応を触媒するタンパク質です。

(※5)米国の科学誌「Analytical Chemistry」2016年9月20日号に掲載済み。(論文名「Global DNA Methylation Detection System Using MBD-Fused Luciferase Based on Bioluminescence Resonance Energy Transfer Assay.」, Analytical Chemistry, 2016, 88 (18), pp 9264–9268, DOI: 10.1021/acs.analchem.6b02565

■東京工科大学応用生物学部 軽部征夫・吉田亘研究室(生命機能応用)
生体分子の優れた機能を利用し、疾患マーカーなどを検出する方法の開発や、ゲノムの解析、 新たな生体機能の応用研究を行っている。
[主な研究テーマ]
1.有機物分解微生物の探索
2.微生物を用いた電気化学測定法の構築
3.メチル化DNA検出法の開発
4.DNA四重鎖構造の機能解析
5.生物変換法の開発
6. バイオマスエネルギーの開発
http://www.teu.ac.jp/info/lab/project/bio/dep.html?id=9

【研究内容に関しての報道機関からのお問い合わせ先】
■東京工科大学 応用生物学部 助教 吉田亘
Tel 042-637-4517(研究室直通)
E-mail yoshidawtr(at)stf.teu.ac.jp
※atをアットマークに置き換えてください。