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人と人とのコミュニケーションや人とロボットとのコミュニケーションに関する研究に挑戦しています!

2020年5月15日掲出

コンピュータサイエンス学部 森本 千佳子 准教授

森本 千佳子 准教授

 大学時代は文学部で社会学を学んでいたという森本先生。手に職をとIT企業に就職後は、企業向けの情報システムの開発に携わり、人材教育や組織開発、マネジメントを経験します。それを機にチームのコミュニケーションとプロジェクトの成功の関係に興味を持ち、研究の道を歩み始めたそうです。今回は、先生のご研究や研究室の学生が取り組む卒業研究などについてお話しいただきました。

■先生のご研究についてお聞かせください。

 「プロジェクトマネジメント研究室」という名前で、情報システムの開発プロジェクトに関する研究に取り組んでいます。「プロジェクトマネジメント」とは何かというと、例えば文化祭をイメージしてもらうと分かりやすいと思います。文化祭は開催日が決まっていて、それに向けてみんなで協力しながら出し物を考えたり、製作したりしますよね。実はそれが一つのプロジェクトなのです。プロジェクトとは期限が決まっていて、どんな内容にしたいかというみんなの思いがゴールとしてあります。そのゴールに向けてどういう段取りや役割分担で進めていくかを考え、実行していくのです。その過程には、みなさんも経験があると思いますが、思っていた通りに進まない、誰かがさぼっていて自分ばかり頑張っているという不満が出るなど、さまざまな課題が出てきます。そういう課題をクリアしながら、どうゴールに向けてみんなの力を出し切っていくかを考えて実行していくことがプロジェクトマネジメントです。
 私はもともと企業向けの情報システムの開発の仕事をしていたことから、そうしたITプロジェクトにおいて、プロジェクトを進めるチームがどう育つのかに着目し、チームがどうあれば、どのような成果が出せるのかということを研究しています。詳しく話すとチームの研究には2つの側面があり、ひとつが生産性です。これについては企業と協働で、チームのコミュニケーションのルールや関係性がソフトウェアの生産性や品質にどう影響するのかということを調べました。具体的には「チームにどんなルールがあるか?」「それをあなたはどのくらい守っているか?」という調査を行ったのです。
 例えば、ひとつのお題を順に次の人に伝えていく伝言ゲームがありますよね。次の人に伝えるときの説明が、もしごく簡単な言葉でしかなされなければ、次の人に間違って伝わる可能性は高くなります。すると5人、6人と伝言を経るうちに、最後は最初と全く違う答えになることがあります。逆にお題の説明を丁寧にして、伝わったかどうかをお互いに確認し合いながら進めると、最後の人にはかなり最初のお題に近い内容が伝わることになります。これは目で見て確認できないソフトウェア開発にも言えることで、コミュニケーションをどうとるか、お作法やルール、説明の正確さなどが結局、一番大事になってくるのです。つまり最初につくりたいと思ったものと、出来上がったものが全然違うということにならないようにするには、コミュニケーションの質と量が大きく影響しているのです。
 2つ目の側面には、気持ちの良い関係性かどうかが挙げられます。これを考えるときによく用いられるのが、MEH(メー)モデルです。人が生まれつき持っているもの、性質・体質・遺伝的なものが1層目。そのうえに、生きていくうちに蓄積されていくものとして、知識・経験・スキルという2層目があります。その次にある3層が外から見えるもの、表面に出ているものです。その人の行動や発言、成果物といったものが当てはまります。他者はこの3層を見て「この人はこういう人だ」と判断するわけです。例えば、企業で上司が新入社員に議事録をまとめる仕事を教えるとき、まとめるのが下手だ、誤字が多い、わかりやすい文章になっていないと指摘したとすると、それは成果物に対する指摘、つまり3層を指摘しているわけです。そこを注意されると、人は「誤字に気をつけよう」「事前チェックをしよう」などと思います。ところが上司の指摘が行き過ぎて、「おまえは本当にバカだな」「知識不足だ」といった2層や1層を否定されると、人はすごく傷つきます。でも特に教育熱心な人ほど、知識をつけてやろう、教えてあげようという思いから、つい2層を否定したり干渉したりしがちで、結果、それが人間関係の軋轢や反発につながるのです。
逆に人をほめるときは、3層だけでなく2層や1層をほめると、相手はとても喜びます。例えば「あなたの議事録、すごく読みやすいね」だけでなく「あなたがこれをするために、日頃から頑張っていたのを知っているよ」「すごく表現力がついたね」と言われると、どうでしょう? うれしいですよね。そういうところに注目して、チームにおけるコミュニケーションのスタイルなどを調べました。具体的には「これまで、あなたが仕事をしたくないと思った上司はどんな上司か」や「チームでどういう取り組みをすると、やる気が上がるか」といったことを調査したのです。その結果、自分の存在を認めてもらえる、信頼できる関係があると仕事をしやすいと思うというデータが出ました。今はこの結果を受けて、そういう関係づくりをどう実現するかについて考えているところです。

■では研究室に所属する学生はどんな研究をしているのですか?

