トップメッセージ

人の様々な活動は、座る、立つ、歩く、走るなどの機能的運動やスポーツなどの特異的な運動などさまざまな要素から構成された複雑なシステムです。
その根底にある基本的な各関節の運動(ムーブメント)や関節運動によって表現される機能的運動の改善をとおして健康増進や障害予防、アスリートの競技力の向上を目指すことをテーマにしたのがヒューマンムーブメントセンターです。
プロアスリートは勿論、子供から高齢者まで幅広い年齢層を対象とし、動作解析装置や筋活動などから得られた生体情報を人工知能(AI)を用いて包括的に評価し、最大限のパフォーマンスが発揮できるよう「動き」の改善をはかる方法を開発・提案することを目的とします。
そのために、人の動きを分析できる精度の高い解析機器を用いて対象者の動きを屋内外で計測します。またムーブメントを支える要素には、体の健康のみならず心の健康も重要です。トータルヘルスを支えるには十分な栄養や休憩・睡眠も必要です。このように代謝や神経系など複合的な機能の解析、その結果のフィードバックを行い、多面的な視点から対象者のパフォーマンスを最適化します。
私たちは蒲田の地理的な利便性の高さを活用し、国内外からのトップアスリートの支援や運動機能の面から健康支援を職業として考えている若者に、このヒューマンムーブメントセンターでの学びの機会を提供します。

活動報告
ヒューマンムーブメントセンターの活動紹介
活動紹介2025年10月7日
2025全日本ジュニアテニス選手権でのメディカルサポート・ボランティア活動
理学療法学専攻教員でありヒューマンムーブメントセンター所属の伊藤が、2025年8月25日~9月5日に開催された「全日本ジュニアテニス選手権」において、大会オフィシャルトレーナーとして帯同し、メディカルサポートを担当しました。また、大会期間中には、本学理学療法学専攻3年生7名がボランティアとして参加しました。
全日本ジュニアテニス選手権は、国内最大規模のジュニアテニストーナメントであり、錦織圭選手をはじめ数多くのトッププレーヤーがここから羽ばたいた、まさにジュニア選手の登竜門となる大会です。例年、真夏の厳しい暑熱環境下で開催されることから、大会運営や日本テニス協会医事委員会を中心に、熱中症をはじめとした健康管理への対策が徹底されています。
今回のメディカルサポートでは、試合中の体調不良や怪我に対するコートコール対応、試合前後の選手へのコンディショニング(ストレッチ、テーピングなど)、さらに熱中症予防の啓発やケア(アイスバス導入など)を実施しました。加えて、大会では「チャンピオン教育」としてジュニア選手やそのコーチ、保護者を対象にした教育セッションも行われ、伊藤がITF(国際テニス連盟)のメディカルルールについて講演しました。
また、昨年度よりInBodyを用いた熱中症発症者の体組成測定を行い、発症の特徴把握と予防への応用を目指しています。今年度は発症者だけでなく、非発症者にも測定を拡大し、学生ボランティアもその補助を担当しました。
理学療法専攻には、スポーツリハビリテーションやスポーツ現場への関心が高い学生が多く、授業だけでは得られない現場経験を積む貴重な機会となりました。参加した学生からも「またこのようなサポートの機会があればぜひ参加したい」との声が寄せられ、スポーツ現場での活動を実際に体験する大きな学びの場となりました。





