大学の学びはこんなに面白い

大学の学びはこんなに面白い

研究・教育紹介

東京工科大学 HOME> 大学の学びはこんなに面白い> 理学療法の技術や知識だけでなく、自分の理学療法に疑問を持ち、客観的に捉える研究的視点を養おう!

理学療法の技術や知識だけでなく、自分の理学療法に疑問を持ち、客観的に捉える研究的視点を養おう!

2020年3月13日掲出

医療保健学部 理学療法学科 栗田 英明 講師

栗田 英明 講師

 理学療法士として脳卒中の患者から脳性麻痺の子ども、整形外科を受診する患者まで幅広く診てきた栗田先生。今回は先生のご研究内容や理学療法士になった経緯などを伺いました。

■先生はどのような研究に取り組まれているのですか?

 呼吸理学療法をテーマに研究しています。呼吸理学療法では、例えば、肺がんや食道がんの術後に肺炎を合併してしまい、ICU(集中治療室)から出られない方やずっとベッドで寝ていなければならない状態の方、あるいは意識がない状態の方など、痰を出せなかったり呼吸をうまくコントロールできなかったりする患者に対して、実際に胸に手を当てて呼吸をしやすくしたり痰を出しやすくしたりということをします。
 そういう呼吸理学療法のなかで、私は特に重度の障害を持った小児を対象に研究をしています。重度の障害を持つ子どもは自分で呼吸をコントロールできませんし、障害を持つ半数以上の方が、最終的には呼吸器系の障害で亡くなります。そういう子どもたちに、少しでも我々の技術が活かせないかという思いから研究を始めました。というのも私たち理学療法士は、そういう子どもたちに対して行う理学療法について、いつも悩んでいるからです。自分たちのすることが本当にその子たちに有益なのかどうか、わからないなかで疑問を抱きながら臨床をしているのです。私たちのしたことが、その場では呼吸に対して効果があったとしても、長い目で見て本当に有益なのか、彼らの呼吸を良くし延命につながっているのかどうかが、わからないのです。
 このように理学療法の効果に対するエビデンス(科学的な証拠)やそれに基づく手法がまだ確立されていないということは、呼吸理学療法に限らず、理学療法分野の多くの部分で言えることです。例えば心臓のことであれば客観的な数字で表れるので、こういう関わり方をすれば、こう心臓の機能が変わったということは言えますが、肩が痛いと訴える人に対して私たちが行った理学療法にどれほど効果があったのかということは数字として出せません。ですから、まだまだ基礎的な研究が必要な分野だと言えるのです。

■これまで実際に取り組んだ研究の具体例には、どんなものがありますか?

 今、卒業研究生と一緒に、健常成人の呼吸と姿勢の関係や横隔膜の動きについて調べています。本来、対象としている重度障害を持つ小児のデータが取れると良いのですが、彼らはじっと寝ていてくれるわけではありませんし、臨床的なデータを取ることが非常に難しいのです。そこでまずは健常成人である学生を対象に、座っているときやうつ伏せ、仰向けの姿勢のときに呼吸がどう変化するのか、その時々の横隔膜の動きもエコーで確認して、そこから理学療法士がどう関わるべきなのかを検討していこうと進めています。
 このような基本的なところをきちんと押さえて、こういう背景があるからこういうことをした方が良いという論理的な思考過程を元に理学療法をつくり、その先に臨床があるという当たり前のステップを踏みたいと思って取り組んでいるのです。というのも理学療法は経験則でまとめられてきた分野であるため、こういう当たり前のステップが踏まれてきていません。実際、測定機器がなかったり、自分たちが測定したいと思ったものを測定できる環境になかったりするため、今ある機材でどうデータを取っていくかという工夫が求められますし、自分たちの思ったような調査や研究がすんなりとはできにくい分野なのです。しかし、それは同時にこれからの分野だとも言えます。特に今は本学を始め、大学を卒業した理学療法士が増えてきていますし、さらに大学院を出て、熱心に研究していこうとする人たちも増えてきていますから、今後はますます基礎的なところを研究して固めてくれる人たちが増えていくだろうと期待しています。

■大学と専門学校で学ぶことに、どんな違いがあると思いますか?

 理学療法分野は、理学療法の知識や技術を身に付けることが基本だと思いますが、それを客観的に捉えるには、研究的な思考が重要になります。つまり、物事を客観的に捉え、先入観を持たずに、得られたデータを解釈できるかどうかが大切なのです。そういう思考過程は、やはり研究を通してでしか得られないものだと思います。
 専門学校を出て理学療法士になるのと、大学を出て理学療法士になるのとでは、理学療法士という職種では何ら変わりません。しかし、自分のしていることを論理的・客観的に振り返り、捉えることができる能力を身に付けているか、そういう経験をしているかどうかという点では大きな違いが生まれると思います。大学で学ぶ以上は研究の意味を理解し、学んだ技術や知識、あるいは先輩や上司が言っていることに対して、「それは本当か?」「どういう理由でそう言っているのか?」と疑問符をつけ、その疑問をきちんと検証して解決できる人材になってほしいです。

■先生が理学療法士になったきっかけは? また、研究の道へ進んだ理由は何だったのですか?

 月並みですが、若いときにオートバイで事故を起こして入院したことがきっかけです。入院中に担当してくれた理学療法士の方が、今度、この地域に初めて理学療法士の養成校ができるので行ってみればと勧めてくれて。やってみようかなと思い、勉強をして入ったという安易なものです(笑)。
 研究を始めたのは、茨城県立医療大学付属病院に勤めていたとき、伊藤直栄先生と出会ったことが大きなきっかけです。当時、私の上司だった伊藤先生は日本の呼吸理学療法の第一人者で、呼吸を専門にしておられましたが、そう言いながらも何でも診る方でした。伊藤先生からは「理学療法士は子どもも大人も、切断も脊髄損傷も呼吸も何でも診ることができて当たり前。それができるようになって初めて基礎ができたと言えるのだ」と強く言われまして。そこから私もいろいろな勉強をさせて頂き、伊藤先生に臨床に加えて研究もするように言われたことで、試行錯誤しながら研究に取り組み始めました。その後、伊藤先生は大学病院を退官し、日本工学院専門学校の医療学部長に着任されたのですが、ある日、私に見学に来るようにとおっしゃり、見学に来たその日に「ここで働くように」と言われ、断れずに今にいたります。ですから私は伊藤先生の影響を強く受けていますし、彼がいなければ今の私はいないのです。

■受験生・高校生へのメッセージをお願いします。

 理学療法士は、心身ともに傷ついている人たちに寄り添い、手助けするうえで、患者に深く関われる職種ですから、やりがいの大きい仕事です。また、老若男女問わずに関わることができるので、子どもの理学療法に興味がある人、スポーツに興味がある人、心臓に興味がある人など、さまざまな興味を満たしてくれるという点でも、良い仕事だと私は思っています。自分ではなく人が喜ぶことに喜びを見いだせる人であれば、きっと楽しく仕事ができるはずですよ。私自身、今も患者さんに「ありがとう」と言ってもらえると、やっていてよかったと思いますし、それがあるから大変でも続けてこられた面があります。
 また、本学はもともと専門学校がベースにあり、そこから大学になった経緯があるので、専門学校に負けないくらいしっかりとした技術を身に付けられるノウハウを持っていて、なおかつ研究的視点という大学のエッセンスが上乗せされているという他にない特色があります。技術面と研究的視点の両方をしっかり身に付けられる大学だと自負していますので、ぜひ本学で学んで理学療法士を目指してください。

・次回は3月27日に配信予定です