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研究室独自の装置を用いて培養細胞の接着や抗がん剤による変化をナノレベルで捉え、解析しています!

2020年10月9日掲出

応用生物学部 村松 宏 教授

応用生物学部 村松 宏 教授

  原子間力顕微鏡などのナノ計測技術を用いたDNA分子の解析や水晶振動子センサーによる培養細胞のモニタリングなどに取り組んでいる村松先生。今回は、最近の研究についてお聞きしました。

■先生の研究室では、どのようなことに取り組んでいるのですか?

  私の研究室では、分子レベル・ナノレベルの視点でDNA分子を解析したり、培養細胞を用いて抗がん剤スクリーニング法の研究を行ったりして、バイオテクノロジーや医療分野の発展に貢献する新しい技術の開発を目指しています。
  今回は、その中でも培養細胞を用いた研究について取り上げたいと思います。まず、この研究では「水晶振動子センサー」というものを使っています。これはナノグラムオーダーの微小な質量を検出できることから、表面への吸着現象の解析やタンパク質などの生体高分子の検出に用いられる分析装置です。つまり、重さや粘弾性(硬さ・柔らかさ)が検出できるのです。この研究室では、そのセンサー上で細胞を培養して、細胞が接着する様子を数値的に捉えたり、そこに抗がん剤を入れて細胞がどう変化するかといったことを数値的に検出したりすることに取り組んでいます。
  ただ、ここでは単なる水晶振動子センサーではなく、それと小型顕微鏡を一体化させた研究室オリジナルの装置を使っています。10年ほど前からそういう装置をつくっていて、1、2年ごとに学生と一緒に改良を加えてきました。学生の中にはそういうことをしてみたいという人が割と多く、部品なども3Dプリンタでつくって組み立てています。

水晶振動子センサーとセンサーを組み込んだ測定用セル

水晶振動子センサーとセンサーを組み込んだ測定用セル


この装置をつくろうと思ったきっかけは、水晶振動子センサーだけでモニタリングしていると、なぜ細胞がそういう変化を起こしているのかがわかりづらかったからです。もしかしたら実験がうまくいっていないなど、他の原因でその変化を示している可能性も考えられます。ですから水晶振動子センサーに加えて、顕微鏡で細胞の写真を一定時間ごとに撮影しておくことで、細胞はきちんと接着していて、その後、抗がん剤を入れたときにどう変化したという裏付けが取れるのです。そうすると、水晶振動子センサーが示した応答は、例えば細胞が収縮していったことが原因であるとか、細胞が剥がれていく方向に変化したからだとわかるのです。ですから私は水晶振動子センサーの測定と顕微鏡での観察を同時にすることが重要だと考えて、独自の装置を製作して研究に用いてきました。
  この装置は何度かのバージョンアップを経て、ある程度、安定したデータが測定できるようになってきました。その一方で、応答結果を定性的にどう考えたらよいのかと色々解釈をしてきたものの、他の人が使いたくなるような説得力が足りないとも感じていて。そこで何か打開策はないかと考えた結果、実験データを数式に当てはめることを思いつきました。色々な関数に当てはめて検討を重ね、ついに昨年、モデル式化に成功しています。これが最近の大きな研究の進展だと言えますね。

小型顕微鏡を一体化させた研究室オリジナルの装置

小型顕微鏡を一体化させた研究室オリジナルの装置


■この研究成果は、どういうことに活用できると考えられますか?

  細胞接着のモニタリングについては、細胞の種類や細胞接着をうまく行うために使用するECM(エクストラセルラー・マトリックス)というコラーゲンなどのタンパク質の種類によって細胞の接着性がどう異なるのかを数値的に知ることができます。また、抗がん剤の応答モニタリングと解析については、どのくらいの濃度でどのくらいの影響があるのか、抗がん剤の種類で応答の仕方が異なるということがわかってきたので、抗がん剤が作用するメカニズムを詳しく調べることにも貢献できるはずです。さらに新しい抗がん剤の候補が出たとき、この装置で評価することも可能ですから、将来的に医療分野に貢献できたらとも思っています。

細胞接着と抗がん剤による細胞死のモニタリングの様子

細胞接着と抗がん剤による細胞死のモニタリングの様子


■今後の展望をお聞かせください。

  今、実験ではひとつの細胞に対して、抗がん剤の濃度を変えながらモリタニングしていますが、細胞の種類によっても異なる結果が出てくると思うので、細胞の種類を変えて実験してみたいと思っています。また、水晶振動子センサーで捉えた実験データをモデル式化することは他ではされていないことなので、今後、実験すればする分、どんどん新しいことがわかってくると思います。ですから細胞と抗がん剤の他にも農薬や細胞活性因子のような加えるものの組み合わせを変えながら、どういう応答をするかを調べて、それで得た曲線を解析していきたいですね。
  また、今年は水晶振動子センサーと小型顕微鏡の装置の新バージョンを学生とつくっています。これまで連続撮影ができるようにしたり、焦点を調整できるようにしたりと改良を重ねてきて、現行のものは4つのカメラがついた4チャンネル撮影ができるようにまでなりました。カメラ数は多い方が同時にたくさん実験できるということで、今度の最新バージョンでは8チャンネルのものをつくるつもりです。ただ、カメラを8つ並べると配線の問題などが生じるので、カメラは1台で、それを移動させるような形で実現しようとしています。また、最近はウェブカメラが非常に高性能化しているので、最新バージョンではウェブカメラの中身を取り出して撮影カメラに用い、フルハイビジョンで撮影できるようにしようと取り組んでいるところです。こういう装置の開発もあるので、応用生物学部らしからぬ部分もありますが、そこから関わりたいという学生が面白がって研究に取り組んでいます。

■最後に受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

  新型コロナウイルス感染症の影響で、現状、本学はオンライン授業が中心となっていますが、実験や実習は感染予防対策を取りながら対面式で実施しています。また、本学はMoodleというシステムを使って、オンラインでの授業や資料のダウンロード、小テストなどを行っています。小テストでは、学生が正解するまで何回も答えられる形にするなど、色々な試みをしているところです。オンライン授業も対面式授業も、より快適にできるように環境を整え続けているので、どうぞ安心して入学してきてください。