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2021年メディア学部長メッセージ

2021年1月8日掲出

「受験勉強がAI時代の力になる」柿本正憲 教授

メディア学部 柿本正憲 教授

 受験勉強ではたくさんの知識を詰め込んだり、練習問題を解いたりします。つい目的を見失いがちになります。そもそも学力を上げることに精いっぱいで、その勉強の目的まで考える余裕もないかもしれません。一方で、こんなことをやって本当に将来役に立つのか、何となく疑問に思いながら勉強している受験生も多いことでしょう。

 私自身も受験勉強を経て大学で学び、就職後も勉強が絶えず必要なIT業界で働きました。その経験から断言できます。受験勉強はその後の長い学びの基礎力になります。

 これからますます創造性が重要な時代になります。知的な仕事であっても解き方が与えられた問題や正解がわかっている問題は、AI(人工知能)が人間に代わって解決します。人間に求められる能力は、解き方を考え出す問題解決力、あるいは問題そのものを整理し浮き彫りにする問題発見力です。それらの力に不可欠なのが創造性、つまり新しいアイディアを考え出す力です。

 受験問題は答えが決まっているから創造性とは関係ない、というのは誤解です。確かに入試問題は創造性自体をテストするものではありません。だけど考えてみてください。新しいアイディアの源泉はどこにあるのでしょう。それはその人が持つ膨大な知識です。

 どんな新しいアイディアも、絶対に例外なく、既存の知識や概念の組み合わせです。創造性の高い人はそのような新しい組み合わせを見出すのが得意な人、ということになります。しかし、元になる知識や概念が乏しければ組み合わせようがありません。詳しくはジェームス・W・ヤングというカリスマ広告クリエーターの著書「アイデアのつくり方」(発行:CCCメディアハウス)に紹介されています。1時間ぐらいで読める本なので受験生にもお勧めです。私も繰り返し読んでいます。

 大学に入るために必要だから仕方なく受験勉強をやっている、と思うとつらくなりますが、いつか誰も考え付かないアイディアを産みだすためのネタを仕込んでいる、と考えれば少しはわくわくしてくるでしょう。例えばいくつもの解き方がある数学は発想力を高めるのに役立ちます。

 受験勉強の知識が直接ネタにならなくても、アイディアの元になる高度な概念や専門知識を身につけるには、受験で鍛えた思考力や基礎知識が必要です。そして、それらの高度な概念や専門知識を身につける場が大学です。じゃあ新しい組み合わせを見出す力はというと、それを鍛えるのも大学です。

 大学1、2年ぐらいまでは受験の延長のような勉強も多いですが、専門分野の基礎知識も学びます。2年の後半や3年生になると専門性も高くなり、4年生では卒業研究で新しいアイディアを考える経験をします。知識だけでなく、1年生のうちから演習の授業を通じて知識を問題解決に結びつける訓練を行います。4年生の卒業研究は問題発見の段階から取り組みます。

 東京工科大学メディア学部で具体的に何を学ぶか、詳しくは大学案内やWebの紹介ページや「メディア学部ブログ」で読んでもらうとして、ここでは一つだけ強調しておきます。それは、AIによって置き換えられる能力ではなく、AIを使う側、AIに仕事をさせる側の素養を身につけて卒業できる、ということです。

 メディア学部は文理芸術融合で、カバーする専門分野は幅広いですが、共通する点はICT(情報通信技術)を駆使する能力がつくことです。講義や演習の授業では多種多様な良質のソフトウェアを道具として使い問題解決に取り組みます。AIも単なるソフトウェアであり道具です。ICT活用能力はAI活用能力に直結します。

 メディア学部は各自の専門分野での問題解決力をつけるとともに、ICTを駆使する勘所が自然と身につく学部だということをぜひ憶えておいてください。