大学の学びはこんなに面白い

大学の学びはこんなに面白い

研究・教育紹介

東京工科大学 HOME> 大学の学びはこんなに面白い> 新たな価値を生むアイディアを考え出し、最先端技術で実用化して、社会に還元する力をまとめて育む新カリキュラムが始まります。

新たな価値を生むアイディアを考え出し、最先端技術で実用化して、社会に還元する力をまとめて育む新カリキュラムが始まります。

2019年4月8日掲出

コンピュータサイエンス学部 田胡 和哉 教授

田胡 和哉教授

 2020年度からコンピュータサイエンス学部のカリキュラムが一新されます。具体的にどのような点が新しくなるのか、またその背景には何があるのかを田胡先生に伺いました。

■2020年度から始まるコンピュータサイエンス学部の新しいカリキュラムについてお聞かせください。

  まず、これまでと大きく変わる点が、「人工知能専攻」と「先進情報専攻」の2専攻体制になることです。「人工知能専攻」では、AI技術に基づいた製品やサービスの創造を通じて、新たな社会的価値を生み出す方法を学び、「先進情報専攻」では、さまざまなICTの専門知識や技術を用いたシステムの提案や開発による価値の創造方法を学んでいきます。このように2つの専攻に分かれますが、どちらの専攻も密接に関係していますから、例えば、「先進情報専攻」を選んだからといってAI技術を扱わないということは、当然、ありません。何に主軸を置いて学ぶかということの違いで専攻を分けていると考えていただければと思います。
  これに伴い、カリキュラムも新しくなります。本学には“実学”という重要なキーワードがあります。実学と聞くと理屈より手を動かす、実務を教える教育だと誤解する方も多いのですが、そうではありません。実学とは、現実社会における問題を最先端の技術を用いて直接取り扱うことです。それを手がけるには、色々なことを学ばなければなりません。コンピュータで言えば、プログラミングなどの基本的な技術は、当然、身に付けなければならないものです。また、「価値とは何か」ということも理解しておく必要があります。価値は、技術者が決めるのではありません。技術者がつくったモノを、多くの人が対価を払ってでもほしいと評価して初めてそれは価値ある技術と呼ばれます。そういうことを理解してもらうために、色々なカリキュラムを整えました。
  例えば、1年生の「価値創造演習」では、より良いアイデアをどう生み出し、どうつくり上げていくのかをグループワークで学んでいきます。例として、スマートフォンのアプリケーションのアイデアを思いついたとします。つくり手は、これがあると便利だろうと想像しているわけですが、すべてをつくり上げる前に、一度、画面だけをつくってユーザーに感想を聞いてみます。「自分がやりたい使い方に合えば使う」といった何かしらフィードバックをもらい、またつくり直して感想を聞き…ということを短期間で繰り返し、ある一定数の人たちから「これならお金を払ってでも使いたい」と言ってもらえるところまでもっていく練習をします。成功したベンチャーは、そういうことをものすごいスピードでやり続けてきたわけです。こうしたユーザーとのコミュニケーションは、専門的なIT技術を必要としませんから、1年生でも取り組めます。そういう経験を早い段階でさせ、技術には必ず使う人がいる、使う人の手に渡って初めて価値となるということを理解してもらおうと思っています。また、1年生のうちからIT産業の構造を知ってもらうために、外部の色々な方を招いて講演会を催すなど話を聞く機会をつくっていきます。自分がどういう方向に進みたいのかを1年生の早い段階で考えてもらい、そのためには何を学ばないといけないのかということを学生なりに理解してもらいたいからです。
 というのも、大学のカリキュラムだから丸飲み込みしなさいといっても、学生はなぜそれを学ぶ必要があるのかが分からなければ、モチベーションを保てません。学びや人材育成が成功する最も重要な要素は、その人のやる気です。何になりたい、どうしたいという目標が明確になっていれば、そのために何を学ばなくてはならないかが分かり、納得して取り組めますよね。例えば、数学や物理は、エンジニアにとって、最初は苦痛かもしれません。なぜ勉強しなければならないのか、分かりにくいからです。ですから出口を示すことで、逆算して今のうちに身に付けておこうと理解してもらえるカリキュラム構成にしています。
  このような形で、技術がどのようにつくられ、どう利用されるのかを早いうちに学び、ある程度、自分で何が必要かを自覚してもらったうえで、次のステップに進みます。

■次のステップは、どのようになっているのですか?

 ひとつは、共通コア科目という講義があります。ACM(Association for Computing Machinery)という情報分野の国際学会が定める標準カリキュラムを参考に、IT技術に関わるならば必須となる可能性が大きいものを選りすぐった、世界標準の科目群です。これを2、3年生の間に、自分で選んで修得してもらいます。また、自分で手を動かして、結果に納得しながら基礎を学ぶ、専門演習も用意してあります。
  こうした基礎づくりと並行して、自分の頭で考えて新しいものを生み出すことによる実習の数もできる限り増やしました。たとえば、3年生の「プロジェクト実習」など、演習・実習にどんどん取り組んでもらいます。「プロジェクト実習」ではゴールとして、1年間の成果を学会で発表したり、投資家や企業経営者の前で事業提案をしたりしてもらいます。学内で完結するのではなく学外で、技術の専門家やビジネスの専門家の前で発表するという経験を3年生でしてもらうわけです。このように2年生からのステップは、共通コア科目と実習・演習の2本柱で成り立っています。そこで力をつけて、3年後期から研究室に所属し、4年生からの卒業研究に繋げていきます。
  また、大学院も非常に特徴的です。コンピュータサイエンス(以下CS)学部の大学院には、CS専攻とアントレプレナー専攻があり、ICT(情報通信技術)を専門とする先生とビジネスを専門とする先生が、同じCS学部に属しています。つまり学生は、技術とビジネスの両方を学べる環境にあるということです。さらに、CS専攻自体も、研究プログラムと開発プログラムにわかれ、作ることに重点を置くか、研究に重点を置くか選べるようになっています。私は大学院ではCS専攻の教員になりますが、私の研究室には起業した学生もいますので、そういう意味でも幅は非常に広いです。これに対応して、本学では来年度から起業(スタートアップ)を支援する「インキュベーションセンター」もできるので、より実践的なビジネスへの取り組みが可能となります。
 

