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なにげない日常からアイデアを引き出し、より豊かな感性をデザインの学びを通して身につける

2014年10月10日掲出

デザイン学部 深澤 健作 講師

デザイン学部 深澤 健作 講師

デザイン学部では、今年度から新しいカリキュラムがスタートしています。それに伴い、同学部の特長的な学びのひとつである、1、2年生対象の必修科目「感性演習」の内容も一新されました。今回はその「感性演習」の中で「描く」というテーマを担当されている深澤先生に、その具体的な内容や狙いについて伺いました。

過去の掲載はこちら→ 
http://www.teu.ac.jp/topics/2012.html?id=134

着彩研究(工業製品)
着彩研究(工業製品)

■まずは「感性演習」という授業の概要を教えてください。

 「感性演習」というのは、デザイン学部の学びの中でも特長的な基礎教育の1つで、「描く」「つくる」「関係づける」「伝える」という4つのテーマから成る授業です。この「感性演習」という授業が、なぜあるのかというところから話しますと、ものをつくる人・提案する人にとってアイデアを引き出す事は当然の行為ですが、その為には感性豊かな視点が非常に重要な要素といえます。
 では、感性とは何かといいますと、直感的で感覚的な意識から思わぬ発見や柔軟な発想、あるいは細密に検証できる力のことだと考えています。そのためのトレーニングが「感性演習」です。

 入学時の学生は、デザインに対し強い関心を持っている人が多いです。学生がこれまでに経験してきた、ものをつくるという経験値は、けして多いとは言えません。そこで入学して間もない段階で、まずは、その後の学びのベースとなる感性を伸ばすことから始めようという目的で、「感性演習」が用意されています。

■今年度から始まった「感性演習」は、どういうところが新しくなったのでしょうか?

 これまでの「感性演習」が、より段階的に学習しやすく授業を再編成され、造形の基礎学習にあたる「描く」と「つくる」の2テーマを1年次に取り組み、2年次では自分のイメージ表現をより拡大するトレーニングやアイデアを相手に伝達するプレゼンテーション能力の強化といった、少し応用的なデザインの基礎を学ぶカリキュラムになっています。

スケッチ研究(工業製品)
スケッチ研究(工業製品)

■先生が担当されている「感性演習」の「描く」では、どのようなことをするのですか?

 これまで同様、鉛筆の削り方から教えるという点は変わりませんが、「描くⅠ」の初期段階の課題としては、単純な工業製品をさまざまな角度から見た図のスケッチや、その際、長さや角度といった情報も拾って、記録するという作業を行います。また、複雑な形を単純な形態に変換・色面化させる絵の基礎学習もおこなっています。こうしたトレーニングは感性を鍛える内容に駒を進めて行くための事前学習という位置づけとなります。これらの基礎的な練習を繰り返した後、徐々に視点を細かくし、小さなことも見逃さずに発見する力へのトレーニングへと繋げていきます。つまり1年次の「感性演習」の「描くⅠ」から「描くⅡ」に進むにつれて、取り組む内容も段階的に応用へと発展していくのです。

 ですから「描くⅡ」に入ると、今度は植物を細かく観察して検証したり、人にその植物の特徴を具体的に、明確に伝えるための図を描いたりという課題に取り組みます。また、音楽を聴いて、そこから受けたインスピレーションで色や形を想像してビジュアル化するとか、“冷たい”という言葉のイメージからどういう形を想像するか、どんな色を想像するかといった、イメージをもとにドローイングする課題にも取り組んでもらいます。

目的を伝達する平面表現(植物図)
目的を伝達する平面表現(植物図)