活動紹介2025年9月17日

副センター長・斎藤の研究論文が、iScience(IF 4.1)に掲載されました。
Developmental Changes in Upper Limb Muscle Synergies during Throwing: A Comparison between Preschoolers and Schoolers
投げ動作は子どもの運動発達において基盤となる技能として注目されています。本研究では、オーバーハンド投げ中の上肢の「筋シナジー(複数の筋肉が協調して働くパターン)」の発達的変化を明らかにするため、幼児(3~5歳、13名)と学童(6~9歳、8名)を比較しました。投動作中の筋活動を上肢16筋から表面筋電図で記録し、そのデータを「非負値行列因子分解(NMF)」で解析して筋シナジーを抽出しました。その結果、両群に共通する基盤的なシナジーが確認される一方で、学童ではシナジーの構成や活性化タイミングがより分化・洗練され、投動作に必要な協調が精密化していることが示されました。これにより、基本的な協調パターンは幼児期から形成され、学童期にかけて経験や神経発達に伴い最適化されていく可能性が示唆されました。本研究は、ヒューマンムーブメントセンター、東京大学、日本プロ野球機構、社会福祉法人どろんこ会との共同研究として実施されました。当センターは、今後も多様な共同研究を通じて社会に貢献できる研究を推進してまいります。
活動紹介2025年9月9日
埼玉県立越谷南高等学校男子バレーボール部でのメディカルチェック
理学療法学専攻教員でヒューマンムーブメントセンター教員の溝口が、メディカルトレーナーとして関わっている埼玉県立越谷南高等学校の男子バレーボール部員32名(現1・2年生)を対象にメディカルチェックを実施しました。同部は県上位を目指してフィジカル・メンタル面の強化に取り組んでおり、今回の測定結果が効果的なトレーニングプログラム構築の基盤となります。
測定項目は、身長・体組成測定、関節可動域(肩・股・足関節)、徒手筋力計による肩関節等尺性筋力、Upper Quarter Y-Balance Test、光電管センサーによる5mダッシュ、加速度センサーによるジャンプ力(スクワットジャンプ、リバウンドジャンプなど)、アタックスピード測定、痛みに関するアンケートを実施しました。これらのバレーボール競技に特化した包括的な身体機能評価により、競技パフォーマンス向上と傷害予防の両面からサポートできるデータを取得することができました。
測定には、医療法人木村整形外科の鈴木健太先生、埼玉県立大学大学院博士課程の島田直宜先生、埼玉医科大学病院の須藤緑先生にご協力いただくとともに、本学理学療法学専攻の3年生5名も参加しました。専門家と学生の連携により、質の高い測定体制を構築できました。参加した学生からは「実際に選手と関わることで、数字データだけでなく普段のプレー観察の重要性を実感した」、「測定方法や声かけの技術、次に何をすべきかを考えて行動することを学び、今後の臨床実習に活かしたい」との感想が聞かれ、通常の授業では体験できない貴重な実践的学習機会となりました。
今後も定期的なメディカルチェックを継続し、チームの競技力向上をサポートするとともに、学生のスポーツ現場での実践的な学びの機会として発展させていきます。




活動紹介2025年6月25日
副センター長・斎藤の論文が、Journal of Applied Biomechanics(IF 1.9)に掲載されました。
『Muscle Synergies in Single-Leg Hops: Neuromuscular Adaptations for Increased Hop Distance』
(片脚ホップにおける筋シナジー:ホップ距離増加のための神経筋適応)
片脚ホップ(Single-leg hop:SLH)は、スポーツ傷害後の競技復帰(Return to Sports)の評価として広く用いられていますが、ジャンプ距離が伸びる背景にある神経筋制御の詳細は明らかになっていませんでした。本研究では、SLHの短距離と最大距離を比較し、最大距離ジャンプを達成するために必要な特有の筋協調パターンを初めて明らかにしました。
分析の結果、最大距離のホップ(SLH100)では、腹部や股関節、足関節の筋群が特異的に強く協調する筋シナジーが確認され、短距離ホップ(SLH30)とは異なる新たな運動制御戦略が必要であることが示されました。この発見は、SLHを用いた競技復帰やリハビリテーションのトレーニングにおいて、従来の膝中心のアプローチに加えて、体幹や股関節、足関節を含めた総合的なトレーニングプログラムの重要性を示唆しています。
研究紹介
ヒューマンムーブメントセンターでは、筋電図、三次元動作解析装置、慣性センサーやGPSなどのモーショントラッキング技術を駆使して、ヒトの動き(ムーブメント)を改善し、健康やアスリートのパフォーマンスを向上させることを目指しています。

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医療保健学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻
中山 孝 教授 斎藤 寛樹 助教
メンバー
お問い合わせ
副センター長:斎藤 寛樹 <saitohhrk@stf.teu.ac.jp>
アクセス
八王子駅からお越しの方
JR中央線「八王子」駅南口から
スクールバス約10分
所要時間:約10分 9:00より約10分間隔で運行
八王子みなみ野駅からお越しの方
JR横浜線「八王子みなみ野」駅西口から
スクールバス約5分
所要時間:約5分 9:00より約7分間隔で運行