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臭気原因物質を生成する細菌酵素を世界で初めて同定〜水環境における臭気発生リスク評価への応用に期待〜

 
2026年9月28日掲出

 東京工科大学応用生物学部の浦瀬 太郎教授、後藤 早希講師、木村 将大助教らの研究グループは、水道水や河川水でカビ臭・異臭の原因となるクロロアニソール類の生成に関与する細菌由来酵素を世界で初めて同定することに成功しました。本研究成果は、国際学術誌「Water Research X」に2026年9月7日付でオンライン掲載されました。

【研究背景】
 塩素処理された水道水や、塩素処理された下水処理水が放流される河川では、カビ臭や異臭の原因となるクロロアニソール類(注1)が検出されることがあります。なかでも2,4,6-トリクロロアニソール(2,4,6-TCA)は、極めて低濃度でも臭いを感じる代表的な臭気原因物質として知られています。これまで、2,4,6-TCAは主に真菌によって生成されると考えられてきましたが、水環境中では細菌もその生成に関与している可能性が指摘されていました。そのため、水環境における臭気発生の仕組みを解明するためには、2,4,6-TCA生成に関与する細菌や酵素を明らかにする必要がありました。

【研究成果】
 クロロアニソール類を高効率で生成するMycolicibacterium属細菌の全ゲノム解析(注2)により、2,4,6-TCA生成に関与するO-メチルトランスフェラーゼ(注3)を同定しました。さらに、当該酵素遺伝子を大腸菌で発現させることで、前駆物質(注4)である2,4,6-トリクロロフェノール(2,4,6-TCP)から2,4,6-TCAが生成されることを実証しました(図1)。本成果により、細菌による2,4,6-TCA生成の分子機構の一端を明らかにしました。

図1 Mycolicibacterium属細菌由来O-メチルトランスフェラーゼによる2,4,6-TCA生成の実証

 

【社会的・学術的なポイント】
 本研究は、水環境中の臭気原因物質であるクロロアニソール類を生成する細菌酵素を世界で初めて同定したものであり、水道水や河川における臭気問題の予測・管理技術の高度化に貢献するとともに、細菌による臭気生成機構の理解を大きく前進させる成果です。

【論文情報】
論文名:Identification of a chlorophenol O-methyltransferase from a mycobacterial isolate involved in the formation of odorous chloroanisoles in chlorinated water
著者名:Saki Goto, Hiroki Ohnuma, Shota Torigoe, Masahiro Kimura, Taro Urase
掲載誌:Water Research X, 33, 100617, 2026
URL : https://doi.org/10.1016/j.wroa.2026.100617

【用語解説】
(注1)クロロアニソール類:水道水や河川などでカビ臭の原因となる化合物群のひとつ。2,4,6-トリクロロアニソール(2,4,6-TCA)などは、1 ng/L程度のごく微量でも臭いを感じる。
(注2)全ゲノム解析:生物が持つ全ての遺伝情報(ゲノム)を解析し、特定の機能に関与する遺伝子や酵素を探索する手法。
(注3)O-メチルトランスフェラーゼ:化合物にメチル基(-CH₃)を付加する酵素。本研究では、クロロフェノール類をクロロアニソール類へ変換する反応に関与する酵素を指す。
(注4)前駆物質:ある物質が生成される前段階となる化合物。


■東京工科大学応用生物学部 浦瀬(水環境工学)研究室
生活や産業に欠かせない水の問題やそれに関連した微生物について研究しています。
[主な研究テーマ]
・水環境における抗生物質耐性菌のひろがりの調査
・膜分離技術を用いた新しい水処理技術の開発
・マイクロプラスチックの意外な発生源
[研究室ウェブサイト]https://urase-lab.bs.teu.ac.jp/?lang=jp

■東京工科大学応用生物学部 後藤(栄養健康科学)研究室
食を起点に人と環境がともに健やかである社会の創出を目指す研究をしています。
[主な研究テーマ]
・食品廃棄物を基盤とするアップサイクリング技術の創出
・農業利用を指向した生分解性プラスチックの開発と評価
・食物アレルゲンに配慮した高栄養食品の開発
[研究室ウェブサイト]https://goto-lab.bs.teu.ac.jp/