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インターネット広告は、まだ発展途上。学生の新鮮なアイデアが活かせる分野です!

2015年10月9日掲出

メディア学部 進藤美希 教授

インターネットに関わる新しいビジネスやマーケティングの研究に取り組んでいる進藤先生。今回は、特に力を入れているというインターネット広告の研究や研究室での取り組みについて伺いました。

■先生は、どのような研究に取り組まれているのですか?

 今、力を入れているテーマは、インターネットの広告に関する研究で、特にインタラクティブ広告という双方向の広告について色々と手がけています。具体的な研究紹介の前に、まずはインターネット広告を取り巻く背景についてお話ししましょう。実は昨年、インターネットの広告費が初めて1兆円を超えたんです。今まで広告の主役と言えばテレビで、インターネットは補助的な存在でしたが、市場の中で1兆円規模となると、かなり大きなインパクトがあると言えます。現状、テレビは約2兆円の市場規模ですが、将来的にはインターネット広告がテレビ広告を上回るのではないかとも言われているほどです。それだけインターネット広告は、今、とてもホットな領域なのです。

 また、インターネット広告の盛り上がりによって、広告のあり方も変化してきています。これまでの広告は、テレビや新聞、雑誌といったマス広告が主体だったため、広告主は大企業が中心でした。ところがインターネットでは、個人や中小企業も広告を出せるようになってきています。さらにインターネットを使うことで、これまでのテレビCMや新聞広告のように、一方的に視聴者や読者が見るだけの広告から、受け手の希望や欲しい情報を提供するという双方向性が高まってきています。例えば、インターネットなら、リンク先をクリックするだけで色々なサイトに行くことができたり、ユーザーの検索している言葉に関連したキーワードがブラウザに表示されたり、映画を検索していると映画の広告が出たりと、個人に応じた広告を出すことができますよね。

 また、それらを実現するための技術も非常に重要視されるようになっています。今、挙げた例のように、ユーザーがインターネットで調べたことのデータを蓄積して、その人にとって適切なものを広告として出すには、当然、技術が必要です。あるいはJRの大きな駅のホームにある、画面がタッチパネル式の自動販売機。あれは顔認証をしていて、人が正面に立ったとき、性別によってパネルに表示されるおすすめ商品が違っているんです。カメラで顔を認識して、顔のプロポーションの比率などを元に、男女や年代などが簡単にわかる仕組みになっています。それも顔認証技術なくしては、実現できないことですよね。つまり、お客様に対してより良いもの、適切なものを提供しようとすると、どうしても技術が大事になるというのが、最近の広告の傾向なのです。そして、それはまさに「ソーシャル・技術・コンテンツ」の3つを学びの軸としているメディア学部が担える領域だと思います。日本の大学で、技術と広告を結び付けている大学はほとんどありませんからね。

 前置きが長くなりましたが、そういう背景からインターネットの広告に関する研究に力を入れているわけです。また、この10月からはメディア学部をあげて、“インタラクティブ広告プロジェクト” という新しい時代の広告を意識した研究が始動することになっています。

■そのプロジェクトでは、どのようなことをするのですか?

 今、予定しているものが3つあって、ひとつは体験型広告です。先ほど顔認証の話をしましたが、何かにタッチして画面やものが変わるとか、パネルにタッチすると広告が動くといった、人が体験する広告をつくろうと考えています。

 もうひとつは、歩いている人が通り過ぎる瞬間を狙って、表示内容が変わる広告の開発を考えています。スマートフォンと連動させて、その人が持っているスマートフォンが通り過ぎる瞬間に、その人に適した広告表示に切り替えるというものです。今、街中にある広告は、ポスターのように貼ってしまえば終わりですが、パネルを使って適切なときに、適切な人に、適切なものを提案・表示できるものを実現したいと考えています。

 3つ目が、海外の大学との連携です。ヨーロッパの都市の大学と一緒に、何か共同研究できればと思っています。交流を通してヨーロッパの状況なども確認しながら、国際的な研究ができればと期待しているところです。アドテクノロジー(広告技術)の分野で発展しているのは、インターネットやマーケティングの発祥の地であるアメリカですが、ヨーロッパ各国もそれぞれにチャレンジが行われています。例えば、最近、ロンドンでブリティッシュ・エアウェイズの広告がすごく評判になりました。ちょうど渋谷のスクランブル交差点のような街中の高い場所に大きなパネルが設置されていて、あるとき、小さな女の子が街行く人に「上を見て!」というように空の上を指差す映像が流れるんです。その瞬間、そのパネルの上空をブリティッシュ・エアウェイズの飛行機が飛んでいるというものです。飛行機の信号をデジタルサイネージ(パネル)が受信することで、パネルに表示される内容が女の子に変わるので、街の人は、今、飛行機が上を飛んでいるのだと認識できます。これはユニークですし、工夫がなされていて面白いと思いますね。日本におけるデジタルサイネージは、まだテレビ画面があって広告が動くだけというものですから、工夫の余地は、まだまだあります。特に双方向性という視点からの具体的なアプローチはまだそれほどないので、そこはアイデアと技術を活かせるポイントだろうと思います。

