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コンピュータサイエンス学部では、価値創造できる人材を育成する新しい教育が始まっています!

2020年7月24日掲出

コンピュータサイエンス学部 人工知能専攻 田胡和哉 教授

田胡和哉 教授

  2020年4月からコンピュータサイエンス学部では、人工知能専攻と先進情報専攻の2専攻制が導入され、教育体制が刷新されました。今回はその詳細や狙いについて、人工知能専攻を担当される田胡先生にお話しいただきました。

■この春、コンピュータサイエンス学部(以下、CS学部)は2専攻制へと改組されました。まずはその背景や狙いについてお聞かせください。

  従来、大学は学術的研究に取り組み、学術的な価値を創造するところというのが日本の常識でした。ですが今、日本の産業競争力の低下などを受け、企業では従来の人材育成の方法が疑問視され始めています。例えば、これまでは優秀なエンジニアを育成し、先行例をアメリカで見つけ、それをより良い品質で、より低コストでつくるということが推進されてきました。その場合、重視されるのは、どのようにしてその製品をつくるのかというつくり方です。これに対応して、大学においては研究室にこもって学術的な研究に取り組み、つくり方の改良に関する知識をエンジニアに受け渡すという一方向の流れが成立していました。しかし世界では、日本経済が低迷していた失われた20年(1990年~2010年)の間に、その潮流ががらりと変わっています。具体的には、創造には色々な種類があるということがわかってきたのです。
例えば、Googleが現在の地位を築いたのは、ものすごく高性能な検索エンジンをつくったからではありません。検索というサービスを無料で提供することでユーザーを集め、その場を広告の手段としたところにGoogleの価値があるのです。つまり技術を社会でどう活かせば、社会がその価値を認めてくれるのか、要は技術の活用方法にものすごく大きなアイデアや知的な力を費やしているのです。その結果、今ではテレビCMに使われる広告費より、ネットの広告費の方が多くなっています。Googleの例に見られるように、新しい価値を創造するということは必ずしも学術的価値の創造とイコールではなく、むしろ、一つの目標を理解し、共有する多種の知性の協業による総力戦と言えるでしょう。ですから大学の、特に工学系の学部においては、学術的価値の創造に限定して活動していては立ち行かないということを多くの人が実感し始めています。
そうした世界の流れの中、特に構造変化が少ない日本は、うまくその波に乗り切れていないという問題がありました。人材育成の方法も従来型で、本当に必要な人材を生み出せていないのです。それに対して今回、CS学部は、従来の流れとは異なる新しい人材育成の方法を試みようということで学部の改組を図りました。

■従来の体制からどのように変わったのでしょうか。

  ひと言で言えば、「価値創造できる人材を育成する」体制に変わったと言えます。CS学部における“価値創造”とは、学術的な発見や発明といった価値にとどまらず、技術とデザインで人々の役に立つものをつくる“ものづくり的価値”や、新しいものやサービスを社会に提供する“ビジネス的価値”の創造も含めた意味になります。そうした価値創造の体験を通して、価値創造を行える人材を育成する体制を、様々な施策を通じて整えているところです。
今、社会で求められているのは、社会とどうつながるか、つまりビジネスのことを理解し、その視点を持って価値創造できる人です。エンジニアも同様で、技術がどう社会的な価値に変換されていくのかを理解していないと、的を射た技術開発はできません。もしビジネスを理解していなければ、いくら高性能なものをつくっても、ユーザー側からすると何の意味もないというものをつくる危険性があるわけです。ですから簡単に言えば、ユーザーが欲しいと思うものをつくることのできる人を育成しなければなりません。その柱となるのは、高いレベルの技術はもちろん、より広い視野を持って、ビジネスのことも理解できないといけないのです。

■では、新しくなった教育体制についてお聞かせください。

  大学1年生から大学院博士後期課程までを大きく3つのタームにわけて捉えると、それぞれの学びが理解しやすくなるので、そういう形で説明したいと思います。最初の3年間(1~3年生)はカリキュラムが決まっていて、それに従ってきちんと勉強していく期間になります。カリキュラムに沿って効率的に、あるいは楽しく基礎から学ぶことに力点が置かれた学びが構築されています。 次の3年間(4年生~大学院博士前期(修士)課程)では、価値創造を体験する期間になります。実はこの期間が大学の価値として最も大きい部分になります。というのもこの期間に取り組むことは、教員も答えを知らない、誰もわからない未知の事柄を学生自身が探究していくからです。大学の面白さというのは、この部分にあると言えます。  最後の3年間(大学院博士後期課程)は、プロの学術的な研究者を育成する期間になります。ここでは学術的な研究にひたすら取り組んでいきます。

