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DNAを使った病気の診断薬や半導体加工技術を応用した新しい抗体チップの研究が進んでいます!

2020年4月10日掲出

応用生物学部 矢野 和義 教授

矢野 和義 教授

 DNAやタンパク質を応用し、病気の早期診断・早期治療に役立つバイオテクノロジーの確立を目指している矢野先生。今回は、前回の取材でお聞きしたDNAアプタマーの研究や抗体チップの研究のその後について伺いました。
前回の掲載はこちらから→https://www.teu.ac.jp/interesting/019205.html

■最近の研究室での取り組みについてお聞かせください。

 私の研究室では、体内に入った異物を認識し、捕獲して退治する“抗体”のような機能を持つDNAを開発して、病気の早期診断・早期治療に役立てようと取り組んでいます。前回の取材でもお話ししましたが、例えばエイズの診断薬の研究。現在、エイズの診断薬には、免疫の司令塔であるヘルパーT細胞の表面にあるCD4というタンパク質を認識する抗体が用いられています。しかし抗体は高価でつくるのにも手間がかかるという難点があります。また、抗体はいわば生ものなので管理が大変ですし、マウスなどの動物を使ってつくるので動物愛護の観点からも良い方法とは言えません。そこでこの研究室では、抗体の代用となる安価で簡単につくれて管理も容易な、CD4を認識する新たなバイオ素子を開発しようとDNAに着目したのです。  
 当研究室では、CD4を認識するDNAアプタマー(特定のタンパク質に結合する機能を持つDNA)の候補をいくつか見つけ出し、まずは遺伝子組み換え技術でつくられた模擬的なCD4タンパク質を認識するかどうかという実験を行ったというのが、前回の取材での話でした。そこから研究はさらに進んで、いよいよ本物の細胞表面にあるCD4で実験を行いました。  
 ところで、ただ細胞とDNAアプタマーとを相互作用させるだけでは、それらが結合したかどうかはわかりませんよね。そこでまずシグナルが出るようにしようと、DNAアプタマーに蛍光物質をつける工夫をしました。この蛍光を発するDNAアプタマーと、HeLaという子宮頸がん由来の細胞に遺伝子組み換えでCD4を発現させたものとを相互作用させて、結合するかどうか実験をしたのです。本学のバイオナノテクセンターには「共焦点レーザー走査顕微鏡」という装置があり、それを使うと蛍光が出たかどうかを目で見ることができます。また、この顕微鏡には面白い機能があって、普通の顕微鏡は上から見ると上から見た画が見えますが、この装置では輪切りの画を見ることができるのです。細胞のある部分を切ったとき、その細胞の断面のどの部分が光っているかが見えるのです。実際、DNAアプタマーが結合したCD4を発現させたHeLa細胞を真ん中で切ってみたところ、一部、真ん中が少し光っているところもありましたが、主に細胞の外側が光っていました。つまり細胞膜が光っていたのです。ということは、CD4はやはり細胞膜にあり、そこにあるCD4に研究室で見つけたアプタマーが結合しているということが類推できるわけです。この実験の成功を受けて、現在はヘルパーT細胞とDNAアプタマーを相互作用させる実験に着手しているところです。