 この研究室の特徴かもしれませんが、学生はそれぞれ全く違う卒業研究に取り組んでいます。例えば、今、スマートフォンを使った決済(スマホ決済)の利用が増えてきていますが、その活用に文系の学生と情報系の学生とで違いがあるのかを比較調査した学生がいます。学生の仮説では、情報系の人はリスクや仕組みに対する基礎知識があり安心して使えるので、利用率は高いだろうというものでした。実際の調査では、統計的に優位な差は出ませんでしたが、数で言えばやはり情報系の学生の方が多くスマホ決済を利用しているという結果が出ています。また、面白かったのは、ポイントキャンペーンの方が基礎知識の有無よりも有効だという結果が出たことです。結局、学生はリスクや仕組みはよく分からなくても、お得な方を使うということが明らかになりました。
 それからロボットを使った研究をした学生もいます。研究室紹介を人がするのとロボットがするのとでは、どちらの方が聞き手の反応が良いかという研究です。オープンキャンパスで実験したところ、ロボットが話す方が興味をひくようで、人がたくさん集まりました。それにロボットが話すと、「何を言おうとしているのか」と人が興味を持って聞こうとする効果があることも分かりました。
 このほか、コンピュータサイエンス(以下CS)学部らしいテーマでは、画像識別の精度を上げる研究をした学生がいます。また、プログラミングが苦手な学生は、それを逆手にとって、どうしたら楽しんでプログラミングの勉強ができるかという研究をしています。このように基本的には、学生の興味あることを卒研テーマにしてもらっています。というのも卒研はひとつのプロジェクトと捉えられるからです。卒研というプロジェクトに一人一人が取り組むということで、期日に向けて計画を立てて実行し、毎週のゼミで進捗報告をして議論する形で進めています。
 

■学生にはどんなことを身に付けてほしいですか?

 私自身を振り返ってみると、人生は何事も出会いだなと思います。「Planned happenstance theory」(計画された偶発性理論)と言われるように、いつも自分が予想しなかった仕事や人との出会いがあり、そこからさらに知らない世界へと広がってきました。ですから学生にも頭でっかちになって動けなくなるくらいなら、まずは行動してみよう、一歩踏み出そうと伝えています。もし失敗しても失敗したという経験値がひとつ上がるのですから、何もしないよりプラスです。
 

■先生の今後の展望をお聞かせください。

 今までは人と人のコミュニケーションを研究してきましたが、今後は人とロボットやAIとのコミュニケーションについても考えたいと思っています。そこで今年度からは、Sphero(スフィロ)という市販のロボットボールを使って、その動きを見た人がどういう反応するかという研究を本格的に始めようと思っています。この研究の発端は、過去に介護現場で活躍する食事介助ロボットの調査をしたことにあります。ヨーロッパでは、この食事介助ロボットはあくまでも食器や道具の扱いでした。ところが日本人のあるおばあさんにそのロボットを使ってもらったところ、「がんばって」と応援したり、食事がうまく運べたら「よくできたね」「ありがとう」と話しかけたりするのです。つまりロボットを擬人化しているわけです。そういう日本人と欧米人とのロボットに対する感情や態度の違いに面白さを感じたので、今年は動くロボットボールを使って、人の態度の変化について調べたいと思っています。
 

学生が開発したアプリ

■受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

 CS学部には、企業出身の先生も研究ひとすじの先生もどちらも大勢います。そういう意味では、本当に多様な人が集まっている面白い学部です。研究もコンピュータサイエンスだけでなく、私のようにマネジメントを研究する人もいれば、ビジネスを研究する先生もいます。ですから分野を絞って深く追究することもできるし、色んなことに興味があるという人にも対応できる環境があります。様々な背景を持つ先生と話すなかで、自分がしたいことを見つけられるところが、CS学部の魅力のひとつなのです。
また、高校3年生といえば、受験勉強で色々な科目に取り組まなければならない時期です。でもそれがきっかけで興味を持ったり、もっと知りたいと思うものと出合ったりすることも多々あります。ですから受験勉強も楽しんで取り組んでほしいですね。その学びは今だけでなく、将来にもつながっています。一つのクエスト、レベル上げだと思って、楽しんでください。

コンピュータサイエンス学部:
https://www.teu.ac.jp/gakubu/cs/index.html