田胡 和哉教授研究

■CS学部ではこれまでも社会の潮流をいち早く察知して改革をされてきましたが、今回のカリキュラム改編にはどのような背景があったのですか?

先日もアメリカの大学事情を視察してきたのですが、アメリカではすでに新しいスタイルの大学や教育方法が試みられています。その背景には、やはりITで社会が大きく変わってきていることがあります。これまで日本は「モノづくり」という表現で、より良いモノをつくるということをしてきましたが、その方向では、もう先へ進めなくなってしまいました。例えば、ひとくちにGAFA (Google、Apple、Facebook、Amazon)と言われますが、これらのほとんどの会社は10数年前にはなかったものです。そして、それらの会社は、どちらかといえばモノではなく、サービスや情報に関わって莫大な収益や成果をあげている。そういう方向に変わってきたのです。
 ではどうしたら成果があがるのかと言えば、アイディアです。人々が何を考えるか、何を思いつくかに尽きます。ですからアメリカの教育の在り方も、そういう産業構造や社会構造に対応した人材を育成しようと変化してきています。
  ではアメリカの人材育成とはどういうものかというと、基本構造は意外とオーソドックスです。彼らは「工学とは人に始まり人に終わる」という言い方をし、学ぶべきものは3つあると言います。ひとつは、大勢の人を喜ばせるにはどんなことができたら良いかを見つけ出すこと。この見つけ出すというのが実は難しくて、単に人に欲しいものを聞いても答えは返ってこないわけです。人々がまだ気づいていない潜在的な可能性を探すのですから、答えようもありません。
 ではどうしたら見つかるのかというと、自分のアイディアを人々に効率良く説明して、より共感を得られるものを見つけ出すという複雑なことをする必要があります。そういう形で、まず人々の中から可能性を見つけ出すことです。次は純粋な技術として、その見つけ出した可能性を効率よく少ないコストで形にすること。
 そして3つ目は、新たに見つかった可能性を人々に早く使ってもらえるような形で提示すること。そう考えると、入口と出口は“人”なのです。いわゆる理系の「技術のことだけ考えれば良い」という発想とはずいぶん違います。ですから日本の工学教育もそういう形に変えなければならないのです。
  他方、技術的には次の大きな波が押し寄せてきています。5、6年前までは、新しい技術と言えばネットワークやスマートフォンでしたが、ここへ来て大革命が起き、人工知能(AI)の波が来たのです。AIは基本的には古い技術ですが、今のネットワークやコンピュータを使うと、ものすごくうまくいくことがわかり、大ブームとなっています。ちなみに現在の世界最高の億万長者のほとんどはIT関係で財を成していて、その資産は10兆円近いとも言われます。ですがもしビジネスでAIをうまく使う方法を見つけた人がいたら、その人は100兆円長者になると言われているほどです。 話が逸れましたが、こうした社会の変化の中でCS分野における学ぶべきことは明確です。要は先ほど挙げた3つ。可能性をどう見つけて、それをどう人に還元するかを学ぶことと、最先端の技術を学ぶことです。これらを掛け合わせて、うまく社会に適応させることができれば、生活を一変させるようなイノベーションに繋がります。本学部でもそういう力が身に付けられるように、今回、体制を整えたのです。

■受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

学生が「駆け寄りロボット」の開発

月並みですが、自分は将来こうなりたいという夢を持つことは大事です。夢は自分を動かす原動力ですからね。また、夢は鍛えられるものでもありますから、ぜひ本学へ鍛えに来てほしいと思います。私たちは幅広い夢に対応できる環境を用意しています。
  また技術をベースに置くCS学部としては、ICTやAI技術の面白さも伝えたいところです。例えば、今、私の研究室では、車輪付きステレオカメラと、並列に繋げた複数の高性能なパソコンを使って、ロボットが意思決定をする過程をつくり上げようと取り組んでいます。そのひとつのステップとして学生が「駆け寄りロボット」の開発を手がけているところです。車輪付きステレオカメラのロボットが、人の顔を認識して駆け寄って来るというもので、そこからさらに発展させて、事前に教わらなくても自発的にモノに触れたり見たりして、好奇心をもって情報収集していくことを目指しています。もしロボット(コンピュータ)に自分で認識・判断し、考えてしゃべらせることができれば、会話に厚みが出ますし、深いことを言い出すかもしれません。そういうことを期待して研究しています。
 このようにAI技術そのものを研究できるのがCS学部です。AIを進化させる研究をぜひ一緒にしましょう!

■コンピュータサイエンス学部WEB:
https://www.teu.ac.jp/gakubu/cs/index.html

・次回は4月23日に配信予定です