 この「感性演習」の「描く」で大事なことは、単にモチーフを観察して、紙という平面上に、それを写し取る作業を学ぶことではないという点です。平面で表現するのであったとしても、構造を理解し、奥行きやボリューム、三次元的な解釈を踏まえたうえで、図として記録しなければなりませんし、それには見る側の意識が問われることになります。何をどう見るか、どういうところをポイントとするか、目的によって視点も変わりますからね。そんなふうに平面に描くとしても、立体的に、多角的に捉える視点を身につけることが、この「描く」という授業のポイントになってきます。そのため、まったく絵を描いたことのない人はもちろん、入学前から基本的なデッサンを学んでいて、ある程度、描くことに慣れている学生でも、ゼロから学ぶことができるのです。そういう意味では、この「描く」という授業は、絵の巧さや画力を上げるための授業というより、構造を理解し、絵を通したコミュニケーション能力、検証能力、発見力、感受性を身につけるための授業だと言えます。そして、それは同じ時期に並行して学ぶ「感性演習」の「つくる」という授業にも大きく関係しています。

 「つくる」は、立体造形の授業です。一見、平面を扱う「描く」と、立体を扱う「つくる」とは、かけ離れているように思えるかもしれませんが、本来、そこは繋げて考えなければなりません。そのため、時には「つくる」の授業で、複雑な展開模型をつくって、それを「描く」の授業でスケッチするというように、連携して取り組む課題もあります。模型をつくった本人が一番、形を理解していますから、そのうえで平面に描いてみるわけです。そういうふうに基礎造形力を身につけてから、2年次の「感性演習」である「伝える」「関係づける」に入っていくという流れになっています。

■「描く」の授業を進めるうえで、心がけていることはありますか?

 この授業では、トレーニングとして取り組む課題に対しては優劣を決めないというか、技術の競争をさせないようにし、学生自身が、自発的に個人のレベルを上げてゆけるよう授業を進めています。

 デザインの仕事に限らず、社会に出ると基本はグループワークで、みんなで一つの目的に向かって仕事をしていきますよね。その中で何かアイデアやイメージを伝えなければならないとき、言葉や文章で説明が済むこともあれば、図が必要となることもあります。それはどんな職場のどんなシーンでもあることですから、アイデアやイメージを図にする技術はあるに越したことがないのです。「描く」という授業は、そういう人に伝えるために、イメージや情報を図にする力を身につける授業でもあるのです。

■「感性演習」は、2年次から始まる「スキル演習」や3年次から始まる「専門演習」に、どう繋がっていくのでしょうか?

 「感性演習」は、「スキル演習」やその先の専門科目を意識して設計された、基礎学習です。その「感性演習」を経て、造形やデザインの基礎が整ったら、次のステップとして必要になるのが、グラフィックやウェブ、3D、映像などのコンピュータスキルの習得です。ですから2年生から始まる「スキル演習」では、さまざまな分野のデジタル技術を学んでいくことになります。たとえば「描く」の授業では、絵具や鉛筆を使ったり、紙を切ったり、くっつけたりというアナログな作業に取り組みますが、「スキル演習」では、それをコンピュータで3D化するなど、自分がイメージしているものの実現性をさらに高めていく技術を学んでいきます。

 また、3年次の「視覚デザインコース」や「工業デザインコース」といったコース内における学びにも、「感性演習」が繋がっています。たとえば、「描く」の中で取り組むスケッチ・デッサン力、構成力、描画技術は「視覚デザインコース」に強く関係する力ですし、同じく「描く」で身につけた、立体的にものを捉えてデッサンする力、構造理解の分析力は「工業デザインコース」で活きてくるでしょう。そういう先々の繋がりを意識して、「描く」での課題を決めていますし、他の先生方が担当される「つくる」「関係づける」「伝える」も同様に先を見据えた教育内容になっています。

■学生には、どういう人に育ってほしいとお考えですか?

 デザイン学部では、チーム力、集中力、提案力、実現力、取材力、発想力の6つの力が身につくと謳っています。大きく分ければ、いわゆるコミュニケーション能力と企画力ですね。そういう力をデザインという教養を通して身につけることで、生活を豊かに感じ、実際にそれを豊かにできる人物を育てたいと思っています。

 デザイン学部というと、デザイナー育成という強い印象もあるかもしれませんが、デザイン分野だけに限らず、社会で幅広く活躍できるデザイン思考を持った学生育てています。デザインに溢れる、楽しくて素敵な街や社会を築いていってほしいとおもいます。

■デザイン学部WEB
http://www.teu.ac.jp/gakubu/design/

・次回は11月14日に配信予定です。