 この3つのテーマを軸に、それぞれのテーマに参加したい学生を募って、取り組んでいく予定です。また、このプロジェクトにはメディア学部の多くの教員が参加しますし、本学の大学院生や卒業研究生、学外の専門家、海外の方も参加して、アイデアを出し合いながら何ができるか探るところから始めていこうと計画しています。そして、具体的な成果物をつくり、高校生や地域の方に紹介することはもちろん、学会での研究発表やシンポジウム、アイデアソンというアイデアを出し合う集会の開催なども考えています。

 このインターネット広告のプロジェクトは、現時点では実現されていないことにチャレンジする未来志向の取り組みですが、かといってすべてをゼロから開発する必要はなく、これまでの技術の組み合わせや応用でかなりのことが実現できるだろうと思います。インターネット広告はここ10年ほどで始まった、まだ完成されていない分野ですが、その分、工夫できることや活かせる技術が多々あります。若い学生たちの新鮮なアイデアを活かしやすい領域だと思うので、そこは期待しているところですね。

■では、研究室の学生が取り組んでいる研究についてもお聞かせください。

 研究室はインターネットビジネスという大きな括りで、インターネット時代におけるビジネスの創造やマーケティング、経営戦略などを扱っていますが、最近は私の興味も手伝って広告に関する卒業論文が増えています。例えば、去年の卒業研究では、スマートフォン上で広告表示をするときに、ユーザーにとって悪い印象を与えない表示とはどんなものか、具体的に大きさや動きなどを試しながら調べるというものがありました。調査方法としては、アンケート調査を行ったり、ユーザビリティテストといって簡単な試作品をいくつかつくり、実際に被験者に触れてもらって、どれなら悪い印象がないかということを意見してもらったりしました。例えば、You Tubeなどの動画を観ている途中で、映像広告が流れることがありますよね。それを何秒なら我慢できるかという耐久テストみたいなことも行いました。小規模なテストでは10名くらいの被験者のときもありますが、目標としては少なくとも20~30人の被験者を集められるように進めていますし、学内でアンケート調査を実施する場合は300人以上の方に答えてもらうようにしています。やはりきちんと数値で表すことは学術的にも意味が大きいですし、実験やアンケートからデータを出して、その結果から意見を言う科学的な態度を学生に身に付けてもらいたいですから。

 あとは、ソーシャルメディア上での広告に関する研究も行っています。メディア学部らしい発想ですが、キャラクターをつくって、ソーシャルメディア上でそのキャラクターに語らせるとき、どうすれば効果が出るのかということを研究しています。よくツイッターで、“くまモン”や“ふなっしー”といったキャラクターが、つぶやいていますよね。企業でもそういうものが活用されていて、ローソンの“あきこちゃん”やリクルートの“スーモ”といったキャラクターがツイッター上でつぶやいています。そういう広告は、どうすれば効果があるのかということについて研究しています。この研究からは色々と学びがあって、例えばソーシャルメディアのキャラクターの場合、広告というよりは友だち感覚で、今日は何の日かといったネタがあったり、イベントの話があったり、毎日つぶやけるように工夫されているようです。直接的な宣伝で成果や売上を狙うことより、親しみを重視している点などは、顧客に直接語りかけるインタラクティブな広告の一部だと言えますね。

■最後に今後の展望をお聞かせください。

 研究者としてこだわり続けてきているのは、オープンであること、オープンであるにはどうすれば良いのかということです。私が最初に手がけた研究テーマはオープンソースソフトウェアで、それを長く研究してきました。例えば、代表的なものにLinuxがありますが、あれはインターネットを通じて世界中の人がコミュニティ上で協力して、秘密なく共同開発を進めていくという特徴があります。ソースを公開して、ソフトウェア自体をみんなで発展させていこうというスタンスで、現在も続けられているわけです。そういうオープン性やコミュニティで長く開発していくということは、私自身、ずっと大事にしてきました。

そして、広告の世界でも、それと同じことが起こり得る可能性があるのではないかと思っています。これまでの広告は、広告代理店やテレビ局の中で、資金のある大企業を中心に進んできたわけですが、インターネットを使えば個人や中小企業、誰でもアイデア次第で面白いことを発信していけるようになります。それがオープンになるということですし、そういう自由でオープンな世界を広告に持ち込むことが大切ではないかと思っています。それこそが研究者として進むべき方向性だと感じていますし、そこを目指して何ができるかを考え、実行していくことが、私のこれからの大きなテーマです。

 また、教育者という立場から言えば、学生には技術よりもむしろ新しい分野を開拓していく姿勢を大学で身に付けてほしいと思っています。世の中の変化は非常に早く、今、大学で教えている技術的なことは、すぐに古くなります。5年後に同じ技術が通用する可能性は、ほぼないと思います。そういう将来に備えて、学生に今、何を教えられるかというと、新しい課題にチャレンジする方法と、勉強の仕方、何かを継続しながら進めて行く方法です。例えば、大学でインタラクティブ広告の研究に取り組んだならば、そこで学んだ広告技術ではなく、そのとき、どのように課題を解決したのかが大事になってきます。そこで身に付けたことは、広告以外の分野でもきっと活かすことができるはずです。

・次回は11月13日に配信予定です。