最初の3年と次の3年の具体的な学びの内容を説明すると、最初の3年間は、非常に優れたカリキュラムを用意しています。特に誇るべき点は、たくさんの実習・演習を入れているところです。例えば、1年次の「価値創造演習」では、1年生のうちからビジネス提案をすることで工学的なものの考え方とビジネスや価値創造への理解を促します。ここで学んでほしいことは、 “価値”とはユーザーが決めるものだということです。製品やサービスをつくるときには、ユーザーの視点が不可欠だという基本を、体験を通して理解できる演習になっています。また、2、3年次には自分の頭で考えて実行する「プロジェクト演習・実習」が用意されています。これは教員が掲げた研究テーマに、希望する学生たちが参加する少数精鋭スタイルの演習・実習です。テーマによっては、3年生でも学会発表をしますし、私の担当するプロジェクト実習では製品やサービスの企画を立ててユーザーに意見を聞き、これなら売れるだろうというビジネスプランに練り上げて、ベンチャーキャピタル(出資者)や企業経営者の前で発表することを毎年しています。
また、1年次の「フレッシャーズゼミ」では先輩を招いて話を聞き、キャリアアップの道筋であるキャリアパスについて理解してもらいます。キャリアパスを知るということは社会を知ることです。卒業後に出ていく社会はどう動いていて、それに自分はどう関わっていくのかということを早いうちから意識してもらい、自分の目標を立ててもらいます。また、企業の研究所の所長やOB・OGなど、CS学部の学びに近い分野の社会で活躍する方たちを招いた講演も開催します。学生は事前に招いた方が所属する企業の企業調査をし、当日の質問に反映させることで、講演をより実りあるものにしています。こういう形で学生が自らのモチベーションを上げて、「私は将来これになりたいからこの勉強をする」という自覚を持って、能動的に学べるカリキュラムを設計しています。  1年生から学ぶプログラミング言語では、いち早く「Python」というAIのプログラミングで使われる言語を全員に習得してもらいます。これはかなり新しい試みです。なおかつ、この習得を2年生の進級条件にしています。学生にとっては厳しい話かもしれませんが、教員からするとプログラミング言語を何としても1年生のうちに習得してほしいということです。もちろん補習を行うなど、様々なフォローを実施し、1年生全員がプログラミング言語を習得した上で進級する仕組みをつくり上げています。
 それから講義も新たに設計しました。情報教育の国際標準をベースに、ICT分野のエンジニアであれば最低限、学ばなければいけない基礎を「共通コア科目」として用意しています。これも個々の教員が必要と考えるものを教えることが多かった日本の大学のカリキュラムでは、画期的なことではないかと思います。  また、こうした1年から3年の学びを通じて、学生には今後、自分は学術的な研究をしていくのか、ビジネスを志向していくのか、あるいはものづくりに集中するのかを考えてもらう形になっています。

 そのうえで、次の3年間(4年生~大学院博士前期(修士)課程)に入っていきます。4年生になると、学生は希望する研究室に所属します。そこから未知への挑戦が始まるのです。そのためにまず研究室で学生が行うことは、未知の課題に対して自分で調べたり、考えたり、人に聞いたりと、色々な方法を駆使して未知の問題に食いついていく方法自体を学ぶことです。これが大学の学びの中でも非常に重要な部分だと思っています。ここでの「未知」とは、先ほどの価値創造の話と同じく、学術的な未知だけでなく、ビジネス的な未知、ものづくり的な未知などに方向性を広げたものです。多様な未知を追究することで新しい価値を創造する、その価値とは学術的な価値だけではないということがポイントです。そこが従来の大学の学びとの違いです。CS学部には学術研究に取り組んできた教員と企業出身の教員の両方がいますし、大学院にはビジネス起業を学ぶアントレプレナー専攻もあり、ビジネスを専門とする教員も揃っているので、こうした教育が可能になります。さらに、未知の課題に取り組み、価値創造を行うために、大きく2つの環境を整えています。
 

■具体的には、どういうものですか?

  ひとつは、ラボ制度です。これは複数の教員が専門家として集まり、企業等と連携して新しい価値創造に取り組む活動のことです。まずは教員が専門家として、学術研究にとどまらない新しい価値創造活動に取り組もうと設けました。例えば人工知能専攻では、金融分野などでデータサイエンスの実践に取り組む「データサイエンス・ラボ」、生物の知能に近い認知機能をロボットやAIで実現しようとする「コグニティブ・ロボティクス・ラボ」、人間とコンピュータの新しい関係の構築を試みる「ヒューマン・コンピュータ・インターフェース・ラボ」の3つのラボが立ち上がり、社会に直結した価値創造活動に取り組んでいます。先進情報専攻も同様にラボの設立が進められているところです。また、4年生以上の学生は、この活動に参加することができます。間近で専門家である教員たちの価値創造プロセスを体験できるのです。また、2、3年生には、サークル活動のような形で、指導者をつけて価値創造活動の入門編が体験できる入門ラボである“SIG”を用意する予定です。
 

■受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

  繰り返しになりますが、CS学部では単に技術に詳しいエンジニアではなく、社会を知り、社会にどう働きかけたらメリットをもたらすことができるのかという広い視野を持ったエンジニアやウェブサービスの企画者・開発者を育成したいと考えています。ICT関係の技術に興味があり、エンジニアになりたいという人、将来、エンジニアとして大成功したいという思いのある人は、ぜひCS学部に来てもらいたいですね。本学部に入れば、その夢を実現する技術や知識だけでなく、ビジネスの視点やものづくりの視点も身に付けられます。学生が持つ個々のポテンシャルを大きく伸ばし、将来、社会で活躍できる人を育成するために、CS学部は全力で支援しますし、そういう体制を着々と整えています。
 

コンピュータサイエンス学部:
https://www.teu.ac.jp/gakubu/cs/index.html