■前回の取材で伺った抗体チップの研究についてもお聞かせください。

 抗体チップの研究も進んでいます。原理的なところから説明すると、抗体チップとはスライドガラスに色々な抗体を貼り付けたもので、そこに血液などを落とせば、血液中にある病気の目印となるタンパク質が抗体と結合し、蛍光を発して知らせてくれるというものです。これを使って色々な病気の指標成分を高感度に測ることができれば、病気の早期診断・早期治療につながるということで、研究を始めました。具体的にはスライドガラスの表面に金属膜をつけ、その上にナノメートル(1mmの100万分の1)サイズの薄い膜(光干渉膜)をつけたナノ積層基板の開発研究を行っています。ナノ積層基板は、表面の薄い膜で反射する光と金属膜まで行ってから反射されて外に出ていく光とがあり、うまくいけば反射の波の強さを増強させられると知られています。そこで当研究室では、それをプラズマ重合法という半導体の微細加工技術を応用して実施しました。この方法で光干渉膜をつくるのは、この研究室独自のものです。ではなぜその方法を採ったのかというと、ひとつは先ほど話した蛍光を増強できるということ。それからもう一つは、抗体を強く膜に結合させるアミノ基を膜表面につくることができるからです。例えば、アセトニトリルという有機物で表面に光干渉膜をつくった場合、それだけで蛍光の増強ができ、さらに表面にできたアミノ基が基板にある抗体と化学結合し、抗体を強く膜に結合させることができます。というのも抗体チップに血液などの調べたい物質を入れると、抗体に結合するものとしないものができるので、その中から結合していないものを洗い流す操作が必要になるのです。その際、基板にある抗体自体がナノ積層基板から剥がれてしまう恐れがあります。そこで基板に抗体を強固に固定させることを考えました。つまりアセトニトリルを使ってプラズマ重合を行うと、蛍光増強と抗体を強く固定できるという2つのメリットが生み出せるのです。
 また、アセトニトリルの光干渉膜で本当に蛍光が増強するかどうかの実験も行いました。蛍光物質の蛍光度合いは膜厚に大きく依存することがわかっています。そこで膜厚を順に変えて蛍光の増強度合いを調べたところ、薄すぎても厚すぎてもだめで、100ナノメートル(1mmの1万分の1)の厚さが最も強く蛍光を発するとわかりました。
 現在は、この抗体チップの抗体をDNAアプタマーに置き換えて認識できないかという研究を進めているところです。一般に臨床検査現場で用いられている抗体チップには、サンドイッチアッセイという方法が用いられています。例えば、調べたいタンパク質を、抗体を載せた基板の上に置いて、結合させたとします。しかし見た目では結合しているかどうかわからないので、通常、2つ目の抗体を相互作用させます。この2つ目の抗体に蛍光機能をつけておき、1つ目の抗体と結合した調べたいタンパク質にさらに結合し、蛍光を発するようにします。ですから光が多いと結合したものが多く、逆に光が少なければ、結合したものが少ないとわかるのです。これは1つ目の抗体と2つ目の抗体とで、調べたいタンパク質に結合する場所が違うからできることです。このように抗体と抗体で調べたい物質を挟み込むことをサンドイッチアッセイと言います。これを抗体ではなくDNAアプタマーとトロンビンという血液凝固に関係するタンパク質で試みたところ、うまくいきました。この次はいよいよ、がんなどの病気の目印になるタンパク質を使って、DNAアプタマーによるサンドイッチアッセイを試みようと進めています。
 

学生が開発したアプリ

ナノ積層構造をもったマイクロプレート(微量反応槽)


■今後の展望をお聞かせください。

 今はDNAアプタマーの研究も抗体チップの蛍光増強の研究もモデル物質での実験が主なので、今後は実際に病気の目印になっているタンパク質やヘルパーT細胞を使って実証することが一番の課題です。そこで良い結果が得られるようになれば、実用化を目指していきたいと思っています。
 抗体チップの蛍光増強に関しては、病気の目印となるタンパク質の濃度が薄くてもきちんと認識して蛍光するかどうかという、検出の感度を検討しなければなりません。それからDNAアプタマーの研究で、HeLa に発現させたCD4と蛍光するDNAアプタマーを相互作用させて「共焦点レーザー顕微鏡」で見たときに、細胞膜だけでなく一部、細胞の中側に光っているところがあったと言いましたよね。これは、まだメカニズムは判明していませんが、CD4を介してアプタマーが細胞内に入ったのではないかと予測できます。もしその仕組みを利用できれば、将来的に狙った細胞内に薬を届ける“ドラッグデリバリーシステム”への応用が考えられるかも知れないと思っているところです。

■最後に受験生・高校生へメッセージをお願いします。

 私自身、大学は工学部工業化学科の出身で、高校時代は生物をまったく勉強したことがありませんでした。今は化学系の学科でも生物系の授業があるのは珍しくありませんが、当時は生物系の授業はほとんどなく、私のいた学科には唯一、「生物化学」という授業があるだけでした。その授業で初めてDNAの複製について学び、すごい仕組みだなと驚いたのが大学3年生のときです。そこからバイオテクノロジーの道に進むことになりました。ですから高校時代に生物を学んでいなくても大丈夫です! また、応用生物学部には高校で生物を学んでいない学生に合わせて、基礎から丁寧に教える授業も用意されています。ですから大学でバイオを学んでみたい、生物に興味があるという方は、ぜひ本学部に来てほしいですね。  
 また東京工科大学は、非常に就職率が高いです。本学部でも1年生から就職を意識したカリキュラムになっていて、グループワークを経験したり、文章の書き方を学んだりできます。学年が上がれば企業研究やエントリーシートの書き方、就職試験でのグループワーク対策など手厚くフォローしています。本学の応用生物学部なら学びたいことを存分に学び、将来にもしっかり結び付けられるはずですよ。

・次回は5月8日に配信予定です