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微生物や生物の持つ力をうまく使って、環境や社会に役立てたい!

2012年11月9日掲出

応用生物学部 斉木 博 教授

応用生物学部 齋木 博 教授

“環境と生物”をキーワードに、微生物による環境浄化や抗原抗体反応によるセンシング、バイオマスを使ったクリーンエネルギーの創出といった研究に取り組んでいる斉木先生。前回の取材から3年が経った今、これまでに手がけてきた研究がどのような展開を迎えたのかお話しいただきました。

過去の掲載はこちらから→
http://www.teu.ac.jp/interesting/013695.html

■前回の取材では、微生物を使った環境の改善やバイオマス、抗原抗体反応を使った物質の検出といった研究をご紹介しましたが、その後、どのような進展がありましたか?

まずバイオマスでは、東京都八王子市と共同で取り組んでいた研究プロジェクトが一区切りを迎えました。八王子市から出るゴミの内、剪定枝を原料にしてクリーンなガソリンをつくり、最終的にはそれでゴミ収集車を走らせるという目標を掲げていたのですが、これは当初の目標通り、昨年6月に実現することができました。ただ、このバイオマスから生まれた新しい燃料は、ガソリンほどのオクタン価が出ないこともあって、ガソリンの代替にすることは難しくジーゼル燃料としての利用が期待されています。また、実際にこの新しい燃料を大量に作り、ゴミ収集車を走らせるには、法律や税金が関係してくるため、実用化のハードルは多方面に及んでいます。ですから現在は実用化を目指すことより、引き続きバイオマスに関する細かい部分の基礎研究を続けていく方向で進めています。また将来的には、このバイオマスの技術を活かして、バイオマスではありませんが高カロリーな廃プラスチックを原料にしたディーゼルオイルをつくってみるのも面白いのではないかと考えています。八王子市のような都市では、バイオマスの原料となるものより、廃プラスチックの方がゴミとしても集まりやすいと思うので、可能性はあると思います。
今、研究室で特に力を入れているのは、微生物を使った研究になります。前回、金属で呼吸する微生物を使って、土壌から有害な金属を還元し、無害化したり分解したりすることに取り組んでいるとお話ししました。今度は、その金属で呼吸する微生物の力を、いろいろな金属の回収に応用できないかと取り組んでいます。ここ数年、レアアースやレアメタルといった希少な金属が話題になっていますよね。携帯電話などの中には、そういう様々な希少金属が使用されているので、例えば廃棄された携帯電話の中からそれらを酸などで溶かして取り出し、再利用するということが行われています。その溶かした後に、微生物を使って回収することができるのではないかと研究しているのです。それから、抗原抗体反応の研究も、この微生物を利用する研究と同じくらい力を入れています。

Sapidyne社のKinExA(キネクサ)

■抗原抗体反応の研究は、どのような展開になっているのでしょうか?

前回の取材で詳しく触れなかったのですが、抗原抗体反応の研究には、Sapidyne社のKinExA(キネクサ)という機械を使って行っています。KinExAは、例えばタンパク質の結合する力の非常に強いもの、逆に弱いものといった“解離定数”と呼ばれるものを測定することができる機械で、恐らく日本では10台くらいしか扱われていないものです。研究室にはこの機械が4台あるので、それらを使って環境ホルモンや食物アレルギーの分析に取り組んでいます。食物アレルギーでは、例えば、卵や小麦、牛乳の中に含まれるアレルギー物質を測定・分析しています。研究の目的としては、例えば、あるお菓子の中に卵のアレルギー物質がどのくらい入っているかということを分析することができるので、それを将来的には食品の表示などに活かせないかと考えています。というのも、アレルギーを持っている人は、アレルギー物質にかなり鋭敏に反応しますよね。例えば、蕎麦アレルギーの人は、蕎麦と同じ工場で製造されたうどんにもアレルギー反応が出てしまうことがあると言われます。ですから、わずかなアレルギー物質も見つけられるほどの、非常に感度の良い方法で検出できなければならないのです。そういう点において、この研究室で取り組んでいる方法は、かなり良いラインをいっていると言えます。KinExAでは、アレルギー物質がわずかに含まれているだけでも反応しますからね。

■では、新たに取り組み始めた研究はありますか?

同じくKinExAを使った研究になりますが、今、エンテロトキシンという毒素の分析に大学院生が取り組んでいるところです。エンテロトキシンは、微生物がつくる毒素のことで、食中毒の原因にもなります。現状、この毒素を分析できる高感度の方法がないのですが、KinExAを使えば、それが可能になります。ただ、エンテロトキシンはアメリカでしか販売されておらず、危険な物質のため輸出禁止となっていて、手に入れることができません。そこでこの研究室では、微生物にその毒を生成させるところから手がけているんです。その分、手間がかかって大変な実験になっていますが、学生が頑張ってくれています。
また、現在4年生で、大学院に進学予定の学生が取り組んでいる研究に、DNAを扱ったものがあります。DNAは、4つの塩基ATGCから成っていて、それぞれAとT、GとCが対になっています。DNA関連の研究は、これまでに網羅されてきた感があるのですが、実はこの対になっている部分の水溶液中での結合の強さは、まだ測られていないということがわかりました。そこで実際に研究室で測ってみようと、今、KinExAを使って取り組んでいます。この研究が一体、何かの役に立つのかと言われると、答えに窮しますが、生命の起源に迫りたいという私の研究者としての大きな夢には近いテーマなので、手がけています。

■最後に、今後の展望をお聞かせください。

この研究室が環境と生物をテーマにしていることもあって、学生たちは何らか人や社会の役に立つ研究をしたいと考えている人が多いです。ですから今後もそういう視点で、今、取り組んでいる研究を進めていきたいと思っています。
また、研究室に所属した学生を見ていると、研究を通して成長することが多いようです。というのも研究は、そう簡単にうまくいくものではないからです。うまくいかない時は、先輩を含めて学生同士で相談しながら取り組んでいます。この研究室には、先輩と後輩の縦のつながりが強くあるんです。そういう研究環境の中で、ひとつずつ困難を克服したり解決したりすることは、社会に出てからも役立つ経験だと思います。会社に勤めてからも、仕事をする上で様々なことが起きると思いますが、その練習のような面が研究室にはあるんですよね。だからこそ研究室での経験が、学生を成長させるのです。そういう学生の成長が感じられる、環境の良い研究室を続けていくことも、重要なことだと思っています。

■環境バイオ(斉木博)研究室
http://www.teu.ac.jp/info/lab/project/bio_dep/86.html

■応用生物学部 斉木 博 教授
http://www.teu.ac.jp/info/lab/teacher/bio_dep/139.html

■応用生物学部BLOG
http://blog.bs.teu.ac.jp/

・次回は12月14日に配信予定です。