大山学長のホッとブレイク

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学長メッセージ第4回「実学主義教育とクリティカル・シンキングの両輪で、不測の事態を乗り切る力を養おう」

2020年9月25日掲出

  こんにちは、学長の大山です。今回は東京工科大学の教育について取り上げましょう。 以前、私の経歴についてお話しした際、大学院卒業後は企業で働き、その後、大学教員になったとお伝えしました。私と同様に、本学の教員は企業出身者が約半数を占めています。つまり実際の仕事の現場をよく知っている先生が多いのです。本学は実学主義教育を掲げている大学ですから、そういう先生とアカデミックな研究に邁進してきた先生の両方が存分に力を発揮できる環境だということが、特徴のひとつに挙げられるでしょう。

  ところで、実学主義教育とはどういうものだと思いますか? 卒業したらすぐ社会の役に立つ、即戦力になる人を育てる教育だと思われることが多いのですが、そうではありません。これまでの教育は、1年生から基礎を積み上げていき、3年生で応用を学び始めて面白くなってきた頃に実社会の現場が出てくる積み上げ式でした。一方、実学主義教育は、割と早い段階で実際の現場の技術に触れてもらいます。例えば、私が専門とするロボットであれば、今、現場で活躍するロボットにはどんなものがあり、その使い方はどういうものかということを最初に学ぶのです。ただ、そういうロボットを思い通りに動かしたいと思っても、当然、そう簡単にはいきません。思い通りに動かすには、ロボットの動きのベースとなる物理学や電気工学、プログラムなどを勉強しないといけないからです。そういう形で早めに実際の現場のものを題材にすることで、現場のテクニックも覚えながら基礎や原理原則を学ぶ意味を実感してもらい、それらを身に付けたうえで新しいものの創造を目指すということが実学主義教育だと私は捉えています。

  また、本学の学生にぜひ身に付けてほしい力が、クリティカル・シンキングです。日本語に直訳すると「批判的に考える」という意味になりますが、非難したり揚げ足を取ったりすることではありません。言われたことをまず否定しないで受け入れたあと、「本当にそうなの?」と自分で考えることです。高校では大学受験があるため、どうしても答えを覚えて早く正解を出すトレーニングを勉強としていますよね。でも大学での学びは、それだけではもったいない。
  大学の先生が教えることは、ほぼ正しいです。けれども正しさには条件があります。例えばモノを落としたら、下に落ちますよね。それはニュートンの運動方程式で導けるので正しいです。でも、もしそこの空気の濃度が濃いとか水中だったとか条件が違えば、その式はどうなるのか? 別の角度から見たらどうなのか? と考えることがクリティカル・シンキングだと思います。つまり、多角的に考えることが大事だということです。
  そんなふうに大学では学ぶスタイルとして、「本当にそうか?」と疑う癖、違う角度から見る癖を付けてほしいと思っています。今回の新型コロナウイルスの流行もそうですが、今の時代、思わぬことが起きますから、予測できない事態に対応する力を実学主義教育とクリティカル・シンキングの両輪で身に付けてほしいのです。 東京工科大学では今後もそういう教育を実施していき、学生の皆さんにここを選んでよかったと思ってもらえる大学にしたいと思っています。