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有機酸が活性酸素からミトコンドリアを保護する仕組みを解明 アンチエイジング研究への応用に期待-応用生物学部

2018年11月13日掲出

佐藤拓己教授

 東京工科大学(東京都八王子市片倉町、学長:軽部征夫)応用生物学部の佐藤拓己教授らの研究チーム(注1)は、生体内に存在する一部の有機酸(注2)が、老化の原因となる活性酸素から細胞内のミトコンドリア(注3)を保護するメカニズムについて、新たな知見を発見しました。アンチエイジングの新たな手がかりとなることが期待されます。この研究成果は、米国の薬理学専門誌「Reactive Oxygen Species (ROS)」2018年11月2日発売号に掲載されました(注4)。


【背景】
 細胞内のエネルギー代謝に関与する有機酸は、エネルギー基質となるほか多くの生理機能が明らかになりつつあります。一部の有機酸は、線虫(注5)の実験などにより寿命を延長する効果が報告されており、アンチエイジング分野への応用が期待されています。また、有機酸はミトコンドリアで産生され、ミトコンドリア自身を保護する作用が注目されていますが、その詳しいメカニズムは明らかになっていません。(図1)

図1:ミトコンドリアを保護する有機酸
図1:ミトコンドリアを保護する有機酸


【目的】
 ミトコンドリアはエネルギー代謝の中心であるとともに、活性酸素の主な発生源です。特に電子伝達鎖から発生するスーパーオキシド(O-)の蓄積は、細胞の老化の中心的な原因とされています。本研究では、このスーパーオキシドの毒性に対する有機酸の耐性作用について検証しました。

【成果】
 キサンチン(XA)とキサンチンオキシダーゼ(XO)を用いてスーパーオキシドを発生させ、これが細胞内の酵素スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)によって変換される過酸化水素(HO)(注6)を、蛍光色素で定量し、その蓄積を観察しました。この結果、ミトコンドリアが産生する主な有機酸のうち、ピルビン酸、オキサロ酢酸、α-ケトグルタル酸の3種は、HO量の増加を有意に抑制した(図2)一方、他の6種(乳酸、クエン酸、イソクエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸)にはこの作用はありませんでした。また同3種は細胞死を有意に抑制した(図3)一方、他の6種は全く抑制しませんでした。
 これらから、1)有機酸の中でスーパーオキシドによる細胞死を抑制するのは3種のみである  2)この作用はこれらの有機酸がHOを消去するためであることが明らかとなりました(図4)。これは、同3種のみが有する「α-ケト酸」と呼ばれる化学構造が、HOと直接に化学反応した結果であると推察されます。つまり、ミトコンドリアは活性酸素を発生させるとともに、これらを消去する物質群を生産していると考えられます。

図2:3種類の有機酸によるH2O2産生の抑制
図2:3種類の有機酸によるH2O2産生の抑制

図3:3種類の有機酸による細胞死の抑制
図3:3種類の有機酸による細胞死の抑制
図4:ミトコンドリアが産生する主な有機酸
図4:ミトコンドリアが産生する主な有機酸


【社会的・学術的なポイント】
 本研究により、線虫などで顕著に寿命を延長させる効果が報告されている3種類の有機酸について、そのミトコンドリアを保護するメカニズムが明らかになりました。有機酸は果物などに多く含まれることが知られていますが、食品などを通じて直接摂取することでアンチエイジングにつながる可能性もあり、今後の研究が期待されます。

  • (注1)研究メンバー:周鴻祐、高橋麻理恵、穂園碧衣、梅原竜代、海保竜之介、野宮崇史、二宮万致、上島彩 (いずれも応用生物学部4年生在学中)
  • (注2)水に溶けやすく、溶けると酸性を示す炭素数3から6の化合物である。多くはエネルギー代謝に関与する。
  • (注3)特に細胞のエネルギー代謝に関与する大きさ約1ミクロンの細胞内小器官。20億年前に細胞内に共生を始めたことが起源とされ、細胞の誕生・成長・老化・死に決定的な役割をもつ。
  • (注4)論文名「Protective Effects of Organic acids against Xanthine/Xanthine Oxidase-induced Cell Death by Reducing the Intracellular Level of Hydrogen Peroxide」
  • (注5)寿命の定量的な解析に使われる約1㎜の小動物であり、寿命の調節の分子生物学的な解析に用いられる。
  • (注6)活性酸素の一種であり、多くの系で細胞死を起こす実体であることが知られている。

佐藤拓教授研究チーム

■東京工科大学応用生物学部 アンチエイジングフード(佐藤拓己)研究室
食を通じて体の内側からアンチエイジングを目指す研究を行っています。アンチエイジングフード研究室は、寿命を延長させる作用を持つ食品に含まれる物質を探索しています。具体的には、細胞内の有機酸持つアンチエイジング効果に注目しています。また基礎研究ではビタミンCのアンチエイジング効果にも焦点を当てています。
[主な研究テーマ]
1.有機酸の酸化ストレスに対する耐性の研究
2.ビタミンCの抗ガン作用の解析
3.ローズマリー由来のカルノシン酸の抗認知症作用の研究 https://www.teu.ac.jp/info/lab/project/bio/dep.html?id=34

【研究内容に関しての報道機関からのお問い合わせ先】
■東京工科大学 応用生物学部 教授 佐藤拓己
Tel 042-637-2485(研究室直通)
E-mail satotkm(at)stf.teu.ac.jp
※atをアットマークに置き換えてください。